[ロシアW杯#04]命運を左右する初戦でハットトリックなんて…… ロナウドはやはり“千両役者”

まさに一進一退 緊張感に包まれたビッグゲーム

まさに一進一退 緊張感に包まれたビッグゲーム

恐るべき千両役者ぶりを発揮したロナウド photo/Getty Images

グループリーグ最大のビッグゲームは、壮絶な打ち合いの末3-3のドロー決着。圧巻のハットトリックで“一人勝ち”したのは、ポルトガルのエース、クリスティアーノ・ロナウドだった。

ともに優勝候補の一角、国境を共有してイベリア半島を分け合う両者には特別な因縁があり、初戦の緊張感も手伝って静かな立ち上がりが予想された。ところが、その均衡はわずか3分で破られる。得意のシザースフェイントからの急加速でボックス内に進入したロナウドが、ナチョに倒されてPKを獲得。ゴール右隅に強気の弾丸を蹴り込み、試合を動かした。

スペインにとってはショッキングなオープニングだったが、たった1点で正気を失うような元世界王者ではなかった。10分に迎えた決定機を機に軽快なパスワークで主導権を握り、ジワジワと圧力をかけてポルトガルを自陣に押し込む。
もっとも、ポルトガルにとっては想定内の展開だった。16分と21分にはロナウドの全力疾走を合図とする高速カウンターからチャンスを作り、スペインに脅威を与えて陣地挽回に成功。ポゼッションにおける劣勢が、ゲームそのものの劣勢ではないことを主張した。

試合を一気に面白くしたのは、スペインによる「目には目を」の同点ゴールだ。24分、ブスケッツのロングパス1本でカウンターに転じると、最前線で待ち構えたジエゴ・コスタがたった一人で相手3人を突破。スーパーゴールにスタジアムが沸いた。

しかし、前半終了間際の44分、再び繰り出されたポルトガルのカウンターから、またしてもあの男が会心の一撃を見舞う。ゴール正面、ペナルティーエリアのわずか外から放たれたロナウドの左足弾丸シュートは、世界屈指の名手デ・ヘアの手を弾いてゴールネットに吸い込まれた。

恐るべしロナウド! スペインの勝利は幻に

恐るべしロナウド! スペインの勝利は幻に

ナチョの超絶ボレーが炸裂。PK献上を帳消しにする1点だった photo/Getty Images

迎えた後半もゴールを予感させる独特の雰囲気は消えず、再び流れを手繰り寄せたスペインが逆転に成功した。

まずは55分。ゴール正面で獲得したFKを“大外”から飛び込んだブスケッツが頭で折り返し、ジエゴ・コスタが押し込んで同点。さらに58分、左サイドからのクロスに飛び込んだナチョ・フェルナンデスの右足ボレーはポストを弾いてゴールに吸い込まれ、スペインが逆転に成功する。

以降の時間帯は、慎重にチャンスを探ろうとするジャブの応酬が続いた。ビハインドを負ったポルトガルは68分にジョアン・マリオ、69分にクアレスマを投入し、それまでの[4-4-2]からロナウドを頂点とする[4-2-3-1]に変更。80分にはアンドレ・シウバを投入し、再び2トップに戻すなど戦術的な揺さぶりをかけた。

一方、スペインは70分にチアゴ、77分にイアゴ・アスパスを送り込み、86分にはルーカス・バスケスを投入して体力低下による停滞回避を試みた。しかし、完全なる正解に見えたイエロ新監督の作戦は、再びロナウドに覆される。試合終了間際の88分、ロナウドのFKは壁を越えて急降下し、ゴール右隅に吸い込まれた。

試合終了の笛を耳にしたポルトガルの千両役者は、両拳を握って笑顔を見せた。命運を左右する初戦。スペインを相手に決めた圧巻のハットトリック。ロナウドにとっては、勝利に等しいドローだった。

[スコア]
ポルトガル代表 3-3 スペイン代表

[得点者]
ポルトガル代表:ロナウド(4、44、88)
スパイン代表:コスタ(24、55)、ナチョ(58)

文/細江克弥
『ワールドサッカーキング』『ワールドサッカーグラフィック』などの編集部を経て、2009年にフリーのサッカーライター/編集者として独立。現在も本 誌をはじめ、『Number』などさまざまな媒体に寄稿している。欧州からJリーグ、なでしこリーグまで、守備範囲は幅広い。

theWORLD200号 2018年6月16日配信の記事より転載

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