[MIXゾーン]手段が目的になってしまった 神戸に感じた“なんのためにボールをつなぐのか”の疑問

三浦監督の狙いは逆手に取られてしまった(写真は札幌戦) photo/Getty Images

ここ4試合で1分け3敗と苦しむ

 再び神戸がもがき苦しんでいる。10月4日の横浜FM戦を最後に白星から遠ざかり、この鹿島戦を含む4試合で1分け3敗。三浦監督就任当時の勢いは完全に失われてしまった。前半鹿島のプレッシングに神戸は苦しんだ。それも原因は自らにあったようだ。

「順也さん(FW田中)と亨梧(FW古橋)がワイドに開くという戦術だった。(田中と古橋を相手の)SBに見させるやり方がミーティングでも毎試合あるので、やっぱり真ん中では孤立するというか……。相手は4バックで、CB2枚で(FW)1枚を見られている状況でなかなか受けるところまでいけていない。受けてもサポート、距離感が遠かったのもあるし、前半は難しかった」(FW藤本)

 神戸としてはワイドに開くことで、相手のDFとDFの距離を開かせる意図があったのだろう。しかし鹿島の守備の距離が開くより、自らの攻撃の選手の距離が開いてしまうことで、前線にボールが収まらず、最終ラインも押し上げることができないという状態に陥ってしまった。

 同時に神戸の失点(鹿島の得点のシーン)に鹿島のFW上田は「(神戸は)ビルドアップにすごく力を入れているチーム。(CBの)2枚が開いてGKを使いながらボランチを経由してというのは分かっていた。やっぱり真ん中のスペース、奪った瞬間のスペースは空くと思っていたし、常にそこはボランチと目を合わせられる距離やポジショニングを意識していたので、そのポジショニングを(MF三竿)健斗くんに見てもらえて、それがゴールにつながったと思う」と話した。神戸のようなビルドアップをするチームに、こうやって戦うんだよっという、ある意味教科書のような対応を鹿島はしてきたことになる。

 元々が鹿島というチーム自体がそれほどポゼッションに重きを置くサッカーをするものではない。割り切りといってもいいほどだ。サッカーに於ける究極の目的は勝つことであり、そのプロセスにポゼッションが必要になる場合もあるが、時にそのポゼッション自体が目的になってしまい、相手の守備ブロックの外側でパスを繋ぐばかりになってしまうチームも多い。特に日本人は監督にいわれたことに忠実なばかりに、手段が目的になってしまうことも多い。極端にいえばビルドアップの場面だけでなく、藤本が語った前線3人の距離についても、これはダメだと思ったなら、ベンチの指示を待たずに選手自らがシステムを変えることを提案することもあっていいはずだ。実際にヨーロッパでは育成年代の選手が監督に「このシステムでは戦えない。変えさせてくれ」ということが多いという。文化の違いといえばそれまでだが、神戸はみすみす前半45分を機能しない戦い方のために費やしてしまったともいえる。

 後半になり「順也さんが中気味というか、亨梧も中に入ってきてワンツーを狙ったりできたので、後半の戦い方をもう少しできれば良かったと思う」(藤本)。

 神戸が修正をもう少し早くできていれば、元々ポテンシャルはあるチームなので試合展開が変わっていた可能性は高い。ただしそうなる前に前半の内に2点を奪いきった鹿島の老獪さが見事だったともいえる。

 ボールは何のために繋ぐのか? そんな思いを巡らせる試合だった。

文/吉村 憲文

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