[MIXゾーン]中村俊輔、横浜FC昇格決定後のコメント全文 脳裏をよぎった「引退」の二文字 

今夏に横浜FCへ移籍した中村俊輔 photo/Getty Images

今季の苦悩や葛藤を吐露

横浜FCは24日、明治安田生命J2リーグ第42節で愛媛FCと対戦し、ホームで2-0の勝利を収めた。この結果、J2の2位を死守し、自力で2007年以来13年ぶりのJ1復帰を決めている。

今夏にJ1のジュビロ磐田からJ2の横浜FCへの移籍を決断した現在41歳のMF中村俊輔。この試合でスタメンに名を連ねると、82分までプレイし、チームの勝利、そしてJ1昇格に大きく貢献した。ピッチを去る際には多くのファンが拍手を送り、シーズン途中ながら横浜FCへ加入し、J1へ導いてくれたことに感謝を示しているように見えたが、ただここまでの道のりは決して簡単なものではなかった。日本中のサッカーファンを魅了してきた“天才レフティ”が、今夏の大きな決断、これまでの苦悩や葛藤、復活劇など、試合後に様々な心境を明かしてくれた。その全文は以下の通りだ。

ーー 先発でピッチに立ち、チームが昇格に貢献したことについて


41歳までやっているとこういうこともあるし、ジュビロにいたときのこともあるし、前のところを離れなきゃいけないこともあるし。全部自分で決めたから、努力して突き進んでっていう感じで。こういう経験ができたのも自分ひとりだけではないので、そういうことに感謝。初めてJ2というものに来たから、自分で自分を、カテゴリーを落としたことろ認めたことだから、そこの葛藤がまずあった。そのあとに、試合になかなか出られない。で、ベンチ外。だからもう、J3か引退しかないという、そこまでの危機感というか……。もう恐怖だよね。そういうのを味わったから、また長くやってて良かったなと。
そこから、これがおもしろいんだけど、ベンチ外になって、吹っ切れて、ここの(スタイル)に合わせよう合わせようとして……。ボランチはボランチのトラップの仕方とかあるけど、下さん(下平監督)が求めていることと、もともと自分のトップ下の感覚というものを織り交ぜたら、ベンチ外の練習でだんだんだんだん自分の中でフィットしてきて……。やっぱり、それも(監督たちは)見ているんだよね。京都に負けてしまったのもあったけど、(試合に)出させてもらって、自分もベンチ外だったけど、「もうこれはできるわ」っていう感覚があったから、ヴェルディ戦ではまった。今まではうまく来たから、こういう経験ができたのも大きいと思いますね。選手としてもそうだけど、今後自分が他の選手に言えたり、指導者とかになったりしたときに。

イバとレアンドロ(・ドミンゲス)を外すという選択は、なかなかできないことだから。でもそれと同時に、(齋藤)功佑とミナ(皆川佑介)の調子も上がってたし、(ボランチでコンビを組んだ佐藤)謙介なんてずっとベンチ外だったじゃないですか。だからオレとセットだとすごい良かったっていう。オレもね。そういうチョイスの仕方とか、他のクラブではなかなかないから、真ん中の4人を替えるってなかなかない。だから、ベンチになっている選手、ベンチ外の選手の調子を常に監督やスタッフが見て、ああではない、こうではないって言っているんだろうなと思う。だから大変だなと思って、指導者やチームの人たちって。

ーー 先制点となったPKのシーンで、ボールをすぐさま皆川へ渡したことについて


ミナは(今季)0点でしょう? それと毎試合、点以上のものをチームにもたらすので……。FWが守備をするっていう貢献の仕方って、いまどきあんまりないけど、そこもちゃんと下さんとかが見抜いたり。前の選手があそこまで追ってくれるからフィルターがかかって、(相手が)後ろまで来ない。オレと謙介は守備が上手いわけではないので。得点以上の貢献をしていたし、PKだけどこれでミナは仕事をしたし。だから、ミナに蹴る権利があった。今までの積み重ねで。だから普通に渡しました。

-ー勝てば昇格が決まる中で、プレッシャーはあったのか


ありますよ。いや、今日はというよりは毎試合かな。これ1回でもミスったら、また……。松井(大輔)や田代(真一)、ボランチはいっぱいいるから。ナベ(渡邊一仁)だったり、功佑も後に下がってボランチもできるし。だから、そっちのプレッシャーの方が大きくて、J1に上がるっていうのを上回るプレッシャーだったかな。ヴェルディ戦なんかは本当にそれ。あれでコケたら、また戻っちゃうしね。一発勝負で、点が取れたから良かったけど。

(勝てば自分たちで昇格できるというプレッシャーは)あんまりなかったよ。例えばオレの経験、マリノスのときの2013年だと、いつもよりなんか客さんが増えていて、横のスタンドの客さんは声が全然聞こえない。やっぱ優勝を見に来ただけのお客さんというか、ゴール裏のサポーターが浮いちゃっている。だから雰囲気もね……。この場面でズッコケさせてやれ見たいな、あの時の(アルビレックス)新潟もすごかったからそれにのまれちゃって……。でも今日に限ってはそんなに。もともと練習中の1週間も(プレッシャーは)なかったし、試合前から大丈夫だなというのはあった。浮き足立つとかも。

ーー その6年前の経験が今回に活きたのか


いや、ひとりでは無理なんで。あのときキャプテンですけど、決定機も何回かあったけど、結局なかなか入らないままみんな硬くなってていう。90分見てないけど、大宮(アルディージャ)とかもそうだったのかなと思って。このあいだの試合も、今回も。わかんないですけど、そういうのはあると思いますね。ただ、(横浜FCは)経験を活かさなくてもすんだかなと思います。

ーー ボランチのポジションでプレイしていることについて


距離感だったり、ストッパーからのボールをもらって相手のシャドーをとか。そういうのは相手が2トップのパターン、1トップ2シャドーのパターンとか動き方があるから、オレ自体は最初ここに来たときはそれが息苦しくて……。開いてもらったほうがいいじゃんとか、もっと自分に当ててもらってサイドチェンジをいきなりしたほうがいいのかなっていうのも、それも考えるのは早いっていう。もっとサイドから速い選手を活かしたい。北爪(健吾)が前にボーンと蹴っちゃって、カツ(中山克広)が前に走るようなのが欲しい。だから、中盤で作ってっていう自分のボランチ像が多分違った。それには気づいていたんだけど、やっぱり身体に染み付いているから、ちょっと(苦労した)。今は割り切ってやってましたけど、そういう部分で勉強になった。自分の戦術だけがベストじゃない。

ーー 下平監督が「18歳から52歳までバラエティに富んだチーム」と言っていたが、チームはどう見えますか


見ると、後ろが歳いってて、前が(若い)っていうのはあるけど……。それは多少あると思いますけどね、ゲーム展開とか。でもやっぱ、前の選手があれだけ速かったり、ひとりで(ボールを運んで)行けると、楽ですもん。マリノスだってそうでしょう。外人3人とテル(仲川輝人)でしょ。後ろは楽だよ。それがあるから、先端がとがっているから、後ろは合わせればいい。簡単ですよ。

ーー 今夏の移籍を振り返って、移籍の決断よかったのか


良くするために毎回やるわけで……。ジュビロに行って、足首の軟骨が痛いからって、2年目、3年目はなかなか出られなかったけど、それで悔いはない。悔いがないようにやってたし、ただやっぱ団体競技だからひとりじゃどうにもできない。監督の考え方とか、練習のもって行き方で、輝く選手もいれば、そうじゃない選手も出てくるから。それも含めて、本当に良い選手だったら出れるんだと思ってやるしかない。だけど、オレの考えは絶対に間違ってないとか、もっとこういうサッカーをしたほうがいいのかなというのは、ジュビロのときはあったけど。

ーー 磐田で出られない苦しい時期を過ごし、ここまで這い上がってきたが


うーん。納得はしていないけどね。やっぱ、自分のプレイってもっとあるし、でもそれを判断して、ボランチがこのチームだったらベストだから、それをフォーマットするだけで……。契約しているし。本当はもっとつないでいるうちに前に絡んでいかなきゃいけないと思うし。だから、今はボランチばっか見てるよ、YouTubeで。(川崎フロンターレの)大島くんが一番いいね。このあいだ(日本代表戦)も出て欲しかったな。1回試合に出て、呼ばれなくなったり、怪我したりしたけど、やっぱああいうアジリティがあって、技術もあってっていうようなサッカーがいいと思うので。(自分がそういったスタイルを目指す)そういうわけではないけど……。カズさんも言っていたけど、今日見たいなと言うか、もっとレベルを上げないとこりゃやられるなと言う感じで、それをみんな追求してやっていけばいいんじゃないですか。

ーー 来年J1で戦うには、どうしていけばいいのか


あんま考えても、強化部がどんな選手を取ってきて、どんなサッカーがしたいというのがあるから。若くてすごくいい選手が来て、外国人とか来たら、俺だってボランチで出られなくなるかもしれないし。そもそもオレ、半年契約だから、いるかどうかもまだわからない。横浜FC自体が下さんのスタイルで上がったから、そのスタイルでやり続ければいいと思う。それプラス、もっとJ1のスピードとか、いろんな部分を上げていけばいし、補強すればいい。

-カズさんのキャンプにはついていくのか。偉大な先輩の背中はやっぱり大きいか


(カズさんのグアムキャンプは)おこがましくて行けない。自分で(調整する)。たぶんこなせないと思う。この歳になって急に違うことをやるのはあんま良くないから、そりゃいけたら行きたいけど、あんなにはできない。(カズさんは)唯一無二じゃないですか。手抜けないし、この人に自分のいいプレイを見てほしいし、でも同じ選手だし……。不思議なというか、カードでいったらもうスケルトンじゃないですか、ブラックじゃなくて、わからないけど。貴重というか、もういないでしょう。上手いしね

-ー41歳とは思えないフレッシュさが今も見えますが


これが自分の理想ではないけど、でももう自分の能力がないんだったらこうして試合に出るしかないし。それは自分で認めてやるところはやるけど、諦めたくはないわけで。ずっとリケルメみたいな「THE 10番」でやってても良かったのかな、というのもあるしね。

-ー現役にこだわってやるのか


こだわるというか、別にうーん、足首がもてば。やれれば、おもしろいことが。誰に言われたか忘れたけど、監督はいつからでもできるじゃないですか。いつからって言い方はよくないかもしれないですけど。できるだけ長くやれば……。もしかしたらやる人なのかな、サッカーを。だから指導者に向いていないのかなというのもあるかもしれないけど、それは早く気がつくようにする。でもトライはしたい。

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