[粕谷秀樹]チェルシーの悪しき伝統は永遠に繰り返される!? アブラモビッチが堪えきれずにランパードを解任

粕谷秀樹のメッタ斬り 052

粕谷秀樹のメッタ斬り 052

チェルシーの指揮官を解任されたランパード監督photo/Getty Images

暫定を含めて15回も監督を代えた

批判の矛先はフランク・ランパード監督に向けられていた。

昨年12月21日にウェストハムを破った後、プレミアリーグは1勝1分3敗。チェルシーは勝ち点が伸びず、首位マンチェスター・ユナイテッドと11ポイント差の9位に低迷している。19節のレスター戦では完成度の違いを見せつけられ、0-2の敗北を喫した。

監督職は3年目、チェルシーに着任して2年目のランパードに、完成度を期待するのは酷だ。まして今シーズンはティモ・ヴェルナーとカイ・ハフェルツに加え、チアゴ・シウバ、ベン・チルウェル、ハキム・ツィエク、エドゥアール・メンディも獲得している。彼らによってより強い基盤を構築し、来シーズン以降に大きく羽ばたく──が、ランパードが描く青写真だったに違いない。

だが、チェルシーのロマン・アブラモビッチオーナーは辛抱強くない。2003年にクラブを買収した後、暫定を含めると15回も監督の首を挿げ替えてきた。カルロ・アンチェロッティのように、「試合内容が楽しくない」との理由で解雇された例もある。

スタンドから試合を観戦するアブラモビッチオーナー photo/Getty Images

コンテもモウリーニョも追われた

「かつてのようなゴールマシン、アシストマシンが存在しない」

チームの調子が下降線を描くと、ランパードの発言も後ろ向きになっていった。具体名こそ挙げていないが、ディディエ・ドログバやエデン・アザール、セスク・ファブレガスのような一級品がいればな、と考えていたのかもしれない。だが、一軍の将であるのなら、公の場で昔を懐かしむようなニュアンスの発言は避けるべきだった。

なぜなら、後ろ向きのコメントは求心力の低下を招き、出場機会の減少に不満を抱く選手がロッカールームの雰囲気を脚色して外部に漏らす。いわゆる内部分裂の発端になるからだ。

しかもチェルシーは派閥抗争が頻発する傾向があり、過去にはルイス・フェリペ・スコラーリが、基本練習の反復に不満を抱いたジョン・テリーやアシュリー・コールと対立。その座を追われている。アントニオ・コンテはダビド・ルイスとの権力闘争に屈した。ジョゼ・モウリーニョはドクターのエヴァ・メンデスと不仲に陥り、退陣に追い込まれている。

これが悪しき伝統だ。チェルシーは監督解任という短絡的な手法により、トラブルをもみ消してきた印象が強い。そして1月25日、ランパード解任……。内部分裂との情報は聞こえてこない。やはり、アブラモビッチが不振に耐えられなかったのか、後ろ向きの発言を重視したのか。

ただ、愚かな選択である。メイソン・マウント、リース・ジェイムズ、ビリー・ギルモアといった生え抜きの若手が、ランパードの指導によって一段と飛躍している事実に、なぜ目を向けないのだろうか。

監督を軽視し、拙速な人事を続けるオーナーのもとでは新監督(本稿執筆時点で未定)も苦労する。一朝一夕にして構築される組織などありえない。ランパードより経験豊富なユルゲン・クロップ監督(リヴァプール)でさえ、現在のチームを創るまでに4年近くかかった。

文/粕谷秀樹

スポーツジャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

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