金メダル獲得へ突き詰めたい[4-4-2]の守備 なでしこの弱点が露わになった“ワンプレイ”

自陣バイタルエリアをまめに埋めた三浦。球際での強さも光った photo/Getty Images

何とか勝ち点1をゲット

21日に行われた東京五輪サッカー女子のグループステージ第1節で、E組の日本女子代表(なでしこジャパン)がカナダ女子代表と対戦。なでしこジャパンは6分にFWニシェール・プリンスのクロスに反応したFWクリスティーヌ・シンクレアにゴールを奪われたほか、途中出場のFW田中美南が54分にPK失敗と、苦しい試合展開に。球際での激しさを前面に押し出したカナダ代表の守備に手を焼いたものの、84分にMF長谷川唯のロングパスに反応したFW岩渕真奈が同点ゴールをゲット。1-1の引き分けで初戦を終え、貴重な勝ち点“1”を得た。

この日のなでしこジャパンの布陣は、14日の豪州代表戦(親善試合)と同じく、中盤横一列の[4-4-2]。キックオフ直後から岩渕と菅澤優衣香の2トップが相手GKステファニー・ラベーや最終ラインにプレスをかけ、相手にロングボールを蹴らせることに成功。キックオフから失点シーンまでは、相手の苦し紛れのロングボールを、なでしこジャパンの面々が回収できていた。

悔やまれるのは、4バックの泣き所であるセンターバックとサイドバックの間のスペースを相手に突かれ、先制ゴールを奪われたこと。この場面では左サイドバックの北村菜々美が同サイドのタッチライン際に流れてきたMFジェシー・フレミングに釣られ、北村の背後が空く形に。同時に左センターバックの南萌華と北村の間も大きく開き、なでしこジャパンの守備隊形が崩れてしまった。
このスペースをプリンスに使われたうえに、センターバックの南がサイドにおびき寄せられ、手薄になったゴール前のスペースをシンクレアに突かれて失点。4バックは5バックと比べ、左右のセンターバックとサイドのDFの間が空きやすく、センターバックがサイドに釣り出された際に、ゴール前ががら空きになりやすいのがデメリットだが、初戦ではこれを克服できず。プリンスにパスを送ったMFアシュリー・ローレンスに対する、左サイドハーフの長谷川のプレスの強度も足りなかった。

今回のように相手にボールを支配される展開となった場合、いかに自分たちの陣形を崩さずに守れるかが、勝敗の分かれ目となる(カナダ代表のボール支配率55%、データサイト『SofaScore』より)。試合全体を通じて右センターバックの熊谷紗希やボランチの三浦成美が球際で強さを見せ、4バックと4人の中盤による計8人の守備ブロックも概ねコンパクトに保てていたが、カナダ代表に一瞬の隙を突かれてしまった。

ハイプレス、もしくはミドルプレスからの速攻で得点を狙うというチーム全体の意図は窺えたものの、これを次戦以降も続けるのであれば、サイドハーフがボールホルダーに寄せるタイミングを今一度整理したいところ。サイドバックが対面の相手選手に釣られずに、常に自身の後方のスペースをケアできるかどうかも、守備の成否を左右する。悲願の金メダル獲得に向け、守備の連係を深めたいところだ。




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