ここまでライプツィヒの遅攻についてご説明しましたが、始めにお話しした通り、このチームは昨シーズンまで磨きあげてきた縦に速い攻めであったり、ハイプレスからのショートカウンターを今シーズンから“やらなくなった”わけではありません。ユスフ・ポウルセンやパトリック・シックといった高身長のFWがいますので、ハイプレスを仕掛けてくるチームに対しては無理に後方からショートパスを繋がず、彼らへのロングボールを選んでいます。
ロングボールが彼らに収まればそこが攻撃の起点になりますし、もし彼らが空中戦で勝てなくても、こぼれ球に対して連動したプレスをかければ、ショートカウンターに繋がります。実際にロングボールのこぼれ球をヴェルナーらが素早く回収し、2次攻撃に繋がったことが今シーズン何度かありました。
昨シーズンまでは直線的に相手ゴールを目指す攻撃に特化している印象が強かったライプツィヒが、相手の出方に応じて遅攻と速攻を使い分けることができるオールマイティなチームへと変貌を遂げた。これが今シーズンの彼らの躍進の理由ではないでしょうか。
若手主体のチーム編成でありながら、ここまで多彩なサッカーができるまでに成長したライプツィヒというクラブに、私自身魅力を感じています。今の彼らにはブンデスリーガを制するだけの力であったり、昨シーズンのアヤックスのようにUEFAチャンピオンズリーグの舞台でサプライズを起こせるだけのポテンシャルが備わっていると思います。来月9日に行われるバイエルンとの直接対決(ブンデス第21節)や、チャンピオンズリーグ・ラウンド16のトッテナム戦で彼らの真価が問われるでしょう。成長著しいライプツィヒ・サッカーのスペクタクルを、この2カードでぜひご堪能下さい。
ではでは、また次回お会いしましょう!
水沼貴史(みずぬま たかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。
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