アズーリへさらなる危機? セリエAで“U-21”の若手が起用されていない育成問題

W杯出場を逃したイタリア代表 photo/Getty Images

若手の育成が代表の強さを維持する秘訣

昨年のEURO2020を制し、セリエAもミランやインテルが力を取り戻すなど、イタリアサッカー界には明るい未来が広がっていたはずだった。しかし、24日よりスタートしたワールドカップ欧州予選・プレイオフで北マケドニアにまさかの敗北。2大会連続でワールドカップ出場を逃す悪夢を味わった。

また、ネガティヴな話題は他にもある。

今後のイタリアサッカー界について警告を発するのは、現在U-21イタリア代表を指揮するパオロ・ニコラートである。
伊『Gazzetta dello Sport』によれば、ニコラートが気にかけているのはセリエAでのU-21イタリア人選手の稼働率だ。A代表が昨夏のEURO制覇から盛り上がっていたのに対し、U-21はやや人材が不足しているのだ。

というのも、セリエAの各クラブがあまり若手イタリア人選手にチャンスを与えていない背景がある。

最近のU-21メンバーで継続的にセリエAでプレイできているのは、ウディネーゼMFデスティニー・ウドジェ、カリアリDFマッテオ・ロヴァートとラウル・ベッラノーヴァ、エンポリDFファビアーノ・パリージ、ジェノアMFニコロ・ロヴェッラ、ボローニャFWエマニュエル・ヴィニャート、トリノMFサムエレ・リッチ、ミランMFサンドロ・トナーリ、今年2月に22歳の誕生日を迎えたサッスオーロFWジャコモ・ラスパドーリといった面々だ。

十分な数にも見えるが、やはりフランスやイングランド、ドイツといった欧州の強豪と比較すると物足りない。同メディアによれば、今季セリエAでU-21イタリア人選手がプレイした時間は全体の4%に留まるという。

しかもこのうちトナーリ、リッチ、ラスパドーリがかなりの時間を稼いでおり、セリエAで主力になっていない者は多い。監督のニコラートがU-21メンバーを招集する時、たいていはセリエBやセリエCから若手を探してくることになるのだ。

サムエレ・リッチは若手の中でも出番を得ている photo/Getty Images

特にビッグクラブはなかなか自国の若手を信用しない傾向がある

セリエAの各クラブが保有するU-21イタリア人選手は、1チーム平均2.7人だ。ミランのトナーリは別だが、優勝争いが激しくなればなるほど強豪クラブは実力ある外国人選手に頼りがちとなる。

結果的に自国の若手に出番が回らなくなり、それは将来的なA代表の問題となる。昨夏のEURO2020を制したのは見事だったが、アズーリ完全復活には若手の育成が不可欠。ビッグクラブで活躍する若手を増やさなければ、また人材難に陥ってしまう可能性も考えられる。

セリエBでは201cmのサイズを誇るACピサ所属の巨人FWロレンツォ・ルッカ、アタランタからクレモネーゼにレンタル移籍しているDFカレブ・オカリ、ミランからSPALにレンタル中のFWロレンツォ・コロンボ、国外ではインテルからスイスのバーゼルにレンタル中のFWセバスティアーノ・エスポジトなど、魅力的な選手はいる。

ただ、問題は今後彼らがセリエAをはじめとする5大リーグの1部で活躍できるかどうかだ。ここからステップアップできない若手も少なくない。

今月25日からは2023年に本大会が開催されるU-21欧州選手権予選が再開する。ここまでU-21イタリアは4勝1分の成績でスウェーデン代表に次ぐ2位につけているが、この大会でどこまで結果を残せるのか。そして成長する若手をセリエAの各クラブは積極的に引き上げられるのか。

このU-21世代からセリエA各クラブへの流れをスムーズにしたいところで、ビッグクラブで活躍する若手を増やしたい。それが出来なければ、アズーリはまた国際舞台で苦しむことになるだろう。

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