[ロシアW杯#08]ワールドクラスの攻撃陣が躍動 クロアチアが手にした確かな手応え

ナイジェリアの拙攻に明確なプランは見えず

ナイジェリアの拙攻に明確なプランは見えず

盤石の試合運びで好スタートを切ったクロアチア photo/Getty Images

グループDのゲームプランは難しい。メッシ、アグエロ、イグアイン、ディ・マリアなど、強力な攻撃陣を擁するアルゼンチン戦は引き分け、敗れたとしても1~2点差を想定し、残り2試合を連勝するか、1 勝1分けで乗り切る。これが決勝トーナメント進出のための基本的な星勘定だ。アルゼンチンがアイスランドと引き分けても、ナイジェリアとクロアチアがプランを変更したとは思えない。しかし、ナイジェリアはあまりにも無策だった。パススピードが全体的に遅く、ゲームを創るはずのミケルはほぼ無抵抗のまま、いつの間にか試合から消えた。また、ボールの奪いどころも常に曖昧で、ラキティッチが最終ラインまで降りても、高めに位置してもプレスをかけない。ズルズル下がったり、ジョギングでラキティッチを追うふりをしたり……。

さらに、ロア監督の人選にも疑問符がつく。クロアチアのロヴレン、ヴィダがスピードとアジリティに欠けるCBであることを、事前の調査で把握していなかったのだろうか。両選手ともイガロのような重量級には滅法強いが、敏捷性豊かなFWを苦手としている。スピード豊かなムサが62分から、イヘアナチョも72分から出場したとはいえ、遅きに失した。32分、エテボのオウンゴールと記録された失点は、バログンがマンジュキッチのステップにあっさりと裏を取られたことに起因している。72分に与えたPKは、エコングがマンジュキッチを後ろから強く抱きしめてしまった。CBのイージーミスも含め、ナイジェリアはいいところなく敗れ去った。

完璧に仕事を遂行したクロアチアのタレントたち

完璧に仕事を遂行したクロアチアのタレントたち

攻守で絶大な貢献を果たしたラキティッチ photo/Getty Images

一方、クロアチアは上々のスタートを切った。ゲームプランや人選など、ナイジェリアに数多くのミスがあったとはいえ、完璧に近い内容で2-0の快勝を収めたのだから、チームのボルテージは上昇していくに違いない。マンジュキッチとクラマリッチは献身的な姿勢で攻守を支え、ヴルサリコは右サイドでアップダウンを繰り返した。ペリシッチは最後まで運動量が落ちず、モドリッチは相変わらず冷静だ。

そして、特筆すべきはラキティッチだ。的確な状況判断に基づくポジショニングから、数多くのチャンスを創っていた。ゴールには直結しなかったものの、ロング、ミドルともパスの精度はワールドクラス。彼の構成力がリズムをもたらし、攻撃を円滑に進めていたことだけは間違いない。
 
下馬評どおり、クロアチアは前線と中盤が優勝候補に匹敵するレベルであることを証明した。したがって、やはり課題はGKを含めた守備陣だろう。第2戦で激突するアルゼンチンのアタッカーは、ワールドクラスをズラリと揃えている。 両サイドバックがボールを追いこし、攻撃にアクセントをつけるケースもしばしばある。控えめすぎたナイジェリアとは比較にならない。いや、それならば思い切って撃ち合いを演じてみるか。攻撃は最大の防御なり──。クロアチアの攻撃力をもってすれば、アルゼンチンを仕留められるかもしれない。

[スコア]
クロアチア代表 2-0 ナイジェリア代表

[得点者]
クロアチア代表:OG(32)、モドリッチ(71、PK)


文/粕谷 秀樹
サッカージャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

theWORLD201号 2018年6月17日配信の記事より転載

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