[特集/プレミア大戦国時代 02]ビッグ6を脅かすダークホースたち

強豪にも臆さないケンカ上等のバーンリー

強豪にも臆さないケンカ上等のバーンリー

派手さはないものの、最後まで諦めない魂のプレイで今季飛躍を目指すバーンリー photo/Getty Images

 開幕から8戦8勝。リヴァプールが突っ走っている。2位マンチェスター・シティは8ポイント差をつけられているが、彼らの攻撃力をもってすれば逆転可能だ。しかし、ビッグ6として括られるチェルシー、アーセナル、トッテナム、ユナイテッドは少なからぬ問題を抱え、後続の集団に吸収されかねない。

 いま、プレミアリーグのパワーバランスは崩れ、ダークホースがやって来た。

 バーンリーは厄介だ。とにかくあきらめない。強豪との対戦でも臆することなく、90分間〈ケンカ上等〉で闘いつづける。このファイティング・スピリットはプレミアリーグ、いやいや世界のトップクラスだ。リヴァプールのユルゲン・クロップをして、「バーンリー戦は心身ともに消耗する」と舌を巻くほどだ。

 高度なゲームプランを用いているわけではない。世界的なスーパースターを擁してもいない。彼らは愚直にボールを追いかけるだけだ。アバウトなパスでも足を止めず、対戦相手との距離を詰めていく。英『skysports』の調査によると、ロングボールが占める割合はリーグ最多の23・5%。最少のシティは7・5%。「俺たちにはこれしかできない」とショーン・ダイシ監督は謙遜するが、泥臭く勝利を求める闘い方は美しく、かつ個性的でもある。

 2トップのアシュリー・バーンズとクリス・ウッドはつねに戦闘態勢を整え、エアバトルで優位に立つ。ロングフィードなのかクリアなのか不明瞭なボールでも食らいついてくるため、相手DFは一瞬たりとも気が抜けない。また、プレミアリーグ公式サイトには、センターバックのベン・ミーとジェームズ・タルコウスキが、プレミアリーグ屈指のシュートブロッカーであることのデータが記載されている。昨シーズンは前者が50回、後者は56回。彼らは身体を張り、ピンチを救った。

 戦術分析という視点では魅力に欠けるのだろう。キック&ラッシュは面白くない、と全否定される。しかし、球際でつねに激しく、粘り強く闘うバーンリーは攻略が難しいチームのひとつだ。なにより、心が折れない。昨シーズンもホームでトッテナムを破り、アウェイでチェルシーに引分けた。今シーズンも、なにかしでかしてくれるに違いない。

エディ・ハウ体制で確実にレベルアップ

エディ・ハウ体制で確実にレベルアップ

ボーンマスで8シーズン目を迎えた若大将エディ・ハウ(右)。強豪クラブにとっても脅威の存在へとチームを成長させた photo/Getty Images

 ボーンマスの監督に就任し、エディ・ハウは8シーズン目を迎えた。プレミアリーグ最長である。この歳月によって彼のゲームプランは浸透し、ボーンマスは一定の評価を得られるチームに成長した。基本的にはポゼッションだが、状況に応じてカウンターにも対応できる。

「ボールを捨てるな、と選手たちに言い聞かせている。われわれはテクニックとスキルの高いタレントを揃えているからね。ただ、リヴァプールやマンチェスター・シティなど、上位と闘う場合は現実的にならざるをえない」

 ハウもチームに手ごたえを感じつつ、トップランクとの差を痛感している。しかし、プレミアリーグに昇格した15-16シーズンからボーンマスは確実にレベルアップし、上位にとっても油断ならない存在になってきた。昨シーズン、ホームでチェルシーを退けた一戦は見事だった。ポゼッションは32・1%、パス本数はチェルシーの716に対し、半数にも満たない338。それでも4-0の圧勝を収めている。カウンターでサイドを崩したり、ラインの背後を狙ったり、ハウのゲームプランはまんまと的中した。

 昨シーズン、リーグ2位の14アシストを記録したライアン・フレイザー、ビッグクラブへの移籍が現実味を帯びてきたカラム・ウィルソン、あのライアン・ギグスを彷彿とさせるデイビッド・ブルックス(足首の負傷から11月初旬復帰予定)といったタレントもさることながら、ボーンマスの強みはチーム自体にハウのプランが浸透していることだ。あるときはポゼッション、またあるときはカウンター。対戦相手の分析に熱心な指揮官がいるかぎり、ボーンマスが上位から貴重な3ポイントを奪う公算は大きい。

レスターは攻守両面で安定感が抜群

レスターは攻守両面で安定感が抜群

4シーズン前に奇跡と言われたリーグ優勝を経験したバーディ。今季もエースとしてチームを牽引する photo/Getty Images

 レスターの評価が急上昇している。2節でチェルシーに引分け、5節のユナイテッド戦には敗れたが、試合内容で上まわった。6節でトッテナムを破り、9節にはリヴァプールをあと一歩のところまで追いつめている。1- 2の敗北を喫したものの、〈レスター要注意〉を印象付けた。

 ジェイムズ・マディソン、ユーリ・ティーレマンス、デマレイ・グレイ、ベン・チルウェルなど、若手の潜在能力ではユナイテッドを凌いでいる。また、4シーズン前のリーグ優勝を知るジェイミー・バーディ、カスパー・シュマイケルが健在で、むしろ若返った。バーディは32歳という年齢が信じられないほど裏抜けを繰り返し、11月で33歳になるシュマイケルはミドルレンジのパス精度に磨きがかかった。プレッシャーがかかる試合では、両ベテランの経験がカギを握るだろう。

 さて、レスターの攻撃は見ていても楽しい。バーディが空けたスペースにマディソン、ティーレマンスが侵入したり、高速ワンツーで相手DFをかく乱したり、バリエーションが豊富だ。攻撃が中央に偏った場合は、両サイドバックが大外から奇襲を仕掛ける。

 また、パス交換のリズム、テンポも心地よく、なおかつ複数のパスコースを用意する動きも洗練されているからこそ、あのリヴァプールをおおいに苦しめたのだ。王者シティとのアウェイゲームが日本時間12月22日に、その一週間後にはリヴァプールとのホームゲームが予定されている。この2連戦でポイントを稼げれば、レスターはさらに自信を深めるに違いない。

 8節終了時点で第4位。総得点14はシティ、リヴァプール、チェルシーに次ぐ好成績で、総失点7は最少のリヴァプールより1点多いだけだ。バランスの良さを物語るデータである。開幕直後、ブレンダン・ロジャーズ監督はベスト10、ヨーロッパリーグ出場権獲得を照準に設定したが、チャンピオンズリーグ出場権獲得に上方修正する日も、きっとまもなく訪れる。

 バーンリー、ボーンマス、レスターは、それぞれのやり方で存在感を増してきた。「しょせんはセカンドクラス」との否定的な声も聞こえてくるが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、ユナイテッドからかつての強さが消えた。プレミアリーグの勢力分布図は、大きく塗り替えられるかもしれない。

文・粕谷 秀樹

theWORLD238号、10月15日配信の記事より転載

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