[粕谷秀樹]数々の栄光に彩られた当時のチームに追いつけ! アーセナルが緩やかな上昇曲線を描きつつある

粕谷秀樹のメッタ斬り 056

粕谷秀樹のメッタ斬り 056

3点のビハインドから追いついたウェストハム戦 photo/Getty Images

二面性を持っているかのようだ

見事な粘り腰だった──。

プレミアリーグ第29節、ウェストハム戦に臨んだアーセナルは32分までに3点のビハインドを背負ったものの、決して白旗を掲げなかった。トマシュ・ソウチェクとクレイグ・ドーソンのオウンゴールを誘い、アレクサンドル・ラカゼットが同点に追いつく一撃。スタジアムに足を運べない多くのサポーターも、狂喜乱舞したことだろう。

それにしても……。アーセナルは二面性を持っているかのようだ。3点のリードを奪われるまでと、その後の彼らは別人だ。チャンスを創れず、一対一で後手後手にまわっていたかと思えば、ミケル・アルテタ体制では最高のパフォーマンスで盛り返す。

スリリングな展開とはいえ、アルテタをはじめとするコーチングスタッフは満足していない。一刻も早く安定感を身につけ、数々の栄光に彩られた当時のチームに追いつけ、追い越せが最大の目標だ。

「試合開始から緊張感を欠き、3失点のうち2つは、いかなる言い訳も許されない」

「3点ものビハインドで目が覚めたのか、残り60分は心身ともにタフだってことを証明できた。あと3~4点は取れていたかもしれない」

不安定すぎる試合を、アルテタも複雑な表情で振り返っていた。

今季思うようにゴール数を伸ばせていないオバメヤン photo/Getty Images

オバメヤンはリーダー不適格

3月21日時点で、4位チェルシーとは9ポイント差。トーマス・トゥヘル監督就任以降、ウェストロンドンの強豪は公式戦10勝4分の無敗だ。チャンピオンズリーグの出場権獲得は難しくなりつつある。

ヨーロッパリーグのルートはどうなっているだろうか。ベスト8で激突するのは、ラウンド32でレスターを、ラウンド16でレンジャーズを破った “英国キラー” こと、チェコのスラヴィア・プラハだ。こちらもいばらの道である。

だが、急がば回れ──。

いまはプレミアリーグで地固めをし、チームとしての基礎体力向上に励まなくてはならない。ライバルに比べると見劣りする選手層をテコ入れし、年間20ゴール前後が期待できるストライカーだけは是が非でもほしいところだ。3月21日現在、ラカゼットは11点、ピエール・エメリク・オバメヤンは9点。足らない足らない、足らなすぎる。

また、オバメヤンに代わるキャプテンの人選も急がなくてはならない。28節のノースロンドンダービーでは、練習に遅刻したペナルティとしてスターティングメンバーから外されたが、キャプテンの重責を理解していれば時間は守る。だいたいオバメヤンは、ドルトムントでプレイしていた当時から規律遵守には問題があった。リーダーの器ではない。

成功か失敗かと問われれば、今シーズンのアーセナルはおそらく後者だ。しかし、ウェストハム戦の残り60分で見せたパフォーマンスには可能性が感じられ、緩やかではあるがチームそのものが上昇曲線を描きつつある。

ブカヨ・サカ、キーラン・ティアニー、ガブリエウ・マルティネッリ、エミール・スミス・ロウ、ガブリエウ・マガリャンイス……。明日を担うタレントも十分に揃っている。

文/粕谷秀樹

スポーツジャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

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