[特集/V字回復への処方箋 05]スールシャールは安泰ではない

いまもマンUで指揮を執る解任候補だったレジェンド

いまもマンUで指揮を執る解任候補だったレジェンド

スールシャールとソリが合わないポグバは、今冬に移籍すると考えられる photo/Getty Images

 今シーズンはプレミアリーグに限らず、早々と監督人事に手をつけるチームが多い。バイエルンのニコ・コバチが11月3日に解任され、11月19日には昨シーズンCLで決勝進出を果たしたトッテナムのマウリシオ・ポチェッティーノがチームを去った。さらに、同29日にはアーセナルのウナイ・エメリが解任となっている。12月になっても流れは止まらず、エヴァートンのマルコ・シウバ、ナポリのカルロ・アンチェロッティと続いた。その他、マルセリーノ(バレンシア)、キケ・フローレス(ワトフォード)などもクビになっている。

 こうしたなか、シーズン前から手腕が不安視され、開幕当初から常に“解任”の話題とともに語られていたひとりの監督がいまもその職に就いている。マンチェスター・ユナイテッドのオーレ・グンナー・スールシャールである。

 言わずと知れたクラブのレジェンドは、昨シーズン途中に最初は暫定監督として招聘され、その後に正式に3年契約を結んでいる。しかし、ダニエル・ジェイムズ、アンドレアス・ペレイラ、スコット・マクトミネイ、メイソン・グリーンウッドといった若手を積極的に起用する一方で、指向するのはシンプルなカウンターサッカーで、サポーターたちは暫定監督として就任したときからストレスを感じ続けている。

 成績も奮わず、第10節を終えた段階で3勝4分け3敗で14位に沈んでいて、わかりやすく苦戦を強いられていた。ケガもあったがチーム内に存在するネマニャ・マティッチ、ポール・ポグバなど主力として活躍が期待される選手たちをうまくコントロールできず、両名は冬の移籍マーケットでチームを去ることが規定路線となっている。

 大金を費やして獲得したハリー・マグワイアを擁する守備陣も「個」で対応するのは限界があり、第13節シェフィールド戦に3-3、第14節アストン・ヴィラ戦に2-2とプレミアリーグ昇格組との連戦にいずれも複数失点して引き分けている。とくに、アストン・ヴィラ戦の前半はホームゲームだったにも関わらず内容でも押し込まれており、相手に勝機を与えることでイキイキとプレイさせていた。この時点では、誰もがいよいよスールシャールも危ない……と感じていた。

瀬戸際に立たされるなかトッテナム、シティに連勝

瀬戸際に立たされるなかトッテナム、シティに連勝

不調から一転、連勝を収めたマンU photo/Getty Images

 芳しい結果を得られていない一方で、スールシャールを擁護する声もあった。庇っていたのはおもにOBたちで、ガリー・ネビル、ライアン・ギグス、ポール・スコールズなどはすぐには結果に繋がらないとして「もう少し時間を与えるべき」とコメントしていた。

 こうした状況のなか重要だったのが、第15節トッテナム、第16節マンチェスター・シティと続くライバルたちとの連戦だった。ここで不甲斐ない戦いをしていたなら、その時点で運命は決していただろう。しかし、スールシャールに率いられたマンUは現実的な戦いを披露し、勝点3を立て続けに奪ってみせたのである。

 ホームゲームだったトッテナム戦ではモウリーニョ体制になってまだ日が浅い相手に対して、キックオフ直後から積極的にプレスをかけ、マイボールになると素早くショートカウンターを仕掛けるサッカーで相手を翻弄した。6分という早い時間帯にマーカス・ラッシュフォードが先制点を奪ったことが奏功し、自分たちのリズムでサッカーを展開した。一度は同点に追い付かれたが、PKで
しっかりと勝ち越し、モウリーニョ就任以来負けなしだった相手に黒星をつけている。

 続くマンCとのアウェイゲームでは劣勢覚悟で臨み、開き直って守備に専念する戦いをみせた。狙うのはカウンターで、相手が意気揚々と攻撃している23分、29分にラッシュフォード、アントニー・マルシャルが得点し、2点のリードを奪った。ボールポゼッション28%対72%。シュート数11対22と予想どおりに押し込まれたが、反撃を1点に抑えて勝利している。

「シティからボールを奪い取るのは難しいが、われわれにもスピードと決定力があり、それを武器に攻め込むことができれば危険を与えることができると思っていた。だから、どうやってボールを奪うかよりも、マイボールになったときの積極性のほうが重要だった」

 シティとの戦いを終えて、敵地でダービーに勝利する大仕事をやってのけたスールシャールはこう言葉を残している。

延命は良い判断なのか? いまは監督交代のチャンス

延命は良い判断なのか? いまは監督交代のチャンス

スールシャールは危機的状況を迎えていたが、連勝によって現職を死守した photo/Getty Images

 トッテナム、マンCに勝利したことで、スールシャールは延命となった。とはいえ、内容は決して安定しておらず、相手がいまのマンUを低評価し、見くびってきた結果だったと判断できる。「いまのマンUには勝てる」という緩み、スキがなければ、この結果にはなっていなかっただろう。マンUをしっかりと尊敬し、全力でぶつかってきたシェフィールド戦、アストン・ヴィラ戦で判断するなら、やはり監督交代という英断が必要かもしれない。幸い、いまはアンチェロッティ、ポチェッティーノ、マッシミリアーノ・アッレグリといったビッグネームがフリーとなっている。

 また、今冬の移籍が予想されるマティッチ、ポグバが抜ける中盤にもっと厚みがほしい。いまはマクトミネイ、アンドレアス・ペレイラ、フレッジでボランチをまわしているが、それぞれが献身的なプレイをしているのはわかるが、よりダイナミックに攻撃参加する推進力のある選手がいれば、ゴールチャンスが増えるはずだ。

 さらに、ロメル・ルカクを放出した前線のコマも薄い。18歳のグリーンウッドが交代出場で経験を積んでいるが、マルシャルやラッシュフォードがケガをしたときのことを考えると心もとない。レスターのジェイムズ・マディソン、ドルトムントのジェイドン・サンチョを狙っているというニュースがあるも、マディソンはレスターとの契約を延長したとの最新情報がある。一方、サンチョには今夏も接触しており、こちらはマディソンよりも獲得に現実味がありそうだ。

 また、ザルツブルクで南野拓実とプレイするアーリング・ハーランドにも興味を示しており、『Daily Mail』によれば複数のクラブが獲得に動くなか、マンUが一歩リードしているという。マディソン、サンチョ、ハーランド。今冬、オールド・トラッフォードでプレイすることになるのはいったいどの選手なのか──。

 なにはともあれ、マンUはまずスールシャールを続投させるのか、フリーとなっているビッグネームを招聘するのか決めないといけない。そのうえで、リストアップしている選手を確実に獲得したいところだ。OBたちは「時間を与えるべき」と語り、ここにきてトッテナム、シティに連勝している。しかし、スールシャールには観衆を魅了するモダンなチームは作れないと考える。いまは少数精鋭で戦っており、選手のコマが足りていないのも明白だ。新監督のもと、新戦力を加えて新たなスタートを切ったほうがいいのではないかと思われる。

文/飯塚 健司

※theWORLD(ザ・ワールド)240号、2019年12月15日発売の記事より転載

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