[MIXゾーン]今季初の連勝の要因は“安定したビルドアップ” ベルマーレの速攻のキーマンは

3バックの中央でプレイし、正確なロングパスで自軍の攻撃を活性化させた石原広教 photo/Getty Images

自陣後方で抜群の存在感

明治安田生命J1リーグの第26節が11月11日に行われ、湘南ベルマーレが横浜F・マリノスに1-0で勝利した。

10月18日の柏レイソル戦以降、リーグ戦4試合連続負けなし(2勝2分け)とポジティブな状況でこの試合を迎えたベルマーレの浮嶋敏監督は、前々節や前節と同じスターティングメンバーを採用。この日のベルマーレはハイプレスをあまり行わず、自陣後方で守備ブロックを形成。[3-1-4-2]という布陣の2トップで起用された指宿洋史とタリク(52分より中川寛斗)が相手ボール時にセンターサークル付近まで下がったほか、畑大雅と岡本拓也の両ウイングバックも最終ラインまで後退し、[5-3-2]に近い布陣でF・マリノスのパスワークに対抗した。自陣バイタルエリアのスペースを徹底的に埋め、奪ったボールを素早くサイドへ送り速攻を仕掛けるというプランは奏功。カウンターから何度かチャンスを作ったほか、F・マリノスにボールを支配され続けた後半も守備の統制は乱れず。62分に齊藤未月がコーナーキックからゴールを挙げ、これが決勝点となった。

ベルマーレが速攻を仕掛けるうえで重要な役割を担ったのが、石原広教、田中聡、舘幸希の3バックとアンカーの金子大毅。3センターバックの左に入った田中はF・マリノス陣営のハイプレスに物怖じせず、この日も幾度となく自陣から力強いドリブル突破を披露。3センターバックの右で起用された舘も相手のハイプレスをいなす縦パスを複数回出し、自軍のビルドアップに貢献していた。
そして3センターバックの真ん中でプレイした石原は、6分50秒すぎに右ウイングバックの岡本へ正確なロングフィードを送って速攻を演出するなど、攻撃の起点として機能。金子も9分40秒すぎに右サイドを駆け上がった岡本へロングパスを放って速攻の起点となり、このプレイは指宿の惜しいシュートに繋がった。この試合で石原はチーム内で2番目に多い4本、金子は3番目に多い3本のロングパス成功数を記録(『Sofa Score』より)。二人のパスセンスの高さはスタッツにも表れている。

また、浮嶋監督はF・マリノス戦後に行われたオンライン会見で、3バックとアンカーの金子を使ったビルドアップについて言及。F・マリノスの布陣の弱点をふまえたうえで、この4人を中心に縦に速い攻撃を繰り出せたと試合を振り返っている。

ーー特に前半、F・マリノスのハイプレスに対し、ベルマーレの3バックと金子選手によるビルドアップが安定していたように見えました。金子選手や石原選手のロングパスの精度も高かったように見受けられましたが、監督はどのように評価されていますか。


「F・マリノスさんは([4-2-1-3]という布陣の)前の4人でハイプレスするんですけど、逆にボランチの脇にはいつもスペースができます。(闇雲にボールを)蹴って相手ボールになってまた(ボールや人を)動かされるよりも、落ち着いて良い判断をし、(空いているスペースを)使っていこうという話は試合前からしていました。(自陣)後方ではなく、ひとつ前(中盤)のスペースを攻撃の起点として使ったことで、相手の背後(へのパス)の本数は増えたのかなと思います」

浮嶋監督が述べた通り、特に前半は田中と舘が相手のトップ下(天野純)や2ボランチ(喜田拓也、和田拓也)の脇のスペースへドリブルし、攻撃の起点となろうとする動きが多かった。この試合ではセットプレイによる1点に留まったものの、攻撃面でのスキルが高い3バックとアンカーの金子を中心にF・マリノスの獰猛なハイプレスをかい潜り、何度かチャンスを作れたことは、ベルマーレの面々にとって自信に繋がるだろう。今季初の連勝を飾ったベルマーレが、今後どこまでリーグ順位を引き上げられるかに注目だ。

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