ユーヴェにとって絶対に負けられない戦い キーマンはやはり復活が期待される10番か

ウディネーゼ戦ではゴールを決めたディバラ photo/Getty Images

10連覇へ向けて早くも正念場

前人未到のセリエA10連覇を目指す“ピルロ・ユーヴェ”にとって、早くも正念場を迎えたかもしれない。

カルチョ・スキャンダルによるセリエB降格を味わった2000年代後半の低迷期を乗り越え、イタリアの絶対王者へと返り咲いたユヴェントス。2011-12シーズンのリーグ戦無敗優勝を皮切りに脅威9連覇を成し遂げたほか、カップ戦でも4連覇(2014-15〜17-18)を成し遂げるなど、数々のタイトルを手にしてきた。この間、アントニオ・コンテ、マッシミリアーノ・アッレグリ、マウリツィオ・サッリと3名もの指揮官がバトンを繋いだが、ライバルたちに一度も王座を譲ることはなかったのだ。

そして、今季からそのバトンを託されたのが、クラブOBであり、イタリアサッカー界のレジェンドでもあるアンドレア・ピルロだ。国内での結果とは対照的に、悲願である欧州制覇をなかなか成し遂げられないこともあってか、監督経験がないピルロの未知数な部分や将来性にかけたのかもしれない。ただ未知数といっても、現役時代に見せていた戦術眼や勝負師としての腕は、監督として十分な素質だ。また、ライセンス取得時の修了論文でも、魅力あふれる自身のサッカー哲学や知識を披露していた。
しかし、実際にチームを率いるのは決して簡単なことではない。自身の考えやスタイルをチームへ落とし込むには時間がかかるもので、ビッグクラブといえども監督交代によって大きく低迷するチームも少なくない。特に今季は新型コロナウイルスによる昨季の日程のズレにより、開幕前に十分な時間もなかった。その影響もあってか、ユヴェントスは近年あまり見られなかった苦戦をここまで強いられており、14試合消化した時点で7勝6分1敗。なんとか黒星を1つにとどめて踏ん張ってはいるものの、格下相手にポイントを取りこぼすことも多く、首位ACミランとの勝ち点差は暫定ではあるものの「10」まで広がってしまっている(ユヴェントスが1試合未消化)。

そんな中迎える首位との大一番。6日に行われるセリエA第16節で、ユヴェントスはミランの本拠地サン・シーロへ乗り込む。首位との差を直接縮める“6ポイントゲーム”ということもあり、巻き返しを図る後半戦へ向けて勢いに乗るためにも、ユヴェントスは敵地であるものの是が非でも3ポイントを手にしたい試合だ。

直近10試合の戦績は、ユヴェントスが7勝2分1敗と大きく勝ち越している。ただ、ズラタン・イブラヒモビッチの復帰で息を吹き返したミランには苦戦を強いられており、昨年行われた3試合は2分1敗。7月に行われた試合(昨季第31節)では、2点リードしながらも18分間で4点を奪われ、大逆転負けを喫した苦い思い出もある。

しかし、今回の試合では、流れはユヴェントスにあるかもしれない。ミランは序盤戦の立役者であるアレクシス・サレマーカーズとイスマエル・ベナセルが負傷離脱中に加えて、サンドロ・トナーリが前節ベネヴェント戦で退場し、ユヴェントス戦に出場することができない。イブラヒモビッチの負傷もそうだが、中盤に大きな不安を抱えてしまっているのだ。

中でもボランチがミランの不安材料となっており、地元メディアらの戦前予想によると、フランク・ケシエの相方は、ラデ・クルニッチが最有力で、ハカン・チャルハノールが一列下がる可能性もあるとのことだ。ただ、ユヴェントスを相手に不安定さがたびたび露見するクルニッチでは少々役割が不十分か。そして、守備面でも献身的な姿勢を見せるが、チャンスメイクなど攻撃面でのタスクが大きいチャルハノールをわざわざボランチで起用するのは、前線で壁となるイブラヒモビッチがいない現状ではマイナス要素でしかないかもしれない。ユヴェントスは、この弱点を上手く突いて試合を優位に進めたいところだ。

そこで、ミラン戦の鍵となりそうなのがパウロ・ディバラだ。負傷しているアルバロ・モラタの復帰が間に合いそうになく、伊『Gazzetta dello Sport』などはこの試合でも10番を先発予想している。先のウディネーゼ戦で見られたディバラがボールを受けるために中盤やバイタルエリアへ降りて、その背後をアーロン・ラムジーやウェストン・マッケニーが取る動き。ディバラが下がりすぎるのはチームにとってあまり良くない傾向となることが多いが、この動きはボランチに不安を抱えるミラン相手にも効果的になる可能性は高い。もし直接この動きで相手を崩せなくとも、中盤の要であるケシエへの負担が大きくなり、他に隙が生まれる可能性もある。まだまだ調子の上がりきっていないディバラの復活が、ミラン戦の勝利へつながる、ひいては後半戦の巻き返しにつながるかもしれない。

アレックス・サンドロが新型コロナウイルスの検査で陽性反応が出るなど、ユヴェントスにも不安要素はあるが、海外のブックメーカーでもユヴェントス優位との見方が多い。はたして、ユヴェントスはこの大一番に勝利し、10連覇へ向けて勢いに乗ることができるのか。

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