ディバラ、モラタ不在も何のその 智将アッレグリの“堅守速攻プラン”でユヴェントス復活

苦しい台所事情のなか、ユヴェントスを連勝に導いたアッレグリ監督 photo/Getty Images

緻密な守備戦術で、チェルシーとトリノを封殺

アンドレア・ピルロ前監督の昨季限りでの退任を受け、今夏にユヴェントスに復帰したマッシミリアーノ・アッレグリ監督。

2021-22シーズンのセリエA開幕から3試合で1分け2敗と出遅れたほか、9月26日のサンプドリア戦で、パウロ・ディバラとアルバロ・モラタの両FWが負傷。苦しい台所事情での采配を余儀なくされたが、堅守速攻プランを選手たちに授け、9月29日のチェルシー戦(UEFAチャンピオンズリーグ)、10月2日のトリノ戦(セリエA第7節)を1-0で物にしている。

チェルシー戦とトリノ戦で威力を発揮したのは、アッレグリ監督による複数の守備隊形の運用だ。
両ウイングバックと2シャドーを高い位置に張らせる[3-2-5]の布陣でビルドアップを試みたチェルシーに対し、ユヴェントスは[4-1-4-1]の布陣を基調とする、マンツーマン主体の守備で応戦。

1トップのフェデリコ・ベルナルデスキ、両サイドハーフのファン・クアドラードとフェデリコ・キエーザの計3人で、アンドレアス・クリステンセン、チアゴ・シウバ、アントニオ・リュディガーによるチェルシーの3バックを監視。ロドリゴ・ベンタンクールとアドリアン・ラビオの2インサイドハーフには、ジョルジーニョとマテオ・コバチッチによる、チェルシーの2ボランチの捕捉というタスクが与えられた。

チェルシー陣営の小気味良いパスワークにより、この守備を掻い潜られる場面が散見されたものの、アッレグリ監督の周到な準備が実を結ぶことに。

同監督はハイプレスが通用しないと判断するやいなや、中盤の並びを右からクアドラード、ベンタンクール、マヌエル・ロカテッリ、ラビオの4人に組み直し、ゲームプランも[4-4-2]の陣形を基調とする自陣撤退に変更。自陣ペナルティエリア手前までボールを運ばれた際には、クアドラードを最終ラインに下げた[5-3-2]の布陣で、チェルシーのパスワークを手詰まりにさせた。

機能しなかったマンツーマン主体の守備を諦め、自陣のスペースを埋める守備へ即座に移行した点も然ることながら、複数の守備プランをチームに落とし込んだアッレグリ監督の指導力の高さには、脱帽のひと言。昨季のチャンピオンズリーグ覇者相手の無失点勝利は、彼によってもたらされたと言って差し支えないだろう。

トリノ戦でも[4-4-2]の陣形による自陣撤退と、キエーザとモイーズ・キーンの2トップ、左サイドハーフのラビオの計3人に相手の3センターバックを狙わせる2つの守備戦術を使い分け、試合をコントロール。2試合とも複数得点は奪えなかったが、要所をおさえた守備と、俊足の2トップを活かしたカウンターは、相手の脅威となっていた。

直近の公式戦4連勝と、復調ムードが漂っているユヴェントス。2シーズンの休養を経て古巣に舞い戻った欧州屈指の智将が、緻密な守備戦術を武器に、セリエAでの連覇が昨季で途絶えた同クラブを再生するかもしれない。

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