プレミアリーグで3戦を終え、2勝1分のアーセナル。悪い滑り出しではないが、前節ホームでフラム相手に勝点を取りこぼしたのは少々痛かった。
気になるのは、ミケル・アルテタ監督が今季から採用するシステムがあまりスムーズに機能しているように見えないことだ。右サイドバックにトーマス・パルティを置き、そのトーマスが攻撃時はアンカーに変化。[3-1-6]のような攻撃的なシフトになるのだが、フラム戦でも相手の強固なブロックを崩すのに苦労していた。
面白いのは、後半にオレクサンドル・ジンチェンコを投入し昨季の形に戻した途端に、パスが回りはじめたことだ。カイ・ハフェルツの代わりに投入されたファビオ・ビエイラもスムーズに連携しており、右サイドではベン・ホワイトがより効果的な攻撃サポートを見せた。一時は逆転に成功し、この形で戦ったほうが強いのではないかと思ったファンは多かったはずだ。
英『Daily Mail』は、大手クラブに務めるアナリストのコメントを紹介し、アルテタのジレンマを分析している。
「アーセナルがリーグで優勝したり、(マンチェスター・)シティに追いつくためには、昨シーズンより良くなっている必要があり、彼はそれを調整する必要がある」
「コーチもチームも、同じことをするわけにはいかない。土曜日に何かを試みれば、日曜日までに別のチームがそれを分析する」
「彼らはそれを特定し、対抗して弱点を突く計画を立てることができるだろう。それがトップコーチが見せる違いだ。ペップはイノベーションを起こし、わずかな調整を加える能力において、明らかに秀でている。(他の)クラブは(シティの)動きを止めるために一週間取り組んでいるかもしれないが、その間に彼(ペップ)はわずかにそれを変えるんだ。だから、選手たちはこうなる。『え? 僕らはこれを止めるために取り組んできたのに、彼らはそれをやっていない! 何か他のことをしている!』とね。それが、一流の監督と、ちょっと派手なだけの監督とを分けるものだ」
現代サッカーでは分析と対策のサイクルが恐ろしく早くなっており、いかに上手くいったシステムであろうと、同じ戦い方を続けていては取り残されてしまう。ペップは天才的な才覚でチームに微調整を加え機能させてしまうが、かつてペップに師事したアルテタも、懸命にそのレベルに近づこうとしているのだろう。
マンチェスター・ユナイテッド戦を前にトーマスは負傷との報もあり、ジンチェンコを中盤に上げた昨季の戦い方に戻る可能性も高いが、アルテタは何かアイデアを持っているだろうか。