ついにレアルまで撃破 ”名将”ポチェッティーノがトッテナムで起こした改革

トッテナムを指揮するポチェッティーノ photo/Getty Images

欧州トップレベルのクラブに

1日に行われたチャンピオンズリーグ・グループステージ第4節でレアル・マドリードを撃破したトッテナム指揮官マウリシオ・ポチェッティーノは、「フィジカル、メンタルの両面で世界トップレベルのチームと戦えるようになった」と手応えを口にした。これまでトッテナムはイングランドの準強豪クラブとの立ち位置だったが、近年はプレミアリーグ制覇をも狙える実力をつけている。今回のレアル撃破も偶然ではない。何より大きいのはポチェッティーノの存在だ。ポチェッティーノといえば以前指揮していたサウサンプトンでも若手の育成が上手いと評判で、サウサンプトン時代にはアダム・ララーナ、トッテナムではデル・アリやハリー・ケインらを続々とイングランド代表に送り込んでいる。若手の育成も進めつつ、プレミアのタイトルを狙えるところまでチーム力を高めたその手腕は見事だ。

しかもポチェッティーノの凄さは育成力だけではない。戦術面でも名将と呼ぶにふさわしいレベルにある。何よりの変化は守れるチームになったことだ。ポチェッティーノが指揮官に就任したのは2014年夏だが、迎えた2014‐15シーズンはリーグ戦で53失点も喫してしまった。以前のトッテナムは守備が堅いチームとはいえず、不用意な守備から大量失点をしてしまう場面を記憶している人も多いのではないか。その欠点をポチェッティーノは徐々に改善し、2015-16シーズンは35失点、昨季は26失点にまで抑えることに成功した。失点数は半分に減っており、これが優勝争いに絡むためのベースになっている。3バック、4バックの使い分けや、以前まで軽いDFと指摘されていたヤン・ヴェルトンゲンを安定感あるセンターバックに成長させるなどポチェッティーノの功績は大きい。今やトッテナムはプレミアリーグでもトップクラスの守備力を誇るチームになっている。

そしてこの堅守をベースに、ポチェッティーノはさらなる柔軟性をチームに植え付けた。それは堅守速攻とポゼッションの使い分けだ。リーグ戦で優勝を狙うにはマンチェスターの両クラブやチェルシーなど格上といえるクラブ相手にも粘り強く戦い、引いて守ってくる格下からは強引にでもゴールをこじ開けて勝ち点3を奪っていかなければならない。そのためのスタイルをポチェッティーノはチームに複数植え付けており、格下相手にはデル・アリ、クリスティアン・エリクセン、ケインを軸にボールを支配した攻撃的なフットボールを展開している。一方で最近はソン・フンミンとケインを前線に並べて速攻を狙うパターンも多く、このやり方は4-1で快勝した10月22日のリヴァプール戦や3-1で勝利したチャンピオンズリーグのドルトムント戦で威力を発揮している。堅い守備をベースに失点を抑え、攻撃的に出てくるドルトムントやリヴァプールのようなチームを破壊するだけの速攻をオプションとして身につけているのだ。
また、リヴァプール戦では右サイドでプレイするFWモハメド・サラーを抑えるべく、右サイドバックを本職とする身体能力の高いセルジュ・オーリエを左サイドに回すなど対戦相手に合わせてやり方を変える柔軟性もある。1‐1で引き分けたアウェイでのレアル戦では、賛否両論あったがケインとフェルナンド・ジョレンテの2トップを選択。レアルは前線の選手たちの戻りが甘くなった際にセンターバックがサイドに釣り出されるケースが多く、トッテナムが先制した場面でもセルヒオ・ラモスが右サイドに引っ張られていた。それによってペナルティエリア内ではラファエル・ヴァランとケイン、アクラフ・ハキミとジョレンテの2対2の状況が出来上がっており、最終的にはオーリエのクロスがヴァランに当たる格好でゴールが生まれている。

ポチェッティーノ体制は今季で3年目だが、チームは確実に成長している。若手の育成、守備の改善、オプションの増加とスムーズにチームは強化されており、これだけの仕事をこなしているポチェッティーノは紛れもなく名将の1人と言えるはずだ。

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