[特集/プレミア大戦国時代 04]今、プレミアで見るべき マジカルプレイヤー10!

ビッグクラブでもチームにきらめきを与える若手が躍動

ビッグクラブでもチームにきらめきを与える若手が躍動

マウントとエイブラハムはチェルシーの新時代を切り開くか photo/Getty Images

開幕から2カ月が経過した今季のプレミアリーグは、いつになく面白い。というのもお馴染みのスーパースターだけではなく、思わぬ新鋭、ベテランが次々と台頭し、リーグをかき回しているからだ。

ニュースターの代表格が、チェルシーのMFメイソン・マウント(20歳)とFWタミー・エイブラハム(22歳)。2人の台頭は、FIFAの海外移籍規定違反で、2度の移籍市場での補強を禁じられたことによる産物だ。この処分により、チェルシーは若手の抜擢を余儀なくされた。こうした特殊な状況を追い風に、2人はスターへの階段を駆け上がろうとしている。

新生チェルシーは下馬評を上回る健闘を見せているが、躍進の原動力は間違いなくこのふたり。エイブラハムは圧倒的なフィジカルを武器に得点ランク首位タイとなる8ゴールを記録、新監督ランパードの後継者の呼び声高いマウントは、柔らかいボールタッチと鋭い嗅覚を生かして4ゴール(記事中の数字はいずれも第8節終了時点)と、本拠地スタンフォード・ブリッジのアイドルとなった。近い将来、チェルシーがふたたび覇権争いに参戦するとき、その中心には主力としての自覚と風格を漂わせた、ふたりの存在があるはずだ。
ヴェンゲル時代からの脱却を目指すアーセナルでも、古参の多くが去り、新しい顔ぶれが台頭している。その中でも出世頭といえるのがMFマッテオ・グエンドウジ(20歳)。フランスとモロッコの二重国籍を持つ長髪のインサイドハーフは、豊富な運動量と鋭い縦パスによって中盤の屋台骨に。移籍2年目にして、ガナーズに欠かせない戦力となった。前半に退場者を出しながらもアストン・ヴィラを3−2で破った一戦では、展開力とチャンスメイクに真価を発揮。90年代の名ストライカー、アラン・シアラーは「戦士」と讃え、ベストイレブンに選抜した。

マンチェスター・シティ、リヴァプールに水を開けられた感のあるユナイテッド。チームの調子がなかなか上がらない中でも、期待を抱かせる若手がいる。FWダニエル・ジェイムズ(22歳)。2部スウォンジーからビッグクラブへの昇進を果たした、ウェールズ代表のウインガーだ。タッチライン際でボールを受けると、爆発的な加速でオープンスペースに飛び出し、フィニッシュ、もしくはクロスでゴールを演出。ビッグクラブ初挑戦で臆するどころか、堂々と真価を発揮。早くも3ゴールと、スウォンジーでの昨季の4ゴールを超えるのは確実だ。英国人好みの直線的なプレイスタイルで、聖地オールド・トラッフォードを沸かせている。

4勝2分2敗と開幕ダッシュに成功したレスターでは、10番を背負うMFジェイムズ・マディソン(22歳)の存在が光る。絶妙なボディバランスで密集をすり抜け、右足アウトから絶妙なスルーパスを通す。主砲バーディとのホットラインは、対戦相手にとって脅威の的。また昨季7ゴールを決めたように、アシストだけではなくフィニッシュの精度も非常に高い。マディソンの働き次第で、ビッグ6打倒も現実味を帯びてくるはずだ。

中堅クラブにもウヨウヨ 大物食いのキーマンたち

中堅クラブにもウヨウヨ 大物食いのキーマンたち

ウカシュ・ファビアンスキ(ウェストハム) 1985年4月生まれ。アーセナルやスウォ ンジーなどを渡り歩いたベテランGK。昨 季のクラブMVP photo/Getty Images

注目のタレントがいるのは、上位陣だけではない。プレミアリーグはタレントの宝庫。中位、下位にも目を離せないタレントがいる。

例えば11年ぶりにプレミアリーグ復帰を果たした古豪シェフィールド・ユナイテッドは、チェルシーと引き分け、欧州王者リヴァプールにも0−1と大善戦。大舞台で堂々としたパフォーマンスを見せている。躍進のキーマンは、守護神ディーン・ヘンダーソン(22歳)。マンUからのレンタルで昨季昇格の立役者となった若者は、俊敏な反応で決定機をことごとく阻止。わずか7失点と、最後尾からチームに安心感を与えている。

このヘンダーソンと並んで、健闘を見せているのがウェストハムの守護神ウカシュ・ファビアンスキ(34歳)。昨季の躍進に貢献したポーランド人守護神は、絶妙なポジショニングと確実なキャッチングで敵の攻撃陣を封殺。ヘンダーソンと並ぶ、リーグトップタイとなる3試合でクリーンシート(無失点)を達成した。

4季連続で残留を果たした南部の雄ボーンマスも、快調なスタートを切った。このチームにはカラム・ウィルソンという絶対的エースがいるが、今季はもうひとりのウィルソン、FWハリー・ウィルソン(22歳)の台頭が著しい。16歳と207日でウェールズ代表にデビューし、ガレス・ベイルの最年少出場記録を破った俊英。左足から繰り出されるフィニッシュは精度が高く、マンC戦ではフリーキックを豪快に突き刺した。順調な成長曲線を描いており、近い将来、レンタル元のリヴァプールに呼び戻されるかもしれない。

さて、今季のプレミアリーグには「打倒マンC」という大きなテーマがある。昨季、リヴァプールとの史上稀に見る熾烈なマッチレースを制して2連覇を達成した彼らは、今季も当然大本命。だが、その絶対王者が早くも2試合で足下をすくわれた。王者を倒した2人の伏兵を、最後に紹介しよう。

4年ぶりのプレミアリーグ復帰で、いきなりマンCから大金星を挙げたノリッジ。その立役者となったのが、昨季2部得点王に輝いたFWテーム・プッキ(29歳)だ。フィンランド代表にも名を連ねるベテランは、マンC戦で1ゴール1アシストを記録。目を見張るテクニックはないが、巧みな駆け引きでスペースに侵入し、チャンスを確実に仕留める。マンC戦だけでなく、ニューカ
ッスル戦ではハットトリックを達成し、勝利の立役者となった。

ノリッジに続いてサプライズを起こしたのが、“ウルブズ”ことウォルバーハンプトン。こちらはマンCの本拠地エティハド・スタジアムで2−0と快勝した。殊勲者となったのは2ゴールを挙げたFWアダマ・トラオレ(23歳)。マリ生まれ、バルセロナ育ちというルーツを持つウインガーは動き出しが恐ろしく速く、2、3歩で敵を置き去りにする。マンC戦でもカウンターからスペースに抜け出し、落ちついて流し込んだ。課題のフィニッシュにも成長の跡を見せる弾丸ドリブラー。大一番で自信をつけた男の、今後の活躍に要注目だ。

文・熊崎 敬

theWORLD238号、10月15日配信の記事より転載

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