[MIXゾーン]G大阪と川崎の明暗を分けた、ほんのわずかな展開の違い

今季好調の大島は試合を変える能力を持っている photo/Getty Images

立ち上がりは優勢に立ったG大阪だが

 現在4連勝中で2位につけるホームG大阪、一方こちらは更に上回る6連勝で絶好調の首位川崎。シーズン序盤とはいえ、注目の首位決戦にチケット発売上限の5000人に迫る4925人がスタジアムに駆けつけた。

 G大阪は3バックで両WBを高く置く3-5-2の布陣。一方の川崎は中盤逆三角形の4-3-3である。中盤の枚数が違う分、どちらが主導権を握るのかが重要になる。そしてキックオフからの45分は中盤の枚数に優るG大阪が川崎陣内でプレイする時間帯が非常に目立った。

 これに川崎の鬼木監督は「自分たちのところで、ワンタッチなのかツータッチなのかという判断がちょっと良くなかった。相手のプレッシャーに対して、『(G大阪が)来ているな』と感じてしまったんだと思います」と振り返った。ホームチームの速い出足に、僅かではあるが判断の遅れが誘発されたということだろうか。そこでプレッシャーを受けると重心は後ろに下がり、自陣で守備に時間を費やす時間帯が増えることになる。
 G大阪はシステム的にも川崎の一枚のボランチの横にできるスペースを有効に使った。特に3試合ぶり先発出場となった右WBの小野瀬は、サイド一辺倒ではなく、内に絞って、ゴール前に顔を出すなど、川崎にとってはなかなか捉えにくいポジションを取り続けた。実際小野瀬は前半20分には相手ゴール近くで逆サイドで川崎の選手が大きく展開しようとしたパスをカット、そのままシュートに持ち込む。惜しくもポストを叩いたが、小野瀬の持ち味をしっかりと表現したプレイだった。

 ただこうしたチャンスを逃し続ければ流れが変わってしまうことはサッカーの常識でもある。

 後半立ち上がり、G大阪すれば不意打ちを受けたように川崎のMF大島がミドルシュートを突き刺す。

「あの失点はまだ記憶が曖昧ですが、ボールの失い方が悪くて相手の攻撃が始まった記憶があります。僕の立ち位置が良くなかったし、あとはシュートを打たれた場面も自分があのポジションまで帰っていたら、相手の横パスからシュートを打たれていなかったのではと思います」(MF矢島)

 コメントの冒頭を考えると、若干だがG大阪に立ち上がり、しかも優位に試合を進めていたが故の落とし穴があったようにも思える。集中力を欠いたという表現は簡単だが、実際よもやという感じでゴールがあっさり決まってしまったのも事実である。同時にハーフタイムでMF脇坂に代えて三苫を投入したことで、小野瀬から自由を奪い、逆に前への推進力を取り戻した鬼木采配がズバリはまった形だ。大島のシュートをお膳立てしたのも三苫である。

 ゴールが試合の流れを変え、前半は鳴りを潜めていた川崎の攻撃力が徐々にG大阪を上回るようになる。特に右サイドを封じられたことで、G大阪はなかなかプレイのリズムが戻らなかった。結果的にいえば大島のゴールが両チームにとっては唯一のゴールとなった。首位川崎強しを印象付け、G大阪には若干の勝負弱さを感じる試合だった。だが僅かな展開の違いがあれば勝敗がひっくり返っていてもおかしくないゲームだったことも確かだ。シーズンが佳境を迎えた時、両者が優勝争いを繰り広げている中での対戦となる可能性を十二分に感じた。酷暑の中で力を出し合った両チームに拍手を送りたい。

文/吉村 憲文

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