[粕谷秀樹]5節終了時点のデータは56分出場・ノーゴール…… 武藤の立場がちょっと怪しくなってきた

粕谷秀樹のメッタ斬り 018

粕谷秀樹のメッタ斬り 018

ニューカッスルを率いることとなったブルース監督 photo/Getty Images

売る売る詐欺と13番目の候補?

選手たちは混乱しているだろうな。

買収されるんじゃなかったのか。凄い監督が来るんじゃなかったのか。夏のプランはことごとく覆され、いつものようなシーズンが始まった。オーナーのマイク・アシュリーは、例によってニューカッスルを手放さなかった。〈売る売る詐欺〉だなこの男。アーセン・ヴェンゲルやジョゼ・モウリーニョの監督就任も噂されたけれど、やって来たのはスティーブ・ブルースだった。一部メディアの情報では、なんと〈13番目の候補〉。事実だとしたら、ニューカッスルの交渉担当は絶望的に仕事ができないってことじゃん。

このような状況だと、モチベーションも湧いてこない。いやいや、そんな言い訳は通用しないな。どんなに負けが込んだって、ジョーディーズ(地元サポーターの愛称)は熱くサポートしてくれる。容赦のないブーイングに飛んでくるブーイングだって、愛情の裏返しだ。彼らの期待に応えてこそ、プロフェッショナルを名乗れるんじゃないかな。
さて、武藤嘉紀だ。昨シーズンはジョーディーズを裏切った。もちろん、彼なりに奮闘したものの、一年目は言葉の違いに戸惑ったみたいだね。ラファエル・ベニテス前監督も、「ムトウはわかっていなくてもイエスという。勉強不足だ」と英語力に苦言を呈していた。

北部イングランドは訛りがきつく、英国人ですら聞き取りにくい。ベニテスの英語もスペイン訛りだけど、インタビュアーが聞き返したケースは少ないんじゃないかな。彼が所属したリヴァプールやチェルシーでも、英語力は問題視されなかったよ。プレミアリーグで闘うなら、武藤は英語に磨きをかけなくちゃ。

今季もここまで思うような出場機会を得られていない武藤 photo/Getty Images

ライバルのインパクトは超特大

英語が話せるようになればコミュニケーションがスムーズになり、ピッチ上の連携でもリズムが出てくる。当然、定位置確保の確率も高くなるよね。でも、ライバルは少なくないんだな。

ジョエリントンは4000万ポンド(約54億円)もの補強費を使っているから、しばらくの間はスターターだ。アンディ・キャロルはケガばかりしているけれど、破壊力だけならワールドクラス。なにしろ彼のヘディングと左足シュートは、分かっていても止められないじゃん。一度でも見せられると、ブルース監督の心は「やっぱり使おうかな」となるわけさ。インパクトは超特大!

そのほかにも、スペースがなくてもドリブルで前進する“異能”アラン・サン・マクシマン、巧みなステップでマーカーを幻惑するミゲル・アルミロンなどが虎視眈々と定位置を狙っている。だから武藤は、一刻も早く首脳陣にアピールしないと……。

5節終了時点のデータは56分出場・ノーゴール。開幕からベンチには入っているといっても、スターターのチャンスは一度もめぐってこない。負傷で戦列を離れているキャロルは10月中旬に、サン・マクシマンは早ければ次節にも復帰する。これが武藤の現状だ。ちょっと怪しくなってきた。

文/粕谷秀樹

スポーツジャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

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