[特集/プレミア大戦国時代 01]ビッグクラブを襲う苦悩と試練

マンCに思わぬブレーキ トッテナムは大敗が続く

マンCに思わぬブレーキ トッテナムは大敗が続く

ウルブズ戦に0-2で敗れたマンC。CBの人材難が深刻化している photo/Getty Images

 リーグ3連覇、さらにはCL制覇を狙うマンチェスター・シティだが、第5節ノリッジ戦に2-3で競り負け、第8節ウォルバーハンプトン戦にも0-2で敗れた。2位をキープしているが、快調に勝点を伸ばす首位リヴァプールとは勝点8差となっている。無論、まだシーズンははじまったばかりでいろいろと懸念するのは早計かもしれないが、昨シーズンのリヴァプールは1敗(7分け)しかしていない。これ以上離されると、ライバルを楽にしてしまう。

 敗れた2試合は主導権を握りながらもカウンターからあっさり失点しており、守備の弱さ、粘りのなさが目立っている。それもそのはずで、レギュラーCBであるジョン・ストーンズ、アイメリック・ラポルテが揃って戦線離脱している。

 この緊急事態を受けて、ジョゼップ・グアルディオラ監督はニコラス・オタメンディとフェルナンジーニョの2人をCBに起用しているが、この人選が相手に“イケル”という印象を与えている。ウルブズ戦は完全に相手を押し込んでいたが、ときおり食らうスピーディーなカウンターにオタメンディが翻弄され、我慢できずに試合終盤に2失点している。
「プレミアリーグやCLに優勝するためには、シティは冬の移籍市場で選手補強すべきだ」

 これは、元イングランド代表のガリー・ネビル氏が現地メディア『SkySport』に語った言葉で、CBのコマ不足を指摘している。オタメンディとフェルナンジーニョではスピードやキレに不安があり、瞬発力に優れ、縦への突破力があるストライカーの進撃を止めることができない。現状の人選で戦い続けるのか、新たな手段を講じるのか……。グアルディオラ監督の判断が注目される。

 トッテナムも多数のケガ人を抱えている。新加入のジョバンニ・ロ・チェルソ、ライアン・セセニョンが稼働できず、左右のハムストリングを傷めていたデル・アリも出遅れている。加えて、第8節ブライトン戦で守護神ウーゴ・ロリスが左肘を傷め、年内復帰が絶望となっている。そして、この試合に0-3で完敗している。直前に開催されたCLのバイエルン戦にも2-7で大敗しており、10月開催の公式戦2試合にトッテナムは2得点10失点だ。就任6年目を迎えるマウリシオ・ポチェッティーノ監督はこれまで順調にチーム力を高めてきたが、ここにきて最大の危機を迎えている。

 もともと、そんなに選手層が厚いわけではない。昨シーズンはCLで決勝進出を果たしたが、一方で同時期のリーグ戦ではなかなか勝点を伸ばすことができなかった。統率力のある監督のもと、選手全員が一丸となって戦う“まとまり”を大事にするチームにとって、主力に複数のケガ人が出るのはあまりにも痛い。それでも、シーズン後半戦になれば離脱している選手たちが戻ってくる。前半戦をなんとか耐え抜き、チーム力があがってくる後半戦につなげたいところだ。

アーセナル&チェルシーは探り探りチームを構築中

アーセナル&チェルシーは探り探りチームを構築中

底知れないポテンシャルを持つエイブラハムはゴールを量産している photo/Getty Images

 昨シーズンからウナイ・エメリ監督が指揮を執るアーセナルは、経験豊富なベテランと20歳前後の選手たちがうまく融合したチームに仕上がりつつある。最終ラインを32歳のダビド・ルイス、31歳のソクラティス・パパスタソプーロスがまとめ、中盤ではグラニト・ジャカとのコンビで20歳のマッテオ・グエンドウジが伸び盛りらしいイキイキとしたプレイをみせている。そして、前線には説明不要のピエール・エメリク・オバメヤンがいる。

 さらに、チームを構築中のいまは新戦力の発掘にも余念がなく、第6節アストン・ヴィラ戦では18歳のブカヨ・サカが先発し、安定したパフォーマンスで信頼を勝ち取り、3試合連続でスタメン出場している。とはいえ、絶対数が少なく、まだレギュラーポジションを獲得したとはいえない。

 フォーメーションにしても[4-2-3-1][4-3-1-2][4-3-3]を試合によって使い分けている。良くいえばオプションが豊富で選択肢が多いとなるが、悪くいえばベストを探っていて定まっていないとなる。

 現状のアーセナルは複数のフォーメーションを採用するなか、サカを筆頭に、19歳のリース・ネルソン、18歳のガブリエウ・マルティネッリといった若い選手が試されている状態にある。それでも、しっかりと上位をキープしてはいる。土台を作る基礎工事が終わり、いまは上物を築いている最中だといえる。当面の目標は昨シーズンの5位を上回り、CL出場権獲得となる4位以内に入ることになる。

 同じく、チェルシーもフランク・ランパード監督のもと再生を図っている最中で、こちらはまだ新監督のもと戦う1年目で基礎工事を行っている段階だ。そして、開幕戦こそマンチェスター・ユナイテッドに0-4で大敗したが、この結果に一喜一憂することなくチーム作りを進め、第7節ブライトン戦に2-0、第8節サウサンプトン戦に4-1と、しっかりと結果を残せるチームに仕上がってきている。 核となっているのは前線でプレイするタミー・エイブラハムで、すでに8得点をマークしている。しなやかな身のこなしから繰り出す豪快なフィニッシュが魅力で、ゴール前で繊細なボールタッチをみせることがあれば、「個」の力で突破もできる。オリヴィエ・ジルー、ミシー・バチュアイがバックアップを務める前線の人員は、なかなか贅沢だ。そして、このなかからエイブラハムを選び、プレシーズンから積極的に起用していたランパード監督は慧眼の持ち主かもしれない。今後が楽しみなチームで、生粋のチェルシー・ファンは未完成のいまを楽しんでいそうだ。

攻撃にアイデアがなく、マンU復権の道は遠い

攻撃にアイデアがなく、マンU復権の道は遠い

クラブレジェンドであるスールシャールは首が危なくなってきた。マンUは浮上できるのか…… photo/Getty Images

 マンUがクラブのレジェンドであるオーレ・グンナー・スールシャールを監督に迎えたのは、なによりも栄光の時代を知る人物で、勝ち方を知った男とともに復権を果たすためだった。しかし、スールシャール監督は積極的に若手をピッチに送り出すものの、選手任せになっている傾向があり、うまくチームが機能していない。開幕当初は活躍したダニエル・ジェイムズも厳しいマークの前に苦しんでいる。チームメイトのサポート、まわりとの連携が彼を助けることになるが、とくに攻撃に関してはアイデアがなく、早くも手詰まりになっている。

 ポール・ポグバ、ジェシー・リンガード、マーカス・ラッシュフォード、アントニー・マルシャル。間違いなく、良質な選手が揃っている。最終ラインには大金をはたいて獲得したハリー・マグワイアもいる。就任2年目でもう基礎工事は終わっていなければならないが、第8節を終えて12位はかなり厳しい。悪いことは重なるもので、中断明けの第9節(10月20日)で首位独走中のリヴァプールと対戦する。ここでの結果によっては、スールシャール監督がいなくなる可能性も……。

 ただ、その場合に誰が後任を務めるのか。結局、マンUはサー・アレックス・ファーガソンの跡を継ぐ人物をいまだに見つけることができていないのだ。とはいえ、これはリヴァプール戦で良い結果が出なかったときの話で、快勝を収め、ここをキッカケにチームが好転し、なにもかもうまくいって優勝争いに絡むかもしれない。絡むかもしれないが、現状を考えるとその可能性は低く、スールシャール監督はかなり厳しい立場となっている。

文・飯塚 健司

theWORLD238号、10月15日配信の記事より転載

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