インテルは2020-21シーズンにセリエAで優勝し、アントニオ・コンテ監督が退任した。その後任としてラツィオから呼ばれたのがインザーギだ。
16-17シーズンから正式にラツィオのトップチームを率いることとなったインザーギは、新指揮官になるはずのビエルサがわずか2日で退団するという騒動でバラバラになりかけたチームをまとめ上げ、より団結したチームを作り上げる。周囲のライバルたちに比べれば、決して豪華な面々とはいえないかもしれない。しかし、強固な一枚岩となったチームは、退任する20−21シーズンまで5シーズン連続で欧州コンペティションの出場権を獲得。18-19シーズンにはコッパ・イタリア優勝を成し遂げ、19-20シーズンはユヴェントスやインテルと最後まで優勝争いを繰り広げた。選手との厚い信頼関係のもと、インザーギは近年中堅クラブとなっていたラツィオをビッグクラブに引けを取らないチームへと進化させたのである。こういった実績や手腕が評価され、インテルの指揮官就任に至ったのだろう。
インザーギのシステムは[3−5−2]で、前任のコンテと同じ。もちろんそのことも考慮された監督選びだったが、インザーギの目指すスタイルは大きく違った。コンテ体制では守りを固めて速攻というのが最大の武器だったが、インザーギ体制ではポゼッションを高め、よりボールを持つ時間が増えている。
ただ、現在のインテルになるまでは紆余曲折があった。21-22シーズンはシーズン中盤にチャンピオンズリーグとの両立に苦戦。リヴァプールとのラウンド16があった2022年2月に調子を落として首位から陥落すると、シーズン終盤に連勝したものの、ライバルのミランが勝ち続けたため巻き返せなかった。
22-23シーズンはより深刻で、シーズン後半戦に監督解任の噂が頻繁に出て、実際にクラブ内でのミーティングにまで発展している。ここでクラブが我慢した甲斐があり、チャンピオンズリーグ決勝の舞台までたどり着き、成功のシーズンとなった。
今夏にロメル・ルカクが退団。ミラン・シュクリニアルもパリ・サンジェルマンへ移り、マルセロ・ブロゾビッチもサウジアラビアに行ったが、インテルは競争力を保っている。昨季のチャンピオンズリーグでの躍進と今季のスタートダッシュで、インザーギは確固たる信頼を築いている状態だ。
22-23シーズンのチャンピオンズリーグ決勝進出は、イタリアびいきの目からみても「できすぎ」だった。そのため、これを繰り返せると思っているファンは多くない。
それでも、ただの夢だったものが一度手の届くところまできてしまうと、やはり期待値は高まるもので、ヨーロッパでの躍進も期待されている。インザーギ体制1年目の21-22シーズンはインテルにとって10年ぶりのチャンピオンズリーグ決勝トーナメント進出だった。そこから1年でファイナリストとなったのだから異例の出来事ではあるものの、もはやグループステージ敗退は許されない立場であり、対戦相手次第だとしても、厳しい目でみられるだろう。
それよりもインテル陣営が口をそろえて目標に掲げているのは、セリエA優勝だ。イタリアではセリエA優勝10回ごとに、エンブレムに星を1つ付けることができる。インテルとミランは現在優勝19回で並んでおり、2つめの星をどちらが早く付けられるかを競っているところだ。
セリエAでの優勝は絶対、その上でチャンピオンズリーグでできるだけ勝ち進みたいというのがインテルの狙いとなっている。実際、インテルに限らず、イタリア勢は世界のトップクラブと比べると戦力的に劣っていることは否めないため、国内で勝つためのチーム作りとなっているはずだ。