神戸の”VIPトリオ”を活かす影の実力者 レジェンドを支える3人の存在

ブレイクする神戸の古橋(左) photo/Getty Images

VIPと日本人選手が融合

今季のJリーグでは優れた外国人選手たちが注目を集めているが、ヴィッセル神戸が抱えるダビド・ビジャ、アンドレス・イニエスタ、ルーカス・ポドルスキのVIPトリオは一段レベルが異なる。

昨年まで所属していたMLSのニューヨーク・シティFCでも得点を量産していたビジャは37歳ながら体もキレており、ゴール前での動き出しやワンタッチシュートの精度はさすがのものがある。すでに今季は2得点を決めており、Jリーグでもゴールを量産することは十分に可能だろう。EURO2008、2010南アフリカワールドカップで得点王を獲得してきた実力はやはり本物だ。

ビジャとバルセロナ、スペイン代表で数多くのタイトルを獲得してきたイニエスタもコンディションは良好だ。中盤で自由に顔を出し、密集を易々と突破していく姿は圧巻だ。ビジャとも関係が出来上がっており、イニエスタの1本のパスからビジャがチャンスを迎える場面も多い。今後もこのスペイン人コンビは対戦相手の脅威となるだろう。
主に右サイドに入るポドルスキも、組み立てからフィニッシュまで多くの場面に絡んでいる。第4節の清水エスパルス戦ではゴール前の混戦から得点を奪ったが、今季も左足のインパクトは強烈だ。前を向くと積極的にミドルシュートを狙う姿勢は昨季と変わらず、日本のGKが普段体験していないようなスピードボールを飛ばしてくる。

VIPトリオによる華麗なプレイを楽しみにしているのはサポーターだけではなく、日本のサッカーファン全員が彼らの美技に酔っている。この3人を同時期にJリーグで見られるのは特別なことだ。しかし、神戸のサッカーはVIPトリオだけでは成立しない。世界的なスター3選手の能力を最大限活かすべく、彼らを懸命に支えている実力者たちがいるのだ。

まずは中盤の山口蛍、三田啓貴のボランチコンビだ。神戸は[4-2-3-1]でセットしているが、この2人がどこまでボールを追いかけられるかが大きなポイントだ。昨季もイニエスタ、ポドルスキが守備で遅れることがあり、中盤を広くカバーできる選手が神戸のサッカーには欠かせない。その役割をこなすうえでセレッソ大阪から獲得した山口はうってつけの人材と言えよう。日本代表メンバーにも再び召集された山口は、Jリーグを代表する潰し屋だ。運動量も豊富で、1対1で相手を削ることもできる。

例えば清水戦では山口が中盤で相手の攻撃の芽を摘み、そこからパスを受けたイニエスタがビジャにスルーパスを通すシーンがあった。ビジャのシュートは惜しくもブロックされたが、今季の神戸が理想とする形の1つと言っていいだろう。第3節のベガルタ仙台戦では相手のFW阿部拓馬を監視しつつ、中盤のスペースを埋める仕事もこなすなど、山口に求められる仕事は多い。

一方で相棒の三田はボールを運ぶ技術もあり、山口と同じくよく走っている。仙台戦では三田がサイドバックの初瀬亮に次ぐチーム2位の11.107km、山口が3位の11.071kmを走り、清水戦では三田がチームトップとなる11.672km、山口がチーム2位となる11.004kmを走っている。神戸が前線のレジェンド3名を活かしつつ勝ち点を積み重ねていくためには、周囲の選手が多くの距離を走ってカバーしていくしかない。まだ連携面は完全に出来上がったとは言えないが、まずまずの滑り出しと言えるだろう。

そしてもう1人忘れてはならないのが、左サイドハーフに入る古橋亨梧だ。24歳の古橋は昨年にFC岐阜から加わったアタッカーで、昨季から印象的なパフォーマンスを見せていた。今季はさらに磨きがかかったように感じられ、スピードもテクニックも申し分ない。スピードを活かして縦へ仕掛けることもできれば、中へカットインしてミドルシュートへ繋げることもできる。そして何よりイニエスタとの相性が良い。昨季から2人が絡むシーンはあったが、古橋が相手のライン間へ顔を出したところへイニエスタが正確に出してくる。同じ2列目でもポドルスキにはない武器を持っており、ベテラン勢の中でフレッシュな古橋が走り続けていることも大きい。

仙台戦ではイニエスタとの巧みなパスワークからペナルティエリアへ侵入し、イニエスタのクロスをヘディングで押し込んで得点を記録。さらに後半には速攻から左サイドを疾走し、ビジャのゴールをグラウンダーのクロスで見事にアシストしている。サイドから繰り出すクロスも質が高く、ビジャの特長をよく理解したスピードボールを選択している。このパフォーマンスを継続すれば日本代表から声がかかっても不思議はないだろう。

データで見ると、古橋は今季先発出場したリーグ戦3試合全てでチームトップのスプリント数を記録している。サガン鳥栖戦では35回、仙台戦では40回、清水戦では80分で交代しながらも26回を記録した。ポドルスキやイニエスタには縦への爆発的な走力が欠けており、速攻の際に古橋が左サイドを駆け上がる動きも良いアクセントになっている。テクニックも高いため、古橋の存在がVIPの能力を最大限引き出す要因になっているのだ。

昨季はイニエスタ、ポドルスキをどう組み込んでいくのかで試行錯誤している部分があったが、知将ファン・マヌエル・リージョのチームにはVIPを活かせるピースが揃ってきている。ビジャが衰えを感じさせないプレイを見せているのも特徴的で、今季はACL出場権獲得まで駆け上がりたいところだ。

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