[特集/EURO2020大展望 グループC]復活のときを迎える“オレンジ軍団” 第2集団には不気味なダークホースが

オランダに復活の気配 良質な若手が多く地の利も

オランダに復活の気配 良質な若手が多く地の利も

フィルジル・ファン・ダイクの出場は叶わずとも、オランダには鉄壁のデ・リフトがいる photo/Getty Images

 2014年ブラジルW杯の3位を最後に、オランダは国際舞台から遠ざかっている。ただ、2018-19ネーションズリーグ(以下NL)に準優勝しており、深刻な低迷期を迎えていたわけではない。欧州全体の勢力分布図がより均等になってきたタイミングと、オランダの世代間融合が進まないタイミングが重なり、飲み込まれる大会が続いたのは不幸だった。

 そのオランダに復活の気配が漂っている。というか、少なくともグループステージは突破すると考えられる。なにしろ、GS3試合すべてを地元アムステルダムで戦うことができる。現時点でアムステルダムは有観客での開催が認められており、これはフランク・デ・ブール監督が率いるオランダにとって力強い後押しとなるにちがいない。

 F・デ・ブール監督は2020年9月にロナルド・クーマン(バルサの監督に就任)からチームを引き継ぎ、前任者から継続して経験ある選手と良質な若手の融合を進めるカタチで強化を進めてきた。選手の顔ぶれはやはりグループのなかで一番豪華で、基本布陣となる[4-2-3-1]の最終ライン中央にはマタイス・デ・リフト、ダリー・ブリントがいる。フィルジル・ファン・ダイクは長期離脱中だが、デ・リフトとブリントはアヤックスでチームメイトだったこともあり、とくに不安はない。

 その前方、中盤ではジョルジニオ・ワイナルドゥム、フレンキー・デ・ヨングがハードワークし、アグレッシブに相手ボールを刈り取り、素早く攻撃につなげる。2列目でプレイするダフィ・クラーセン、メンフィス・デパイ、ステフェン・ベルハイスなどはいずれもドリブルできる選手で、とくにベルハイスのカットインからの左足シュートは精度が高い。対戦相手の各国はポゼッションサッカーで揺さぶられると同時に、マイボールになってもハイプレスからのスピードあるショートカウンターにも苦しむことになる。

 グループステージは2位以内に入れば通過でき、3位でも他グループの結果によって決勝トーナメント進出となる。このレギュレーションを考えると、これだけの選手が揃うオランダがアムステルダムで3試合を戦って敗退することはない。おそらく、1位通過することになる。

不気味な北マケドニア 旋風を起こす可能性あり

不気味な北マケドニア 旋風を起こす可能性あり

パンデフ(左)のゴールもあり、W杯予選で北マケドニアはドイツを破る大金星を挙げた photo/Getty Images

 2位通過に関しては他3カ国すべてに可能性がありそうだが、気になるのは北マケドニアだ。FIFAランクは62位。2021年3月31日、敵地デュイスブルクでドイツとカタールW杯予選を戦い、2-1で競り勝ってサッカー界に衝撃を与えた。EURO本大会の出場権を得ている時点で十分なポテンシャルを持つとわかるが、ドイツ撃破でさらに自信を得て、今大会で旋風を巻き起こすかもしれない。

 イゴール・アンゲロフスキ監督は柔軟性を重視するタイプで、4バック、3バックのどちらも採用し、試合によって使い分ける。ドイツと戦ったときは[5-3-2]で、3バックの両サイドが右にボバン・ニコロフ、左にエズジャン・アリオスキという普段は中盤でプレイする両名が低いポジションでプレイした(アリオスキは左SBをやるときもある)。

 しかし、この守備を重視した布陣はドイツとのアウェイゲーム対策で、通常はニコロフがボランチに入る[4-2-3-1]や[4-4-2]で戦っている。チーム全体に粘り強く戦う意識が植えつけられていて、守る時間帯はみんなで守る。ここぞという攻撃チャンスには高い集中力を発揮し、数少ない決定機を生かしてゴールにつなげる。こうしたスタイルが確立されていて、2020-21NLでは2勝3分け1敗という成績を残しているが、勝利も敗戦もすべて1点差。僅差の攻防、緊迫感のある試合に慣れており、これは大舞台向けだといえる。スケジュールを見ても勝点を取りやすい1戦目、2戦目に連続してルーマニアのブカレストで戦うことになっており、ここでほぼGS突破の可否が決まるため、コンディションの調整もやりやすそうだ。

 頼もしいのは、FWゴラン・パンデフが前線に君臨していることだ。ラツィオ、インテル、ナポリなどセリエAで長年プレイするエースは、37歳になったいまはジェノアでプレイし、変わらずに高い決定力を維持し続けている。後世に語り継がれるドイツ戦で先制点を奪ったのもパンデフだった。2トップのコンビを組むのはおそらくイリヤ・ネストロフスキで、こちらも31歳となっている。北マケドニアにとってはじめてのビッグイベントになるが、こうした経験豊富な選手がいるので、力を発揮できないということはない。

 EURO2016では初出場だったウェールズ、アイスランド、北アイルランドが決勝トーナメントに進出し、ウェールズが4強入り、アイスランドも8強入りしている。NLでの競り合いの強さ、W杯予選でのドイツ撃破などここ最近の良い流れから判断すると、グループステージを突破してもなんら不思議はない。

ウクライナ&オーストリアは 可能性残して3戦目を迎えたい

ウクライナ&オーストリアは 可能性残して3戦目を迎えたい

堅固な守備戦術を用い、W杯予選ではフランス相手にドローに持ち込んだシェフチェンコ監督 photo/Getty Images

 母国の英雄であるアンドリー・シェフチェンコ監督が2016年から指揮を執るウクライナは、2016年大会はグループステージ3敗で早期敗退している。オーストリア代表も前回大会は1分け2敗の未勝利でグループステージを終えており、その後2018年からドイツ人のフランコ・フォーダ監督に率いられている。

 両者の対戦は3戦目に組まれており、お互いにここまでのオランダ、北マケドニアとの戦いでどれだけ勝点を得られているかがポイントになる。最悪なのは2敗同士で迎えることで、そうなると勝利しても3位での通過が難しくなる。どちらも1戦目、2戦目で地道に勝点を獲得し、可能性を残して最終戦を戦うことがGS突破への道だ。

 粘り強く勝点を得るという部分を考えると、ウクライナは守備が堅い。予選グループBではポルトガルを抑え、驚きの首位通過。失点わずか4という数字に守備の良さが表れている。シェフチェンコ監督は2020-21NLをおもに[4-3-3]で戦ってきたが、カタールW杯予選では3バックを採用し、2021年3月24日のフランスとのアウェイゲームでは3人のCBを起用する[5-3-2]で戦って1-1の引き分けに持ち込んでいる。シェフチェンコ監督はこれに手応えを得たようで、その後も3バックで戦っている。最終ラインはGKアナトリー・トルビンを軸に、ミコラ・マトヴィエンコ、セルゲイ・クリフツォフといったシャフタール・ドネツクの選手を中心に固めていて、統率が取れている。

 問題は攻撃面で、W杯予選フィンランド戦、カザフスタン戦にいずれも1-1で引き分けている。グループステージで敗退した前回大会も無得点だった。ウクライナの課題はいかにゴールを奪うかで、左サイドを崩すオレクサンドル・ジンチェンコやトップ下のルスラン・マリノフスのアシストから、アンドリー・ヤルモレンコやブラジル出身で2019年にウクライナ国籍を取得したジュニオール・モラエスがフィニッシュするカタチを数多く作り出したいところだ。

 一方、オーストリアはフォーダ監督のもと[4-4-2][4-2-3-1]で戦い続けて完成度を高めることに努めてきたが、どうも守備が安定しない。カタールW杯予選ではデンマークに0-4で大敗し、勝利したもののフェロー諸島(○3-1)にも1点を許している。

 気になるのはダビド・アラバの起用方法で、すでにW杯予選3試合を消化しているが、アラバはいずれも違うポジションでプレイしている。スコットランド戦(△2-2)では左SB、フェロー諸島戦ではボランチ、デンマーク戦では左サイドアタッカーだった。無論、代表は試合ごとにさまざまな変化があっていろいろな選択が必要なものだが、軸となるアラバのポジションをドンと決めて、そこを核に強化したほうが守備は安定するかもしれない。

 さらに日程面も不安材料だ。オーストリアはGSの3戦をブカレスト→アムステルダム→ブカレストと、直線距離で1,700km以上離れた2つの開催地を行ったり来たりしながら戦うことになる。一度の移動で済む北マケドニア、ウクライナと比べても不利であり、コンディション面での調整が難しい。

 こうしてみていくと、オランダ、北マケドニアに勢いがあり、ウクライナ、オーストリアは苦戦するのではないかと考えられる。そして、オランダ×北マケドニア、ウクライナ×オーストリアは3戦目に組まれている。ウクライナ、オーストリアが1戦目、2戦目でいかに勝点をもぎ取るかが、グループの行方を左右するカギになる。

文/飯塚 健司

※電子マガジンtheWORLD257号、5月15日配信の記事より転載

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