[ロシアW杯#58]布陣変更でブラジルを幻惑 ベルギー、超絶カウンター発動で32年ぶりのベスト4進出!

ムニエのSB起用が奏功 ネイマールを寄せつけず

ムニエのSB起用が奏功 ネイマールを寄せつけず

相手のCKから始まったカウンターを結実させたデ・ブライネ  photo/Getty Images

ベルギーはブラジル対策に余念がなかった。

今大会、右サイドハーフとして貢献してきたムニエを一列下げ、右サイドバックに起用。中盤の右インサイドにフェライニを配置し、ルカクは右ウイングだ。ブラジルのストロングポイントである左サイドを、この人選で抑えにかかったと考えられる。ムニエはネイマールに1対1で後れを取らず、フェライニはコウチーニョにスペースを与えなかった。ルカクも守備に奔走していた。マルセロにすれば、「背後は突かれたくないし、負けると分かっている空中戦は競り合いたくもない」と嫌気が差す。ミランダのカバーによってブラジルの左サイドは崩れなかったものの、本来の冴えを欠いていたことは事実である。ベルギーのプランは奏功した。
 
それでもベルギーは試合開始からしばらくの間、受ける展開が続いていた。ディフェンシブサードに追い込まれ、クロスから、CKから、あわや失点という場面も迎える。ブラジルのラストパスが精度を欠いていたり、シュートがポストを叩いたりするツキに助けられたが、序盤でビハインドを背負っていたら、その後の様相は大きく変わっていただろう。

13分、劣勢のベルギーが先制した。左CKをニアに飛びこんだコンパニがバックヘッド。正確にミートしなかったボールはフェルナンジーニョの右肩に当たって角度が変わり、ブラジルのゴールに吸い込まれていった。

冴え渡ったベルギーの速攻 ブラジルは単調な攻撃に終始

冴え渡ったベルギーの速攻 ブラジルは単調な攻撃に終始

何度も独力突破を試みたネイマールだが、PSGのチームメイトであるムニエに封殺された photo/Getty Images

この1点で、ベルギーは落ち着きを取り戻した。自陣でのプレイを余儀なくされたとはいえ、時折見せるカウンターによって、ブラジル守備陣を恐怖感と緊張感で縛り続けた。ダイナミックな展開で瞬く間に陣地を回復するだけでなく、決定的なシーンも創っていく。E・アザールは絶妙のボールキープでファウルを誘うとともに、最終ラインがひと呼吸できる時間まで提供していた。

そして31分、貴重な追加点が生まれた。ブラジルの左CKをフェライニがヘディングでクリア。このボールをルカクが40メートルほどドリブルで運び、デ・ブライネにパス。ベルギーの司令塔は、ブラジルDF陣の寄せが甘くなった瞬間を見逃さなかった。ペナルティエリアの少し外から右足を振り抜く。お得意のコースをデ・ブライネが外すはずがない。ブラジルGKアリソンのセーブも及ばず、強烈な一撃がサイドネットに突き刺さった。

前半を終えて0-2。予期せぬ折り返しである。しかし、後半開始からウィリアンをフィルミーノに代えてもブラジルのテンポは上がらず、らしくないミスも散見する。すぐに追いつこうとする気持ちが焦りを生み、俺が俺がと勝手なプレイが目立ちはじめた。いわゆる3人目の動きが少ないため、ベルギー守備陣も読みやすかったに違いない。76分、レナト・アウグストのヘディングで1点差に詰め寄ったが、残り時間も個の力に頼るばかりなのだから、同点、逆転ゴールは遠すぎる。最終スコアは1-2。前回大会のリベンジを誓っていたブラジルが、準々決勝で姿を消した。

[スコア]
ブラジル代表 1-2 ベルギー代表

[得点者]
ブラジル代表:R・アウグスト(76)

ベルギー代表:OG(13)、デ・ブライネ(31)


文/粕谷 秀樹
サッカージャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

theWORLD218号 2018年7月7日配信の記事より転載

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