ファウル合戦にロングボールの蹴り合い 久保建英がヘタフェで越えなければならない壁

アラベス戦で思うようなプレイができなかった久保 photo/Getty Images

ドリブラーにとってファウルで止められるのは宿命

ドリブラーにとって、ファールとロングボールが多い試合ほど辛いものはないかもしれない。

1月31日に行われたリーガ・エスパニョーラ第21節で、日本代表MF久保建英が所属するヘタフェはアラベスとホームで対戦した。この試合で3試合連続のスタメン出場を果たした久保だが、なかなか見せ場を作ることができず、79分に途中交代。チームも最後まで均衡を破ることができないまま終了のホイッスルを迎え、スコアレスドローに終わっている。

この一戦で特徴だったのがファウルでの潰し合いと、リスク回避のためのロングボールの蹴り合いだ。ドリブルや細かいパスワークなど、足元でのプレイを得意の久保にとって、これらが輝きを放つことができなかった要因でもあるだろう。データとしても、驚きの数字が現れていた。
今回のヘタフェとアラベスの一戦で、サンティアゴ・ハイメ・ラトレ主審がファウルを取った回数は、なんと両チーム合計で「39回」。展開に合わせてファウルを流すシーンも多々見受けられたが、ファウルなしで10分以上プレイが続いた時間帯がなかった。それほど荒れた展開になった印象はないが(イエローカードは90分間で両チーム3枚ずつ)、前半だけでも「24回」のファウルが起きており、これは今季の5大リーグで最多となっている(『opta』より)。久保自身も4度の被ファウルを記録しており、ボールを持ったとしても相手にうまくファウルで止められる形となってしまったのだ。

また、この試合では合計「63回」もの空中戦が行われており(空中戦勝利回数:ヘタフェ「31回」、アラベス「32回」)、いかにロングボールが多かったのか見て取れる。その結果、両チームのパス成功率は悲惨なものに。ヘタフェが「63%」となっており、アラベスはさらに低く半分以下の「48%」だった。そんな中でも久保は唯一8割超えのパス成功率を記録。ただ、タッチ数自体が「33回」と少なく(ほぼ同じ時間プレイしたウエスカ戦では「50回」)、ロングボールの影響もあってなかなかボールに関われなかったのだ。

リオネル・メッシやネイマールを見ても、ドリブラーにとってファウルで止められるのは宿命だ。ヘタフェで“エース級”の活躍が求められる久保は、ファウルに負けないフィジカル、もしくは相手をうまくいなす技術が必要となってくるに違いない。ヘタフェはファール数がリーグトップ(341回)、被ファウル数も5位(277回)とファウル合戦も厭わないため、チームのスタイルを考えるとなおさらだ。そして、ここまで1点を争うような試合が多く、ビルドアップも決して得意ではないため、今後も久保がなかなか活きづらいロングボールの蹴り合いとなる試合が多々あるだろう。これらの壁を乗り越え、いかにして輝きを放つか。久保はさらに一皮剥けなければならないときが来たかもしれない。

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