[Season Review 2019/20]リーガの2強時代はまだ続く 随一の完成度を誇った“走れるスター軍団”

タイトルを手にしたのは“白い巨人” 終わってみれば完成したチームに

タイトルを手にしたのは“白い巨人” 終わってみれば完成したチームに

開幕当初のレアルには不安の声もあったが、ジダン監督は最終的に完成度の高いチームを作り上げた photo/Getty Images

優勝争いは2強のマッチレースだった。優勝したレアル・マドリードが87ポイント、2位バルセロナが82ポイント。やはりこの2チームが図抜けていた。

3、4位が70ポイントのアトレティコ・マドリードとセビージャ。さらに10ポイント差の60ポイントでビジャレアルが5位。レアル・ソシエダとグラナダが56ポイントの6、7位となっている。

レアルとバルサの首位争い、CL出場圏内の3、4位、EL出場圏内の5、6、7位(7位は予備選から)の3つのグループの勝ち点はそれぞれ約10ポイント離れている。それぞれの間に勝ち点10の“越えられない壁”があったわけだ。

開幕当初は、もう少し混戦になるかもしれないと思っていた。プレシーズンのレアルは明らかに調整不足で、アトレティコに大敗するなど、あまりにもチームが出来上がっていなかった。バルサは開幕してからもリオネル・メッシを欠いたまま。しかし、スタート時点の完成度の低さはさほど影響もなく、前半戦はバルサ、後半戦はレアルが首位を走る展開となり、後続チームはどんどん引き離されていった。

中断後から怒濤の連勝でバルサを振り切ったレアルは、今季の欧州全体を見回してもベストチームの1つだと言えるほどだった。過密日程は分厚い選手層のレアルにとってはむしろ好都合だったと言える。誰がプレイしてもチームのパフォーマンスを一定にできる基盤が出来ていたのが勝因だろう。

リーグ戦再開後はとくに守備が整備されていた。レアルのこれまでのあり方からすると、異例の仕上がりだったと言っていい。高い位置から相手の出どころを抑え込むプレッシングは実に機能的だった。クリスティアーノ・ロナウドの後釜として獲得したエデン・アザールは負傷で実力を発揮しきれなかったものの、それがマイナスとはなっていない。今でもスター軍団と呼べるレアルだが、逆に飛び抜けた存在がいないぶん、全員が平等にハードワークをするようになった。スター選手たちがハードワークを怠らないチームが弱いはずもない。セルヒオ・ラモスを中心とした守備、カリム・ベンゼマが多角的なプレイで他の選手たちをリンクさせた攻撃はどちらも完成度が高かった。

中盤ではルカ・モドリッチ、トニ・クロースが次第に調子を上げ、カゼミロは今季も替えがきかない存在だった。新鋭フェデリコ・バルベルデの台頭がチームに活力を生み出したのも大きい。ジネディーヌ・ジダン監督は一体感あるチームを作り上げ、また一つタイトルを獲得してみせた。

監督交代もバルサに変化はなし “メッシの活かし方”はまたも課題に

監督交代もバルサに変化はなし “メッシの活かし方”はまたも課題に

一時はメッシ(左)の新相棒と期待されたビダル(右)だったが、解決策とはならず photo/Getty Images

バルサはシーズン半ばでエルネスト・バルベルデ監督を解任してキケ・セティエン新監督を据えた。バルベルデは連覇監督で、解任時点でも3連覇の可能性は十分あった。それでも、あえて監督を代えたのはバルサがバルベルデに限界を感じたからだろう。

しかし、セティエン監督になってもバルサはさほど変わらなかった。メッシがいるかぎり、チームを変えるのは無理なのだ。メッシの守備負担を軽減するためにシステムを組まなければならないので、小手先に形を変えても根本的な変化とはならない。無理に変えようとすればメッシ以外のフィールドプレイヤーに何らかの負荷をかけることとなり、システム自体も歪になる。攻撃もメッシのスタイルに合わせていかなければならないので、本来の特長を発揮できない選手も出てくる。しかし、リーグ最多得点、最多アシストを記録したメッシは言うまでもなく不可欠の選手であり、彼と共存する道を探るのがバルサの宿命なのだ。

全員がハードワークするレアルと違い、バルサはスーパースターであるメッシのために他の選手が余分にハードワークする。セティエン監督はアルトゥーロ・ビダルの活用やメッシのトップ下起用など、新たな形にもトライした。だが、決定版を見出せないうちにシーズンが終わってしまった。

強みが見えた後続グループだが…… 2強を追うには力不足

強みが見えた後続グループだが…… 2強を追うには力不足

今季11ゴール・10アシストの活躍で完全復活を遂げたカソルラ photo/Getty Images

しかし、それでも今季は2強とその他チームの差を感じたシーズンだった。アトレティコ・マドリードは相変わらずの堅守が看板だったが、全体のバランスを比べると以前よりも攻撃の割合が増えている。攻守に偏りのないスタイルと言えば聞こえはいいが、かつての尖鋭的な強さが薄れてしまった感がある。

バルサへ移籍したアントワーヌ・グリーズマンの穴を埋める存在として期待されたジョアン・フェリックスもそこまで活躍できなかった。ただ、まだ19歳のFWにそこまで重荷を負わせること自体が厳しかったのではないか……。マルコス・ジョレンテの躍進、中国からシーズン中に戻ってきたヤニック・カラスコの活躍こそあったものの、2強へ迫るにはやや力不足だった印象は否めない。

アトレティコと並ぶ70ポイントを積み上げたセビージャは、フレン・ロペテギ監督の下で安定したプレイぶりを披露した。フィールドを広く使っていく組み立ての軸となったのは、正確なフィードが売りのエベル・バネガだ。マルセイユから獲得したルーカス・オカンポスもダイナミックなプレイで活躍し、アルゼンチン・コンビの躍動は光っていた。また、ヘスス・ナバスの右SBコンバートが当たったことも大きい。典型的なウイングプレイヤーだったナバスのDF起用は守備面で未知数だったが、この男は指揮官の期待に応え新境地を拓いた。ピンポイントのクロスや突破はもともとの特長だが、かつて自分がプレイしたウイングの活かし方を心得ている点もコンバートの成功を助けたはずだ。

そして第2グループから10ポイント離されたビジャレアル。だが、彼らに関しては後半に追い込みをかけて5位フィニッシュを勝ち取ったと言っていい。負傷による2年ものブランクを経て復帰したサンティ・カソルラが完全復活を果たし、中盤をリード。メッシ、ベンゼマに次ぐ18ゴールのジェラール・モレノが攻撃を牽引。守備力のあるMFザンボ・アンギサが馴染んだのも大きく、ビジャレアルらしいコンパクトな守備と鋭いカウンターアタックでリーガを戦い抜いた。カソルラのアル・サッド移籍が決まった来季は、新加入となる久保建英のプレイにも注目が集まるだろう。

7位に滑り込んだグラナダは今季のサプライズだった。昇格組ながら果敢な攻撃的スタイルを披露。ベテランストライカーのロベルト・ソルダードが落ち着いたプレイと得点力で攻撃をリードし、裏抜けの上手いアントニオ・プエルタス、ベネズエラ代表のヤンヘル・エレーラなどが躍動した。

とはいえ、これらのチームが2強へ挑める力を示したかと言われれば、そうではない。レアルやバルサといったチームに対抗するには、まだ足りない部分が多かった。

チームは降格も奮闘した久保 マジョルカで示した稀有な能力

チームは降格も奮闘した久保 マジョルカで示した稀有な能力

マジョルカで充実のシーズンを送った久保。第34節アトレティコ戦では圧巻のドリブルを披露した photo/Getty Images

降格はレガネス、マジョルカ、エスパニョールの3チーム。名門エスパニョールの降格は意外だった。久保はマジョルカの攻撃の中心として後半戦に存在感を示したが、チームを降格から救うことはできなかった。しかし、課題の守備力も改善され、狭いスペースで敵を操れる独特の才能を発揮。短期間で急速に成長している。

久保はボールタッチの間隔が短く、そのため自分の間合いで1対1に挑める。ボールが足下にあるので変更がきく。相手の体勢を見て、最初のボールタッチで先手をとれば、連続的に相手の逆を取り続けられる。この持ち方ができるので狭い地域でも困らない。相手が塞いでいるはずのほうにボールを通すこともできる。これは稀有な能力だ。アトレティコ戦、レアル戦で複数のDFをごぼう抜きしたシーンは、久保の才能を表していた。ただ、才能だけで評価される世界ではない。その点で、ビジャレアルへの貸し出しが決まったのは良かった。レアルでベンチに座るより、ELでのプレイ機会も見込めるビジャレアルで出場し続けることで新たな成長が期待できる。

例年より混戦が予想された2019-20シーズンだったが、終わってみればむしろ2強と後続グループ、さらにその他の差が広がっていた印象だ。

しかし、守備のやり方に関してはリーグ全体として変化が見られたシーズンだったと言える。EL圏内に入ったビジャレアル、レアル・ソシエダ、グラナダは前方からプレスを行い成功を掴んだ。納得いく結果こそ得られなかったが、8位のヘタフェ、降格を免れたエイバルも同様。「バスを置く」のではなく攻撃に直結させられる守備を選択して一定の成果を挙げている。とはいえ、それで他チームとの差別化を図れた一方で、レアル、バルサなど格上に大敗するリスクも増大したことは否定できない。2強、CL圏内、EL圏内、その他の格差は縮まるようでかえって広がる結果となっただけに、来季は各チームがこの守備のクオリティを押し上げてどこまで上位グループとの差を縮めることができるか。これがポイントとなってくる。

文/西部 謙司


※電子マガジンtheWORLD(ザ・ワールド)248号、8月15日配信の記事より転載



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