香川真司はまだまだやれる! 復活の地に選んだベルギーで輝きを取り戻せ[水沼貴史]

水沼貴史の欧蹴爛漫064

水沼貴史の欧蹴爛漫064

香川は今冬の移籍市場でシント・トロイデンへ移籍した photo/Getty Images

覚悟を胸に欧州残留を決断

水沼貴史です。冬の移籍市場が閉幕してから、早いもので1ヵ月が経ちましたが、前回のセルティックの“サムライ・カルテット”に続いて、今回も今冬に新たなチャレンジを決意したサムライについて、少しお話ししたいと思います。

私が注目しているのは、ベルギーのシント・トロイデンへ移籍したMF香川真司です。DF酒井宏樹やMF乾貴士、FW大迫勇也、FW武藤嘉紀など、最近は欧州から日本へ帰ってくる選手も多く、香川に関しても日本復帰の噂が絶えませんでした。しかし、香川には欧州でやり残していることというか、もう一度そこで輝きを放ちたいだとか、彼の中のプライドや覚悟のようなものがあったのかもしれませんね。欧州で自身6つ目となるクラブへ移籍することとなりました。さまざまなことを鑑みた上での自分の決断でしょうし、もちろん、自身の将来設計も考えていることでしょう。ただ単にサッカーがしたいだけではなく、先のことを見据えての「ベルギー挑戦」「シント・トロイデン加入」のようにも私は感じました。

ベルギーリーグは、欧州のトップ・オブ・トップのリーグかと言われれば、そうではありません。ただ、欧州の各国から目を向けられるリーグであり、いろいろな選手がピックアップされているリーグではあります。正直、近年は思うような活躍ができず、苦しい状況に陥ってる香川。現状を踏まえて、ベルギーではこれまで以上にシビアに見られるかもしれませんが、彼が再び這い上がるためには、とても良いリーグだと思います。日本人選手が多いシント・トロイデンを選んだことで、コミュニケーションがとりやすいといった大きなメリットもあります。欧州へ行って活躍して、ドルトムントやマンチェスター・ユナイテッドといったビッグクラブでプレイした「香川」というブランドが再び輝くためには、良い選択だと思います。非常にプレイしやすいのではないでしょうか。

ユニオン戦でベルギーデビューを果たした香川 photo/Getty Images

チームが苦しいときこそ香川の力が必要

では、シント・トロイデンで10番を背負う香川に求められることはなんなのか。当然、攻撃的な部分は期待されていると思います。ただ、プレイオフ2圏内(※)である8位と6ポイント差の10位となっているチーム状況を見ると、攻撃面で結果を出しつつ、守備面でのタスクも求められます。実際、ここまで3試合に途中出場していますが、良い意味で「香川らしいプレイではないよね」と感じる場面が多々あります。相手とイーブンのボールに対してスライディングをして必死にマイボールにしたり、身体を張ったプレイだったり……。香川らしくはないけれど、覚悟を持ったこれが今の香川だという姿が見られています。今できることをチームのために全力でやっている、そんなふうに感じます。

また、ここ4試合で3勝1分と、チームの調子が上向きの中で試合に絡めています。前回のギリシャではなかなか出場機会に恵まれず、試合勘が懸念されていた香川にとっては、徐々に出場時間も伸ばせていますし、とても良い状況でしょう。シーズン途中での移籍に加えて、結果を求められながら試合勘を取り戻すのは、決して簡単なことではないと思いますけどね。それをわかった上での欧州残留でしょうし、好調なチームとともに個人としても結果を残し、評価を上げてもらいたいです。

現在は守備に奮闘するシーンが多いが、今後はゴールに直結するプレイにも期待 photo/Getty Images

ただ、香川にとって勝負どころはチームが好調なときではなく、チームが苦しい状況のときでしょう。デビューから2戦は勝っている状況での出場でしたが、27日のオーステンデ戦ではスコアレスの状況からの出場でした。今後もチームが苦しい状況での出場があるかと思いますが、香川は一発のスルーパスで戦況を変えられたり、勝利へ向けて違いを生み出せる選手です。彼自身もそういったイメージを持っていると思いますし、苦しいときこそ真価が問われる。このような状況の中で、どんなプレイを見せてくれるのかも見ものですね。シント・トロイデン側も逆転プレイオフを実現させるために、逆境を跳ね返すために、経験が豊富で違いを生み出せる香川を取ったと思いますしね。期待に応えて欲しいです。

守備奮闘しながらも、中盤でタメを作ったり、チーム落ち着かせたり、前に飛び出て攻撃に絡んだり、華麗なターンで相手を振り切って前を向いたり、香川らしさも垣間見せています。やっぱり本来の香川真司を取り戻すためには、ゴールに直結するプレイは欠かせないと思います。チームのスタイル的に守備的になることも多く、攻撃の枚数が少ないこともありますが、後ろと前をうまく繋ぎ、ボールを失わずに運んでラストパス。もしくは、スルーパスを出して仲間を走らせて、自身がゴール前に走り込んでフィニッシャーになる、そういったプレイに期待したいです。

香川自身が選んだ道なので、周りがとやかくいうことではないと思いますが、いろいろな選択肢がある中で、彼は欧州でのプレイ続行を決断しました。悔いのないようにベルギーでプレイして欲しいです。彼の復活に期待しているファンも多いでしょう。香川真司はまだまだやれるはずです!

それでは、また次回お会いしましょう!

※ベルギーリーグは、まず18チームが2回戦総当りでレギュラーシーズンの34試合を戦う。34試合終了後、上位4チームはリーグ優勝とチャンピオンズリーグ、ヨーロッパカンファレンスリーグへの出場権を争うプレイオフ1として2回戦総当たりのリーグ戦で戦う。 5~8位の4チームはプレイオフ2として2回戦総当たりのリーグ戦を戦う。プレイオフ2の1位チームはプレイオフ1で4位となったチームとプレイオフ決勝を戦い、勝利チームがヨーロッパカンファレンスリーグへの出場権を獲得する。


水沼貴史(みずぬま たかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。YouTubeチャンネル『蹴球メガネーズ』などを通じ、幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている

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