【特集/欧州4大リーグ気鋭のアタッカー24人 2】ビッグクラブ行き間違いナシ! ブンデスはスターの登竜門

ヴェルナー&ニャブリは代表でも活躍が期待

ドイツは育成システムがしっかりと確立されていて、その結果が2014ブラジルW杯の優勝に結びついたのは記憶に新しい。良い土壌から美味しい食物が育つように、体系化された組織からは良質な選手が育ってくる。ドイツは2016リオ五輪でも決勝に進出し、選手育成が順調に進んでいることを証明してみせた。

今シーズンのブンデスリーガでも国内のクラブで育った若者たちがイキのいい動きを見せている。まず名前を挙げられるのが、RBライプツィヒの快速アタッカー、ティモ・ヴェルナーだ。シュツットガルトのユースで育ち、同クラブのブンデスリーガ最年少出場記録(17歳4ヶ月25日)を持つことから、ある程度の期待をされていたが、実際は周囲の予想を上回る活躍ぶりである。

第25節を終えて14得点はチーム最多で、得点ランクでも4位だ。上位3人がピエール=エメリク・オバメヤン、アントニー・モデスト、ロベルト・レヴァンドフスキという強者揃いであることを考えると、価値ある順位だといえる。タテへの推進力とともに決定力もあるこの若きストライカーをドイツ代表のヨアヒム・レーヴ監督が見逃すはずもなく、イングランド(3月22日)、アゼルバイジャン(26日)との連戦に向けた今回の代表メンバーに初招集している。「(ヴェルナーは)素晴らしい可能性を持っており、興味深い。柔軟性があり、高いレベルのプレイを続けている」(レーヴ監督)
22日のイングランド戦はルーカス・ポドルスキの代表引退試合でもある。去る者がいれば、加わる者もいる──。同試合はなんとも象徴的な一戦である。同じシュツットガルトの下部組織で育ち、15歳のときにアーセナルへ移籍。現在はブレーメンでプレイするセルジュ・ニャブリはリオ五輪で6得点を奪って大会得点王になり、ブンデスリーガでも第25節を終えて10得点している。また、ヴェルナーに先駆けて昨年11月に代表デビューし、サンマリノ戦でハットトリックを達成している。コートジボワール人の父を持つニャブリはやや小柄だが、重心が低くキレとパワーがあり、ドリブルで勝負を仕掛けて状況を打開する高い個人技を持つ。ブレーメンとの契約は2020年6月まであるが、満了を待たずに高額で移籍することになりそうだ。

フライブルクのマクシミリアン・フィリップはヘルタ・ベルリンの下部組織出身で、ドイツU-20やU-21の代表に選出されたことはあったが、目立った活躍はなかった。頭角を現したのは昨シーズンで、2部だったフライブルクで8得点11アシストをマークし、優勝&1部昇格に貢献。今季もすでに8得点しており、ジワジワと評価を高めている。M・フィリップは攻撃的なポジションならどこでもプレイできるオールラウンダーで、左右両足から繰り出すキックの精度も高い。起用方法がさまざまに考えられる選手で、監督にとっては頼りになる存在である。

覚えておきたい逸材が続々 大迫&原口の評価は?

各クラブが自前で選手を育てつつ、全世界へスカウトのアンテナを張りめぐらせている。ケルンの大迫勇也、ヘルタ・ベルリンの原口元気が現在のクラブに加入したのはどちらも3年前で、時間をかけてジワジワと存在感を増してきた。今シーズンは両名ともに、1年目、2年目よりもクラブの期待に応える活躍をしている。

大迫は第25節ヘルタ・ベルリン戦で先制点となる強烈なミドルシュートを決めるなど、サポーターの印象に強く残るプレイをしている。前線でコンビを組むモデストとの信頼関係が構築されていて、息が合っている。ヘルタ・ベルリン戦では大迫が1得点、モデストが3得点して大勝した。そして、ゴールセレブレーションで2人がファイティングポーズを取る場面があり、翌日の地元メディアは「空手デュオ」とこのコンビを命名している。

原口もチームに欠かせない戦力として先発出場を続けている。パル・ダルダイ監督が気に入っていて、「われわれは彼のことを本当に誇りに思っている」(2016年11月『kicker』誌)と語るなど、ことあるごとに高い評価を口にしている。ヘルタ・ベルリンと原口の契約は2018年6月まで。大迫はケルンとの契約を2020年6月まで延長したが、原口はどうなるのか……。一時期、2021年まで契約を延長するという報道が出たこともあったが、正式発表はされていない。いずれにせよ、クラブから高く評価されているのは間違いない。

大迫、原口がブンデスリーガでデビューしたのは20代だったが、10代でスカウトされ、すぐにデビューして活躍する選手もいる。いまさら説明するまでもないドルトムントのウスマン・デンベレはまだ19歳だ。単純に身体能力が高いだけではなく、足元の技術も正確でボールタッチが柔らかい。2年後、3年後にはデンベレを取り巻く環境はいまと大きく違っているかもしれない。世界的なビッグスターになる可能性を秘めたストライカーだ。
まだ試合に出場していないが、ドルトムントにはアレクサンデル・イサク(17歳)というスウェーデン代表の逸材もいる。AIKソルナの下部組織で育ち、16歳でプロデビュー。190センチの長身で、今冬の移籍市場ではドルトムント、レアル・マドリードなど多くのクラブが獲得を狙っていた。それだけに、ドルトムントのミヒャエル・ツォルク(スポーツディレクター)は、「多くのトップクラブが彼と契約しようとした。われわれを選んでくれてうれしい」と喜びを口にしている。

レヴァークーゼンのレオン・ベイリーは19で、今冬にベルギーのゲンクから移籍している。ジャマイカ出身の快速ウィンガーであるベイリーにも複数のクラブが興味を持ち、マンチェスター・ユナイテッドからのオファーもあったとされる。そうしたなかベイリーはレヴァークーゼンを選択。第25節を終えて2試合の途中出場にとどまっているが、持っている能力を考えると今後に頭角を現す可能性が高い。イサク、ベイリーの名前は覚えておいたほうがいい。というより、プレイを目にする機会が増えることで、自然と覚えていくことになるだろう。

文/飯塚 健司

サッカー専門誌記者を経て、2000年に独立。日本代表を追い続け、W杯は98年より5大会連続取材中。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。サンケイスポーツで「飯塚健司の儲カルチョ」を連載中。美術検定3級。

theWORLD184号 2017年3月23日配信の記事より転載

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