日本の交代策は遅すぎるのか? W杯、アジア杯、U-20W杯の気になる采配

日韓戦で先に動いたのは韓国

今のU-20日本代表は強い。4日に行われたU-20ワールドカップ決勝トーナメント1回戦にはその強い自信をを持って臨んだはずだが、因縁の相手韓国代表に0-1で敗れてしまった。この一戦の興味深いところは、前半と後半で全く違う展開になったことだ。

前半は韓国が5バックを組んで守りを固めたため、日本はプレッシャーを感じることなくボールを回すことができた。前半に限れば決定機と呼べる場面はそれほど多くなかったが、ボールを支配していたのは日本の方だ。この流れを維持できれば、どこかで韓国の守備を崩せるとの感覚もあったかもしれない。

しかし、後半は打って変わって韓国が攻勢に出てきた。韓国は後半開始からDFのイ・ジソルを下げてスピードのあるFWオム・ウォンサンを投入し、システムを変えて一気に攻撃のギアを上げてきたのだ。韓国としてはプラン通りの戦いだったのだろう。韓国の方が休養日が短かったこともあり、前半は守備的に戦って日本の様子を見ると同時にスタミナを温存。勝負は後半戦でつけるとの考えがあったはずだ。
この変化に日本は戸惑った。相手のプレスがかかったことで思うようにボールが繋げなくなり、次第にボールの支配権は韓国に移った。また後半から入ってきたオム・ウォンサンの突破力が想像以上に厄介で、日本の左サイドは対応にかなり手を焼いていた。左サイドバックの鈴木冬一が置き去りにされる場面も何度かあり、もっと早い時間帯に失点していても不思議はなかった。

ここで気になるのは日本のベンチワークだ。当初は日程的に韓国の方が先に足が止まるかと思われたが、苦しくなったのは日本の選手が先だった。流れを変えるためにも選手交代で若い選手たちにメッセージを送りたいところだったが、日本は修正に時間がかかってしまった。84分にはクロスからオ・セフンにヘディングシュートを許して失点。日本の選手も必死に耐えていたが、明確な対策が打てないまま時間だけが過ぎてしまった印象だ。

もっと早く交代カードを切った方がいいのではないか。日本代表のゲームを見ていてこの感覚を抱くのは何度目だろうか。相手の戦い方への対応が遅れ、時間が過ぎていく展開には見覚えがある。

振り返ればロシアワールドカップ決勝トーナメント1回戦のベルギー代表戦も、交代カードを切るのに時間がかかってしまった。原口、乾のスーパーゴールで2点を先制したところまでは見事だったが、ベルギーを指揮するロベルト・マルティネスが手を打った65分からは試合の主導権が向こうへ移ってしまった。ベルギーは65分にマルアン・フェライニ、ナセル・シャドリを同時投入し、そこから9分間で2点を奪い返すことに成功する。その間日本のベンチはなかなか動けず、守り切るのか3点目を奪いにいくのか方針が定まらないまま時間が過ぎてしまった。

チームを指揮していた西野朗監督は2-2になってから慌てて山口蛍と本田圭佑を投入したが、守備に強みのある山口はリードしている展開で投入したい選手だ。ベスト8まであと一歩のところまで進んだこのゲームも、ベンチワークでは後手を踏んでしまった印象がある。

今年1月に開催されたアジアカップ決勝のカタール代表戦もそうだ。序盤からカタールの戦い方に日本のプレスがハマらず、相手のキーマンと言われていたFWアクラム・アフィーフを自由にさせてしまう場面が目についた。中盤で数的不利になる場面が頻発する中、日本は明確な手が打てないまま前半30分までに2点を許してしまった。これは試合前のスカウティングの問題とも言えるが、試合の中でもう少し早く対応したいところだった。

またこのゲームも交代カードを切るのは遅かった。信頼できるアタッカーがベンチにいなかったのかもしれないが、62分に原口を下げて武藤嘉紀を投入してからは動きがなくなった。2枚目の交代カードを切ったのは3点目を奪われた直後の84分のことだ。89分には乾貴士も投入したが、さすがに残り1分ほどで違いを生み出すのは難しい。もう少し早い時間帯にカードを切ることもできたはずだ。

今回の韓国戦も似たようなところがある。84分に失点を許した日本の影山雅永監督は慌てて交代カードを用意し、88分に長身のFW原大智とMF東俊希を同時投入した。しかし、残り時間は2分少々しかない。前線に怪我人が出ていたため交代策を練るのが難しかったのは事実だが、ベンチワークの部分では韓国側が明らかに主導権を握っていた。日本のゴールがVARで取り消しになったり、宮代のシュートがポストを叩いたりと不運はあったが、何も手を打たないまま勝利を収めるのは難しかったはずだ。

指揮官は勝利を収めれば称えられ、負ければ批判を浴びるものだ。戦略も当たれば名将だが、外れると能力を疑われる。結果論の世界ではあるものの、ロシアワールドカップから立て続けに一発勝負の舞台で交代策が遅れているのは気にかかる。グループステージとは異なり、決勝トーナメントは1分1秒の判断が生死を分ける。今回は韓国側が先に動いてくる展開となったが、日本ももっと早い段階で手を打つべきだったか。

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