長谷部の穴埋め以上に深刻な”遠藤保仁ロス” イージーミス連発で感じるゲームメイク力の低下

タイ戦では自陣でパスミス連発

タイ戦では自陣でパスミス連発

埋まらない遠藤の穴 photo/Getty Images

28日に2018ロシアワールドカップ・アジア最終予選でタイ代表と対戦した日本代表は、香川真司や久保裕也の活躍で4-0の勝利を収めた。得点差だけを聞くと快勝のように思えるが、タイにもPKを含め数多くのチャンスを作られてしまうなど、すっきりしない試合内容だった。何より気になるのは自陣でのパスミスだ。

この試合ではタイがしっかりとブロックを作っていたこともあり、日本は序盤から最終ラインでボールを回してパスコースを探る機会が非常に多かった。その中で強引に縦パスを通そうとして相手にボールを奪われるシーンが頻発し、自分たちのミスから何度もタイにカウンターを許してしまった。短距離での縦パス、横パス、バックパスを合わせると17本も危険なパスミスがあり、しかもそのほとんどが日本陣内でのミスだ。相手がタイでなければ複数失点していてもおかしくないレベルのパスミスもあった。

選手別に短距離のイージーなパスミスをカウントしてみると、最終ラインではセンターバックの森重真人が3本の簡単なパスミス、さらにドリブルで敵陣へボールを運んで不用意に奪われたシーンもあった。酒井宏樹もミスが目立つ。縦パスは3本、横パスも1本ミスしており、そのままカウンターを受ける機会もあった。ボランチでは山口蛍が3本、酒井高徳も3本の簡単なパスミスをしている。スルーパスや勝負をかけたパスではなく、自陣でしっかり繋ぐべきところでのイージーミスは絶対に避けなければならない。タイのシュートチャンスが多かったのも、ほとんどは日本のミスが原因だ。これは次戦のイラク戦へ向けて修正する必要があるだろう。
また、ボール奪取後にすぐミスをしてしまう場面もあった。例えば前半には自陣深くまで香川真司が戻ってボールを奪ったが、クリアが短くなって相手の二次攻撃を受けるシーンがあった。世界トップレベルのチームが相手なら致命傷になっていた可能性もある。パス、クリアに関わらず、自陣では正確なプレイが求められる。他にも長友佑都や山口もボール奪取後の最初のプレイで簡単なミスを犯しており、これもタイに反撃を許してしまった原因だ。

この試合ではUAE戦に続いて主将の長谷部誠が負傷離脱しており、ボランチが山口と酒井の急造コンビだったこともミスを連発した原因の1つだろう。長谷部がピッチにいればチームを落ち着かせることができたはずだ。しかし、それはメンタル面での話だ。長谷部も含め現在の日本代表にはパスでゲームをコントロールできる選手が欠けている。長谷部の代役としてUAE戦に出場した今野泰幸、タイ戦に出場した酒井高徳、山口、ベンチにいた遠藤航もゲームメイク能力はそれほど高くない。山口を筆頭に今の日本のボランチはよく走るが、ボールを支配できるアジアの戦いではもう少しゲームをコントロールしてほしいところ。

2014ブラジルワールドカップを目指していた時はガンバ大阪の遠藤保仁がいたため、少々厳しいマークを受けていても最終ラインの選手は遠藤にボールを預けることができた。しかし、今のチームにそうした選手はいない。結局タイ戦もセンターバックからのロングボールが攻撃のスタートになっており、ボランチの選手が攻撃のリズムを作っていたわけではない。代表監督のヴァイッド・ハリルホジッチは求めていないかもしれないが、遠藤の穴は埋まっていないままだ。遠藤がいた頃に比べてゲームメイクの質が落ちているのは明らかだろう。

このまま日本がワールドカップ出場権を獲得できた場合、本番では格上の相手と戦うケースの方が多いはず。そうなった場合には山口や今野のように中盤で相手を潰せる選手の方が重宝するだろうが、ベンチに1人はゲームのリズムを作れる選手が欲しいところ。タイ戦で繋ぎのミスが連発した問題をハリルホジッチはどう解決していくのだろうか。ロングボールを多用することは良い解決策とはならないはずだ。

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