前半39分に東京がディエゴ・オリベイラのゴールで2点をリード。更にその直後の40分に東京は再びC大阪のゴールネットを揺らす。東京のカウンターにC大阪は成す術を持たず、まさに蹂躙されているという状態だった。ただしこのゴールはVARによりオフサイドの判定。前半をアウェイチームの2点リードで折り返すことになる。
「前半もう1点、止めを刺すことができれば後半違った展開になっていたと思う」(長谷川監督)
ここがゲームの流れを大きく変えることになった。
後半立ち上がりからC大阪は4-4-2のシステムを4-2-3-1に変更。中盤に厚みを持たせ、MF清武の周囲に人を配することで、ゲームの主導権を奪おうとした。この対応に東京は後手を踏んだ。後半立ち上がり早々の46分にFW加藤が左からのクロスをピンポイントで合わせて1点差。
「前半は思うようにサッカーができず、後半(気持ちを)引き締めて入った中で、早い時間帯に点を取れたことが良かった。ひとりひとりの動きも活発になった。その得点が僕だったことも個人的には良かった」(加藤)
東京の一方的な流れをC大阪が手元に手繰り寄せ、ゲームは大きな変化を見せる。
「前半は足元重視のサッカーでC大阪は戦ってきたと思うが、後半に入ってシンプルにサイドからクロスを上げてきた。前半と後半ではまるっきり違うサッカーをやってきたので、なかなかそこに対応し切れなかった」
長谷川監督はC大阪の戦い方の変化に、対応が後手に回ったという分析をした。
57分には再び左サイドからのクロスに、ファーサイドから走り込んだMF坂元が合わせて同点。東京がC大阪に対して抱く、細かく繋いでくるだろうというイメージを逆手に取った戦い方でゲームは振出しに戻った。
更に74分には右CKからCBチアゴがゴール中央でダイビングヘッドで逆転。
「相手には技術の高いブラジル国籍選手がいるということは分かっていたが、その3人にやられてしまったことは悔しい。ただ後半はそうした相手もしっかり抑え、自分たちのサッカーをしっかり出せたと思う」
CBである以上、2失点して喜んではいられないが、後半の戦い方には手応えを感じたようだ。
前半と後半と出はまったく違う内容の試合になったが、ホームのサポーターにはこれ以上ないスペクタクルが提供された。ただし試合はこのまま終わらない。
82分、東京は相手ゴール前でFKを獲得。これをこの試合で先制点を決めているFWレアンドロが狙う。ボックス左から右足を一閃。ボールはファーポスト上を鋭く突く。GKキム・ジンヒョンが必死のセービングを見せ、右手で触ったもののボールはそのままゴール隅に吸い込まれた。まさに芸術的と呼ぶに相応しいゴールだった。
「まずは、神様にこのゴールを決めることができたということに感謝したい。蹴る前に相手GKの位置を見て、そのあとはゴールに入った瞬間しか分からなかった。FKに関しては、いつも練習のときに森下GKコーチが指導してくれていて、その結果がしっかり出たと思う」
レアンドロは神とスタッフに感謝の言葉を捧げた。
結局90分を戦い終えて両者譲らず、試合はドローに終わった。
「今日のゲームは、心臓が悪い方にとっては本当に心臓には良くないゲームだったと思う。サッカーが好きな方にとってはおもしろい、見ごたえのあるゲームになったと思う。両チームとも勝利を目指して最後まで戦った内容を考えると、引き分けも妥当な結果だったのかなと思う」
クルピ監督の言葉が試合を物語っている。熱波と呼べるほどの暑さの中、ピッチにそれ以上の熱さを感じた試合だった。
文/吉村 憲文