[五輪現地レポ 2]トゥーロンから続く決定力不足 南野「勝ちきれなかったのは最後の質」

守備・攻撃の両輪が噛み合わない日本

リオ五輪、第2戦コロンビア戦——。

後半25分、藤春廣輝のオウンゴ-ルで0-2になった。2点目を絶対に失いたくない状況の中、交通事故のようなゴ-ルが決まったのだ。サッカ-の神様は、初戦のナイジェリア相手に5失点し、守備を建て直してきた日本に一縷の希望さえも与えずにリオ五輪を早々に終わらそうとしているとしか思えない失点だった。

スタジアムは、リ-ドしているコロンビアより負けている日本に対しての声援が多かった。「もう終わった」という空気が流れ始め、いわゆる半官贔屓みたいなものだった。そして、それからドラマが始まった。
「2点目をコロンビアが奪ってから急に足が止まった」(南野拓実)

その隙を見逃さなかったのが、失点のわずか3分前にピッチに入ってきた南野拓実と大島僚太だった。

「ベンチから見てて、けっこうディフェンスラインの前のところにスペ-スがあったのが分かっていたんで、ボ-ルを奪った瞬間、そこをうまく使えばチャンスになると思っていた」

南野は、あえてポジショニングを外ではなく中に取り、浅野拓磨との距離を縮め、ワンツ-で打開できる距離感でプレイした。後半22分、大島からの縦パスを南野が受けて傍にいた浅野に出した。浅野は、そのままフリ-でゴ-ルを決めて1点を返した。

「自分で打つのもあったんですけど、相手のDFがいたんで、決めてくれるだろうと思って(浅野に)出しました。この1点で流れが変わったし、前の試合でも追い付けるム-ドをいうのを感じていたんで、コロンビア戦も1点さえ取れれば同点までにいける粘り強さがあるというのが分かっていた。まぁ同点に追い付いて一気にいきたかったですけど、相手も3点目は取らせないようにしていたし、その中でも僕らは取れるチャンスがあった。今日勝ちきれなかったのは、その最後のところの質じゃないかなと思います」

南野は厳しい表情で、そう言った。

思い浮かぶのは「決定力不足」という言葉だ。今年5月、チ-ムはフランスのトゥ-ロン国際大会に出場した。パラグアイ、ポルトガル、ギニア、イングランドと戦い、1勝3敗に終わり、そのうち2試合が1-0での完封負けだった。イングランドが7点取ったギニアに2点しか取れず、南野は「決定力が足りないと思う。ラストパスの質や決め切る力とか、もうちょっと高めていかないと本大会では難しくなる」と、チャンスを作っても決めきれないチ-ムを危惧していたのだ。
そして、このコロンビア戦である。

初戦のナイジェリア戦で5失点し、どうしても守備の修正に目がいきがちだが、基本的にミス絡みの失点がほとんどだったので、集中して意識を高く持てば、ミスは最低限に減らせる。あとは球際に厳しくいくことを徹底していた。実際、4枚というイエロ-の数の多さが物語るように相手に厳しくいけていたのだ。

守備の健闘が目立った分、物足りなかったのは攻撃陣だった。前半11分の矢島慎也のシュ-ト、34分の藤春のヘディングシュ-ト、後半2分の浅野のシュ-ト、同4分の矢島のシュ-トなど決定機が多々あったが決めきれなかったのだ。そうした報いが1失点目になり、アンラッキ-な2失点目へと繋がっていった。「耐えて勝つ」というプランはここでも頓挫し、ハデな打ち合いに転じるしかなくなった。チ-ムは、自分たちの勝ちスタイルではなく、リスクを背負って前に攻めなくてはならなくなった。

それでも必死に攻めて、後半29分までに2点を取り返して同点に追い付いた。スタンドのファンは「ジャポン」と声援を送り、大合唱になった。マナウスのサッカ-好きを味方にする攻撃を見せ、コロンビアを追い込んだ。しかし、勝てなかった。

決定的なチャンスが何度もあったのに点が取れない。トゥ-ロンから解消されていない決定力不足を大事な本大会の2戦目に露呈してしまったのだ。
「みんな、バチバチ戦ってくれたし、チャンスも作ってくれた。その中で僕自身、決め切ることができなかったんで、チ-ムのみんなに迷惑をかけたなと思う。それが日本の課題であり、僕自身の課題でもある。そこはもうひた向きにやっていくしかない」

ロスタイムで最後の決定機を逸した浅野拓磨は、そう悔しさを噛み締めた。

守備が少し整ってきたと思いきや、次は攻撃陣の決定力不足が勝ち点3を勝ち点1にしてしまった。

勝てた試合だったのだ。

だが、ナイジェリア戦で守備、コロンビア戦で攻撃の決定力の課題が出て、スウェ-デン戦ではそのふたつを修正して臨むことができる。最終予選で見せた攻守がしっかり噛み合った試合を実現できれば、グル-プリ-グ突破のミラクルを起こすことも可能だ。

文/佐藤 俊

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