6年前に起きた優勝オッズ5000倍の“ミラクル”はまた起きる? 岡崎慎司が体験したレスターのサクセスストーリー

15-16シーズンにプレミアリーグを制したレスター・シティ photo/Getty images

様々なことが重なって起きた奇跡

わずか1ポイント差で推移するプレミアリーグの優勝争い。マンチェスター・シティが83ポイントに対し、リヴァプールは82ポイント。リーグ戦での2度の直接対決はどちらも2-2のドローとなっており、決着はつかなかった。リーグ戦は互いに4試合残っており、勝ち点を落としたほうがリーグタイトルから手を放すことになる。

このような激闘を見せる今季のプレミアだが、約6年前の2016年5月2日にレスター・シティがリーグ優勝を成し遂げた。のちに「ミラクル・レスター」として語り継がれる伝説であり、そこからレスターが一気にクラブとしての格を上げている。

優勝した15-16シーズン以前はイングランドの実質2部であるチャンピオンシップで長くプレイしていたレスター。優勝の前のシーズンに昇格し、14位でフィニッシュすると、翌シーズンは開幕から6戦無敗を記録。7試合目で敗れるも、エースであるジェイミー・バーディが11試合連続で得点を記録する離れ業をやってのけ、10戦無敗も記録し好調を維持していく。そのシーズンはいわゆるBIG6と呼ばれるプレミアの強豪が相次いで不調だった。シティは4位、リヴァプールに至ってはこのシーズン8位でフィニッシュしている。今では考えられない順位だ。

当時のレスターを支えたのは、名将クラウディオ・ラニエリがチームに植え付けた堅守速攻の攻撃の形と、下位クラブであったレスターにいい意味で見合っていなかった実力者の存在である。ステップアップを果たしたエンゴロ・カンテ、リヤド・マフレズがその最たる例だ。カンテは無尽蔵のスタミナと攻撃にも関与できる万能性、マフレズはプレミアでの屈指のドリブルと得点力を見せ、それぞれチェルシーとシティへステップアップした。

今でもチームに残るバーディとカスパー・シュマイケル、マーク・オルブライトンも存在感を放っていた。バーディは誰も止められないスピードとボックス内での強さを披露し、シュマイケルはセービングとビルドアップ能力の高さが光った。オルブライトンはカンテに並ぶほどのスタミナでサイドを縦横無尽に駆け回り、クロスから攻撃を活性化している。あの奇跡のチームにいた岡崎慎司の活躍も忘れてはならない。当時のレスターでは[4-4-2]が基本であり、岡崎はバーディの絶対的な相方だった。優勝したシーズンでも5ゴールと得点面での活躍は少なかったが、守備にポストプレイにとにかく走る選手で、チームはその後バーディの新しい相方を探したが、岡崎以上にフィットする選手は見つからなかった。

英『THE SPORTSMAN』でもレスターの優勝を振り返っており、「おとぎ話が現実になった日」として特集を組んでいる。この優勝で話題となったのが、レスターに賭けられていたオッズだ。基本的にはBIG6の中から優勝クラブが出ることがほとんどだが、このシーズンは超大穴のレスターが優勝し、そのオッズは何と5000倍だった。そのため、優勝前からブックメーカーが赤字の心配をするほどだった。

歴史に名を残した「ミラクル・レスター」だが、同じようなことが起こる可能性はあるのだろうか。少なくともシティとリヴァプールのこの2強時代では厳しいように思える。莫大な放映権料に流入もあって中堅クラブであれば、1シーズンに100億円を移籍市場に投資してもおかしくない時代だが、それは上位クラブも同じであり、彼らは選手よりも監督を重視するようになった。そこから監督とクラブのフロントが一体となって選手の獲得を行い、チーム戦術にあった正しいお金の使い方をしている。もちろん例外もあるが、シーズンを重ねるごとに補強が上手くなっている。そうなればレスターが優勝したような状況を作り出すのは難しく、レスターが起こした奇跡は当分お預けとなるか。

「ミラクル・レスター」の躍進もあって、今ではBIG6の牙城を崩せるクラブにまで成長したレスター。今季は主力にけが人が相次いだこともあって苦戦気味だが、当時を知るシュマイケルやバーディはまだ現役で残っており、万全の状態で迎えられる来季が楽しみだ。

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