ピルロに漂ってきた名将の風格 堅守を取り戻したユーヴェの反攻が始まる

今季からユヴェントスの指揮を執っているピルロ監督 photo/Getty Images

セリエA10連覇は射程圏に

イタリアの絶対王者は昨夏大きな賭けに出た。セリエA10連覇という前人未到の偉業を目指す2020-21シーズンに、新監督としてこれまで指導者経験のなかったクラブOBのアンドレア・ピルロ氏を据えたのだ。

名選手、名監督にあらず。ピルロ監督の就任決定当初、ファンの頭の中にはこの言葉がよぎったことだろう。選手として現在の黄金時代を築く原動力となった彼でも、指揮官としての能力は未知数。下手をすれば、連覇は今季で途切れてしまうかもしれない。実際、シーズン前半戦は4位から6位あたりを行き来していたこともあり、不安は募るばかりだった。決して悪くはないのだが、絶対王者の戦いぶりとしては物足りない。そんな意見も、現地メディアの間で散見されたことは記憶に新しい。

しかし、ここにきてピルロ監督は名将の片鱗を見せ始めたのか。第18節のインテル戦でこそ優勝を争うライバルに0-2での敗戦を喫したものの、ユヴェントスは直近のリーグ戦3試合すべてでクリーンシートを達成。細かな修正を重ね、新米指揮官はビアンコネリに以前までのような堅牢な守備を取り戻させることに成功している。
現地時間6日に行われたASローマ戦は、そんな堅守軍団の復興を実感するためにうってつけの試合だった。このゲーム、ユヴェントスは相手に14本のシュートを浴びながらも(ユヴェントスは3本)2-0での完勝を収めている。スタッツだけを見れば主導権を握られたかのようにも思えるが、この試合でユヴェントスはローマ攻撃陣をほとんど寄せ付けず。しっかりと守って、少ないチャンスをモノにする。その試合運びは、マッシミリアーノ・アッレグリ監督時代にユヴェントスが披露していた戦いぶりに近しいものがあったと言っていいだろう。

「ユヴェントスの守備は再び“要塞”と表現するに相応しいものになった。就任当初はその戦いぶりに不満の声も上がっていたピルロだが、彼は自分自身の考えを逐一修正することができる人物だと証明してみせた。柔軟な思考の持ち主だ。今ではその姿がアッレグリのように見える」

伊『Gazzetta dello Sport』も、ここ数試合でチームの守備力を一段階上のレベルへと引き上げたピルロ監督の手腕をこのように称えている。この勝利によって、チームの順位も首位ACミランと7ポイント差の3位に上昇。ユヴェントスはミランやインテル(2位)より1試合消化が少ないため、スクデットも射程圏内に入ってきたと言っていいだろう。当初はその手腕を不安視されたものの、きっちりと改善点を修正して王者・ユヴェントスを率いるに相応しい風格が漂ってきたピルロ監督。はたして、堅守を取り戻したビアンコネリの逆襲がここから始まるのか。新米指揮官に導かれるイタリアの絶対王者が、ここからギアを上げてくる予感がしてきた。

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