バイエルンは“前線プレス”復活で守備向上へ 絶対王者に安定感が戻ってくる

ニャブリやミュラーの守備意識向上が、ここ数試合におけるバイエルンの安定感を生み出している photo/Getty Images

守備不安の時期はもう過ぎたか

2020-21シーズン、バイエルン・ミュンヘンの守備が脆い。そんな風潮は年明け直後まで確かにあった。先月8日に行われたブンデスリーガ第15節のボルシアMG戦までに同クラブが喫していた失点数は「24」。1試合平均で1.6点を失っているのは、どう考えても多かったと言っていい。圧倒的な攻撃力を擁しているだけあって勝ち点こそ積み上げることはできていたが、今季のバイエルンにとって守備は大きな懸念点だった。

しかし、そんなバイエルンの守備が大きく改善されつつある。第16節のフライブルク戦以降にリーグ戦で5連勝を飾っている同クラブだが、この5試合で彼らが喫した失点はわずか「2」。1試合平均失点は0.4点にまで劇的に改善されている。第15節までたった2度しか達成できていなかったクリーンシートも、直近5試合ではすでに3回も達成。こういった数字を見ても、バイエルンの守備が向上しつつあるのは明らかだ。

では、一体どうしてバイエルンのディフェンスは突如としてここまで堅くなったのか。その大きな要因として考えられるのが、プレス強度の向上だ。これまでは陣形をコンパクトに保っているにもかかわらず、前線のプレスが緩いために相手ボールホルダーを自由にさせる場面が散見されたバイエルン。これにより、いくらラインを高く設定しようとも、最終ライン裏にボールを出されて失点というパターンも多かった。昨季チャンピオンズリーグで見せた猛烈なプレッシングのイメージが強い彼らだが、今季はこの“プレスの緩さ”が失点増加の大きな原因となっていた。
だが、現在のバイエルンはそうした緩さを修正することに成功している。直近のリーグ戦第20節では、1.5列目に入ったセルジュ・ニャブリやトーマス・ミュラーが随所で相手ボールホルダーへとプレッシャーをかけることで、ヘルタのビルドアップを阻害。スタメン発表当初はディフェンスに不安がある布陣とも思われたが、結果的にはこの2人が守備意識を高く保つことでクリーンシート達成に漕ぎ着けた。

「今日はジョシュア(・キミッヒ)やセルジュと共に、以前までとは少し違ったプレイの仕方を意識したんだ。特にプレスの部分ではその成果が出たと思うよ。僕やセルジュはあまりそういったプレイが得意とは言えないけれど、それでもチームのためにならばどんな仕事もやらなければならないと思ってプレイした。その成果が出て本当に良かったよ」(独『Sport 1』より)

ヘルタ戦後、自分たちの動きが以前と変わったことはミュラー自身もこのように語っている。前線のプレスが機能し始めたことで、以前のような安定感が戻ってきたバイエルン。シーズン前半戦は格下相手に勝ち点を取りこぼすことも多かった同クラブだが、後半戦はまた磐石の戦いぶりを披露することになるか。2位以下のチームは王者が不安定な間にポイント差を詰めておきたかったが、もうバイエルンにつけ入る隙はなくなってしまったのかもしれない。

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