[MIXゾーン]初先発・奥野の躍動に表れた、G大阪宮本監督の若手への期待

負傷の井手口の代わりにチャンスを掴んだのは、ユース上がりの奥野耕平 photo/Getty Images

井手口負傷によるスクランブルが良い方向へ

「あれだけやったなぁ……」

 記者席を立ち、スタンドから下りる階段を歩いていると、神戸のチーム関係者の声が聞こえてきた。神戸から見れば確かに『あれだけ』だった。

 その『あれだけ』とは27分のG大阪のFWパトリックの一撃。それまで優勢に試合を進めていた神戸にとっては痛恨の一撃となった。

「いいコンビネーション。僕とタカシ(宇佐美)ね(※ここまで日本語で)。前節も難しい試合でアシストで貢献できて、今回もゴールでチームが勝てたのがよかった。自分だけでなく、チーム全体で戦っている」(パトリック)

 90分を通じて難しい時間帯が非常に長かったG大阪だが、ひとつひとつの試合を拾っていくことが一番重要で、そのひとつひとつの積み上げが今の12戦負けなしという結果に繋がっている。パトリックが活躍する時間帯は数えるほどだったが、守備の組織は堅牢だった。特にこの試合ではここまでチームを大黒柱の役割で支えてきたMF井手口がケガによってベンチを外れたが、その代役を任されたMF奥野が持ち味を発揮した。この試合がJ1デビューとなったアカデミー出身の俊英は、試合後にこう話した。

「自分の特長をすごく出せた試合かなと思う。それができたのも周りのおかげというものあるので、もっと独立してプレイが幅広くできるような選手になれたらと思う」

 たらればになってしまうが、もしここに今野や遠藤(共に現磐田)がいて、試合に勝ったとしても、それはベテランがその仕事を全うしただけで終わってしまう。その意味では宮本監督はベテランにリスペクトがないと批判を浴びながらも若い選手を積極的に起用。結果的にチームの新陳代謝を進め、同時に結果を残している。中心選手への依存は安定とは裏腹にチーム内に競争原理が働かなくなるという問題も生じさせる。逆に若手の積極起用は劇薬でもあるが、成功した見返りは大きい。

「今回こうして(井手口の負傷による)スクランブルだったが、やっぱりこのチャンスを逃したくないとかそういうものが見えたパフォーマンスだったと思う。若い選手がチームの中でポジションをつかんでいくにはちょっとした運も必要だと思う。そこでどういうパフォーマンスを出せるか。良い準備ができているかというところが大事であって、そういうものができていたから、こういうパフォーマンスにつながったというふうに見ている」

 宮本監督の言葉はすべての若手選手に対する期待といい換えてもいいだろう。

 ただホームのG大阪が守備で選手が際立ったというのは、神戸が圧倒的にボールを保持していたことの裏返しである。

「負けは悔しいが、それでもポジティブに捉えたい部分もある」

 試合後、三浦監督はこう話した。

「ポジション取りは選手が意識してできて、いい攻撃もできて、チャンスもあった。そこをしっかり決めないとピンチが出てくるということだと思う」

 まさにこの言葉が試合をすべて物語っている。圧倒的にボールを支配しながら、G大阪の守備を最後まで崩し切ることができなかった。ただ一方で右SBに山川を起用し、CBの大崎をボランチに。途中でその大崎と交代で本来SBの西をボランチに入れるなど、チームとしての新しい取り組みは随所に見えた。

「若手の成長とやりたいこと、攻撃の部分ではやりたいことはできた」

 決してこれは強がりではないだろう。神戸としての方向性は一貫しているし、決して間違ってはいないと思う。今は産みの苦しみ。今月下旬にカタールで開催されるACLに向けて、チームは少しでも上昇曲線を描きたい。


文/吉村 憲文

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