[頭角を現すU-23プレイヤー 4]コマン、ヴァイグルだけじゃない シャルケは若きブンデス・スターの宝庫

バイエルン加入は大正解 順調な歩みを見せるコマン

これまでプレイしてきたチームをみれば、その歩みが順調なことがわかる。バイエルンのキングスレイ・コマンは8歳でパリSGの下部組織に加入し、16歳でトップチームに昇格。リーグ・アンにデビューを飾ったのも同じ16歳で、これはパリSGの最年少出場記録となっている。2012-13、13-14シーズンにはリーグ・アンの連覇を経験している。

しかし、周知のとおりパリSGは各国代表を揃える多国籍軍で、若いコマンは十分なプレイ時間を得られていなかった。そのため、14-15シーズンを迎えて、ユヴェントスへ移籍。契約期間は異例ともいえる5年! スピード、テクニック、しなやかな動きなど、その才能をユヴェントスがいかに高く評価していたかがわかる。

コマンが行くところタイトルありで、同年にユヴェントスでセリエA、コッパ・イタリアの2冠を達成。CLでも決勝のピッチに立ったが、ここではバルセロナに跳ね返されて悔しい思いをしている。そして、出場機会を求めての移籍だったが、ユヴェントスでも十分なプレイ時間は得られていなかった。
しかし、その才能を見抜いている監督は多く、バイエルンのグアルディオラもそのひとりだった。「リベリのような選手になりたい」と語っていたコマンにとってバイエルンからのオファーは渡りに舟で、今季からレンタルで加入。すると、水を得た魚のようにこれまで以上の輝きを放っている。

戦術理解度が高く、要求する役目を遂行することができるコマンは、指揮官を務めるグアルディオラにとってすぐに信頼を置ける存在となった。15年11月14日に行なわれたCLのアーセナル戦(H)では、右サイドでボールを持つと突破を仕掛けるのではなく、あえてボールをキープして時間を作り、相手をおびき寄せる役目を任され、見事にこれをまっとうして5-1の快勝につなげている。

現在はユヴェントスからのレンタルだが、チームへの貢献度が高く、このままバイエルンが買い取ることが予想されている。とはいえ、気になるのはグアルディオラが来季からマンチェスター・シティの監督を務めることだ。コマンのバイエルンへのレンタル期間は17年まであるが、グアルディオラが強く要望して一緒にマンチェスター・シティへと連れて行く可能性もある。その場合、ユヴェントス、バイエルン、マンチェスター・シティでの話し合いが必要だが、なんとも贅沢な綱引きだといえる。

ドイツは人材の宝庫 今後数年は安泰か

コマンだけでなく、ブンデスリーガでは数多くの若い選手がピッチに立って活躍している。ドルトムントのユリアン・ヴァイグルについては、細かい説明はもういらないだろう。1860ミュンヘンから加入した今季、チームに馴染むのにそんなに時間はかからなかった。テクニック、運動量、ポジショニング、攻守の切り換えの速さ、どれも高いレベルで兼ね備えており、今季から指揮を執るトーマス・トゥヘルから厚い信頼を得て開幕戦から先発出場を重ねている。

身体の線が細くフィジカルを心配する声もあるが、実際にはボディバランスが良く、接触プレイにも強い。むしろ、中盤で激しくコンタクトし、ボールを奪うシーンが多い。そして、マイボールになると素早く攻撃へと移行し、正確なパスを前線の“ファンタスティック”な選手たちへ送る。ドルトムントの攻撃は、ヴァイグルのような献身的なプレイをする後方の選手たちよって支えられていることを忘れてはいけないだろう。

シャルケの中盤にも、優秀な若手がいる。しかも、1人、2人ではない。たとえば第21節マインツ戦の中盤はヨハネス・ガイス、レオン・ゴレツカのダブルボランチに、2列目が右からレロイ・サネ、マックス・マイヤー、ユネス・ベランダという布陣だった。ガイス(22歳)、ゴレツカ(21歳)、サネ(20歳)、マイヤー(20歳)という圧倒的に若い布陣で、この4名は欠かせない戦力として今シーズンほぼ毎試合に先発している。ちなみに、ベランダは25歳だ。

ガイスは視野が広く、ゲームを作れる司令塔でありながら、しっかりとハードワークができるボランチだ。ときに激しいタックルを見せるタイプで、過去には危険なプレイで5試合の出場停止になったこともある。負けん気の強さ、勝負へかける熱い思いがあり、一度見るとプレイと名前が印象に残る選手だ。
かつてドイツ代表で活躍したミヒャエル・バラックに例えられるのが、身長189センチの大型ボランチであるゴレツカだ。すでにドイツ代表でのプレイ経験もあり、将来が嘱望されている。数年後、ガイス、ゴレツカ、そしてヴァイグルがドイツ代表でボランチのポジションを争っていてもおかしくない。

18歳のときにドイツ代表にデビューしたマイヤーはスピードとキレがあり、すでに十分な実績と経験を積んでいる。今後、昨年夏にヴォルフスブルクに移籍した先輩ユリアン・ドラクスラーのように、高額の移籍金で他クラブへ買われていく可能性もある。

将来性でいえば、昨年11月にドイツ代表にデビューしたサネも今後が期待されている。左利きの大型アタッカーというだけでもニーズがあるところ、フィニッシュの精度も高く今季すでに5得点している(第21節終了時)。 ドイツ代表は「個」の力で得点できるFWを欲しており、マイヤー、サネともにユーロ2016でプレイしても不思議ではない。

文/飯塚 健司

theWORLD171号 2016年2月23日配信の記事より転載

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