メッシとC・ロナウドで分かれたベテラン力の明暗 “ドリブル数半減”でも落ちなかった35歳メッシの影響力

フル稼働でチームを優勝へ導いたメッシ photo/Getty Images

ベテランになってからどうプレイスタイルを変えるのか

アルゼンチン代表FWリオネル・メッシ、ポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウドにとって最後になるかもしれないと言われたFIFAワールドカップ・カタール大会。両者の結果は対照的なものとなった。

メッシは35歳、ロナウドは37歳で今大会を迎えており、両者とも全盛期は過ぎているのだろう。スピードや体のキレは20代の頃と同じというわけにいかない。

両者とも年齢に合わせてプレイスタイルを少しずつ変化させてきたが、今回それがフィットしたのはメッシの方だ。ロナウドがゴール前に君臨するゴールマシーンとしてゴールにこだわり続けたのに対し、メッシは中盤へ顔を出してチャンスメイク役として貢献。
過去2大会と比較すると、メッシは自慢だったドリブルの割合がかなり少なくなっている。今大会は1試合平均4.6回のドリブルを仕掛け、成功数は2.1回となっているが、4年前のロシア大会は1試合平均8回仕掛けて5.8回の成功、2014年のブラジル大会は9.1回仕掛けて5.6回の成功数を記録している。今大会も準決勝のクロアチア戦で注目の若手DFヨシュコ・グヴァルディオルを振り切る見事なドリブルがあったが、それでも全体的に割合は減っている。さすがのメッシも前を向いた状態から2人、3人とごぼう抜きにするドリブルは難しくなっているのだろう。

しかし、キックコントロールや足下の技術は落ちていない。今大会もメッシは大会最多タイとなる692分間プレイし、18回のチャンスメイクを記録。僅かに及ばないが、準優勝だった2014年大会のチャンスメイク数21回とほとんど変わらない数字を残せている。メッシを経由することで攻撃に創造性が生まれていたのは確かで、ベテランらしい影響力を発揮してくれていた。

一方のロナウドは苦戦した。今でもゴール前で良いボールをもらえれば得点を決める力はあるはずだが、今季はどこかスピードに乗り切れていないシーンが目につく。所属していたマンチェスター・ユナイテッドで出番が限られていたことも影響しているのか、それとも年齢による衰えか。センターフォワードが一瞬のスピードを失うと厳しい。

ロナウドの場合は今大会5試合に出場し、パス本数が86本とかなり少ない。ドリブル成功数、チャンスメイク数ともにゼロとなっており、得点部分でしか貢献できないとなればチームとしては起用しづらいか。

メッシは今のスタイルなら4年後のFIFAワールドカップも目指せるかもしれない。しかし4年後に40代へ突入しているロナウドは、このままスピードが戻らないようでは苦しい。ベテランを迎えてからどうチームに貢献するかはサッカー選手の課題の1つだが、今回はメッシの方が若手も増えたアルゼンチン代表に上手くフィットしていた。ロナウドもレジェンドなのは間違いないが、今回ばかりは悔しい結果となってしまった(データは『WhoScored』より)。

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