[カタール通信 05]現地の病院でも役立った翻訳テクノロジー

ドーハの病院の受付ではポケトークが出てきた photo/Kenji Iizuka

ポケトークを使ってみた

W杯期間中はさまざまなことが起こる。滞在1週間が過ぎたころ、取材仲間のひとりがノドを痛めてほぼ声が出なくなった。痰が絡んでいてずっと取れないという。ただ、咳は出ておらず、熱はない。ノドだけが痛いようで、滞在する部屋の天井付近からずっと吹き込むエアコンでやられたと思われた。

 取材仲間の多くが薬を持参しているのでいろいろな種類が集まったが、無論すべて服用するわけにはいかない。昔から「現地の風邪は現地の薬で治すのが一番」とも言われている。カタールではさほど流行していないが、新型コロナウイルスも疑わなければならない。決断は早く、すぐに病院へ行くことになった。

 たまたま最寄り駅が「HAMAD HOSPITAL(ハマド・ホスピタル)」で、徒歩10分かからないところにFIFAが案内するメディカルサービス施設「HAMAD GENERAL HOSPITAL」があった。さらにたまたま、今回は世界70言語に対応したAI通訳機「POCKETALK(ポケトーク)」を持参しており、これは役に立つと考えて病院へと同行した。
 自身の症状をどう詳細に説明し、ドクターの言ってることをどこまで正しく理解できるか、海外で病院に行くのはやはり不安だ。そこでポケトークの出番だったが、受付に到着していきなり驚いた。

「HAMAD GENERAL HOSPITAL」にはすでに導入済みで、相手も同じ端末を出してきたのである。あまり使ったことがなく箱に入ったままだったが、壁には多言語対応のポスターが張っており、それを実現するのがAI通訳機ポケトークだった。

 ノドが痛いは身振り手振りでいけるとしても、「痰が絡んでいて取れない」を説明するのは一苦労だと思われる。ポケトークはこうした言葉を選択した言語に翻訳し、音声&文字で伝えてくれる。当の病人に使い方を簡単に教えて手渡すと、さっそく「痰が絡む」と語りかけ、事前に単語を学んでから診察室へと入っていった。リアルタイムで使ってもいいし、単語や発音を覚えるのにも役立つのだと使ってみてわかった。

 診察を終えて戻ってきた取材仲間は、疲労もあって細菌にやられたもので、3日ほどで回復するのでその間に処方した薬を服用するように診断を受けてきた。薬は4種類あり、それぞれ飲み方が違う。どんな種類の薬でどのタイミングで服用すればいいのか、正しく知るのにもポケトークが役立ったようだ。

 今大会は判定に最新テクノロジーが使われ、オフサイド、オンサイドがとても正確に判断されている。スペイン戦での田中碧の決勝点もテクノロジーのおかげで大問題になることを避けられた(それでも納得していない者もいるが……)。ノドを痛めた取材仲間もポケトーク持参の早めの受診、的確な薬の服用が効いたのか、いまは元気になっている。テクノロジーの発達は、いろいろなことに役立つのである。

文/飯塚 健司(ザ・ワールド編集ディレクター)

記事一覧(新着順)

電子マガジン「ザ・ワールド」No.292 最強ボランチは誰だ

雑誌の詳細を見る

注目キーワード

CATEGORY:コラム

注目タグ一覧

人気記事ランキング

LIFESTYLE

INFORMATION

記事アーカイブ