[MIXゾーン]ロティーナはスロースターター “産みの苦しみ”経て見えてきた清水のサッカー

ロティーナ監督はすぐさま結果を出すタイプではない(写真は鳥栖戦) photo/Getty Images

神戸戦はドローに終わったがやるべきことは見えた

 8節を終わって2勝2分4敗。勝ち点8。清水のロティーナ新監督への期待が大きかっただけに、少々ガッカリしているサポーターも多いだろう。ただ過去の記録を調べてみると、それは産みの苦しみのようなものだということが理解できるはずだ。

2016年 東京V 2勝1分5敗
2019年 C大阪 2勝1分5敗

 過去2度の就任直後の8節までの成績と、現在の清水の成績がおもしろいまでに似ている。つまりロティーナ監督は、就任直後にロケットスタートを期待するタイプの監督ではないということだ。その上で手腕は折り紙つきで、結果を残すことに非常に長けている。
 この傾向を理解した上で、神戸とのアウェイの試合を見てみると、今後に大きな期待を抱かせるものだった。「全体的に我々にとって良い試合ができたと思う」(ロティーナ監督)の言葉に誰もが納得するはずだ。

惜しむらくは「前半は良いプレイ、準備してきた狙っていたプレイができ、チャンスも作れていた。残念だったのは点を決めることができず、同点でハーフタイムを迎えたこと」。

 前半は試合内容で神戸を圧倒。特にシュートがゴールマウスを2度叩くなど、ツキにも見放された。特に立ち上がり6分に、エリアを飛び出した神戸GK前川を完全に外し、後は枠に運ぶだけのシュートをFW鈴木がポストに当ててしまった。勝負ごとに『たら』も『れば』もないが、それでもこのシュートが決まっていたら、試合は一方的なものになっていたかもしれない。それくらい重要な場面だった。

 九死に一生を得た神戸だったが、その後も清水のプレッシャーに晒され、防戦を強いられる。

「相手のプレスに対して、足元のつなぎを意識し過ぎ、背後へ相手を下げさせる動きを活用することができなかった」(三浦監督)

 特にボランチ起用された郷家は、そのパス能力を披露することも難しく、ボールの回収に走り回るばかりだった。落ち着いたビルドアップが持ち味の神戸だが、プレッシャーを受けることで前に蹴るしかなくなり、結果そのボールを清水が拾って、次の攻撃に出るという状態が前半は続いた。ただやはりここで清水がゴールを決められなかったことは、後々大きな影響を与えた。

 三浦監督が
・相手のプレスに全体が下がり過ぎないようにしよう
・FWの動きをよく見て使ってあげよう
・ラインを上げてもっとコンパクトにして、ボールを回そう
の3点をハーフタイムで選手に指示したことで、全体の流れを神戸がやや押し戻し、一進一退の攻防が続いた。

「後半はより拮抗した試合で、我々がゲームを支配したり、彼らが支配したりする時間があった」(ロティーナ監督)

 結果的には74分に清水が自陣ゴール前からGK権田の繋ぎから、一気にMF中山がドリブルで70メートル近くを独走、左サイドに開いたFWチアゴ・サンタナに。これを逆サイドからオーバーラップした右SBエウシーニョにクロスを供給、右足でファーサイドのポスト隅に流し込んだ。清水の見事なカウンターだった。

「自陣からファイナルサードまでボールがくることを信じて走っていたところ、チアゴがナイスクロスを上げてくれた」(エウシーニョ)

 先制された神戸だが88分、FW古橋が中央を突破し、これを右SB桜内に。クロスははじかれたが、ファーサイドの左SB初瀬が中央に折り返し、これに古橋が右足で合わせた。この一連の流れで古橋のプレイの質は極めて高かった。特にシュートの場面では清水DFの背後に潜んで、シュートのタイミングに突然姿を現している。DFからすれば死角から現れたように感じただろう。

「(足が)滑ってしまって、チラッっとリョウ(初瀬)がボールを拾うのが見えたのですぐに立って、僕の前に1枚選手がいて、くるならそこだろうなと。駆け引きで勝ったら良いボールがきたので決めるだけだった」(古橋)

 まさにストライカーの嗅覚と呼ぶべきゴールだった。試合は1-1のドローに終わった。

 清水からすれば勝てる試合で勝ち点2を落としたのは事実だが、自分たちがやるべきことが90分を通してでき、間違いなく自信になる試合だろう。

 神戸とすれば苦しい試合で勝ち点1を拾い、負け試合を引き分けに持っていったことをプラスに考えるべき試合。評価のポイントは違っても、共に今後に繋がる試合になったといえそうだ。

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