[Season Review 2019/20]最速優勝リヴァプール、台頭の中堅クラブ 混沌のプレミアは新時代に突入

屈辱の昨季をバネに リヴァプールが見事な倍返し

屈辱の昨季をバネに リヴァプールが見事な倍返し

完全に暗黒期を脱し、2位以下を大きく引き離したリヴァプールが今季の主役となった photo/Getty Images

リヴァプールが実に30年ぶり、プレミアリーグでは悲願の初優勝を達成。2019-20シーズンは赤く染まり幕を閉じた。無傷の開幕8連勝と抜群の出足を見せた彼らは、みるみるうちに後続を引き離し、7試合を残しての史上最速で優勝を決める。戦績は32勝3分け3敗。勝点99。最速優勝も含めて、今季のリヴァプールは多くの記録を達成した。シーズン32勝、ホーム18勝、18連勝は、いずれもリーグタイ記録だ。マンチェスター・シティが2シーズン前に樹立した勝点100にはわずかに1ポイント及ばなかったが、優勝がこれほど早く決まらなかったら新記録達成も十分に考えられた。1分け2敗は、優勝決定後に喫したものだ。

抜群の強さを見せたリヴァプールだが、振り返れば彼らは昨季も強かった。稼いだ勝点97。通常なら優勝する数字だが、充実のシティに勝点1差でトロフィーをさらわれてしまう。だが、情熱家であり、戦略家でもあるクロップ監督は、すでに完成度の高かったチームをもう一段レベルアップさせることに成功する。
 
クロップ体制のリヴァプールは、“ゲーゲンプレス”という言葉に象徴される疲れ知らずのプレッシングで敵を圧倒する。だが、次第に研究されたことで敵に引かれ、ボールを持たされたときに攻めあぐねる場面も見受けられた。

ドイツ人指揮官は、この課題を短期間でクリアしたのだ。クロップ体制5年目の今季、リヴァプールはプレッシングを基調にしながら、状況によっては自陣から丁寧につなぐポゼッションスタイルで敵を揺さぶった。ボールを保持して攻め込むためのポゼッションというよりは、敵を釣り出して自分たちのペースに持ち込むためという性格が強かったが、これが奏功した。本来の強みを変えず、確実に引き出しを増やす。この難しい仕事をやってのけたクロップこそが、優勝の最大の立役者ということができるだろう。

もちろん主力たちも、クロップ采配に力強く応えた。守護神アリソンは開幕戦で故障離脱を余儀なくされるが、コロナ禍による中断前には7試合連続でクリーンシートを達成。鉄壁の守りを見せた。CBファン・ダイクも、怪我人が続出した最終ラインを力強く支えた。ワールドクラスの仲間入りを果たしたといっていい。

出色の働きを見せたのは、21歳の右SBアレクサンダー・アーノルド。右足から多彩なキックを繰り出し、ディフェンダーとしては史上最多となる13アシストを記録する。

抜群の運動量を誇るロバートソン、キャプテンとして力強くチームを牽引したヘンダーソン、さらにファビーニョといったMF陣も充実の一途。リヴァプールの看板となる3トップも、シーズンを通じてハイパフォーマンスを持続した。マネはポゼッションスタイルにも順応、サラーは大一番で決定力の高さを遺憾なく見せつけた。そして、フィルミーノは最前線の司令塔として柔軟に周りを生かし、チームに勝利をもたらした。圧倒的な強さを見せつけた栄光のイレブンは、熱狂的なレッズ・サポーターから永遠に語り継がれることだろう。

プレミアに弱いチームなどない インパクトを残した中堅クラブ

プレミアに弱いチームなどない インパクトを残した中堅クラブ

決定力でレスターを引っ張ったバーディ。23ゴールで得点王に輝く photo/Getty Images

今季のトピックとしては、リヴァプール独走のほかに中堅クラブの躍進を挙げなければならない。充実のシーズンを過ごしたチームは、レスター・シティ、ウォルバーハンプトン、シェフィールド・ユナイテッド。強豪アーセナルやトッテナムが不調にあえぐ中で、彼らの迷いのないサッカーがリーグテーブルをかき乱し、終わってみればレスターが奇跡の優勝を遂げた15-16シーズン以上に順位は混沌としている。プレミアに弱いチームなど存在しない、それを改めて印象付けられたシーズンだった。

レスターは最後の2試合でチャンピオンズリーグ出場権を失ったが、前半戦は2位を堅持。衰えぬ決定力で得点王を射止めたバーディが目立つが、CBソユンク、SBリカルド、MFエンディディ、MFマディソンなど、多くの選手が水準以上の働きを見せ、ビッグクラブからの注視を集めた。

ウルブズは昨季記録したプレミア最高となる7位を維持。力が本物であることを示したシーズンだといえる。安定した守りをベースに、爆発的なパワーとスピードを持つトラオレの存在が上位陣を悩ませた。13シーズンぶりにプレミア昇格を果たしたシェフィールド・Uは、こちらも手堅い守備と、CBがオーバーラップする特徴的な戦術で9位に。昇格組としては称賛に値する躍進を見せた。

また、リヴァプールの圧倒的な戦績のおかげでトップ6が霞んでしまった中でも、予想以上の結果を残したのがチェルシーだ。昨オフ、FIFAから補強禁止処分を受けたチェルシーは、陣容の大幅な刷新を余儀なくされた。アザール、イグアイン、ダビド・ルイスといった主力が抜け、加入したのはローンバックした若手ばかり。だが、新監督ランパードの大胆な采配もあって、FWエイブラハム、MFマウントといった若手が躍動。後半戦はジルーらベテラン勢への配慮も見せ、見事にチームをコントロールした。ランパードは来季に期待をつなぐ結果を見せた。

2人の司令塔が輝き放つ コロナ禍で注目された選手も

2人の司令塔が輝き放つ コロナ禍で注目された選手も

『BBC』で行われたファン投票で、年間最優秀選手に選ばれたデ・ブライネは13得点20アシスト photo/Getty Images

選手個人に目を移すと、前述したマネ、ファン・ダイクに加え、シティのデ・ブライネ、ユナイテッドのブルーノ・フェルナンデスが目を見張るパフォーマンスを見せた。

シティの攻撃を操るデ・ブライネは、パス、ドリブル、シュートとすべてのプレイが異次元で、卓越した戦術眼を備えている。世界で最も優れた司令塔といってもいいだろう。

1月に加入して、瞬く間にユナイテッドの王様になったB・フェルナンデスも、デ・ブライネに匹敵するインパクトがあった。出場わずか14試合で8ゴール7アシスト。ユナイテッド終盤の追い上げは、この男を抜きにしては考えられない。

最後に。新型コロナ感染拡大で中断を余儀なくされる混乱したシーズンとなったが、中断期間に輝いた選手がいることにも触れておきたい。中断が3カ月以上に及んだなかで、マンチェスター・Uのラッシュフォードが存在感を見せたのだ。

貧しい家庭に育ち、無料給食によって助けられた経験を持つ彼は、6月に終わる予定だった貧困家庭救済のための無料給食制度の継続をアピール。ボリス・ジョンソン首相と電話会談を行なった結果、継続を勝ち取り、130万人を超える子どもたちが夏休み中も無料給食の恩恵にあやかれることになった。

フットボーラーは社会を変えられる。ラッシュフォードの行動は、英国内だけではなく世界中のアスリートに大きな刺激を与えたに違いない。試合の行方やゴールだけでなく、こういった面にもスポットが当たったことを考えれば、稀有なシーズンだったということができる。

文/熊崎 敬


※電子マガジンtheWORLD(ザ・ワールド)248号、8月15日配信の記事より転載


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