クリスティアーノ・ロナウドを獲得したマンチェスター・ユナイテッドは、間違いなく魅力を増している。魅力を増しているが、それは成績が保証されたものではなく、「成否」のどちらに転ぶかわからない魅力で、ある意味で毎試合ドキドキさせてくれる。
もっとも難しいのが、魅力アップの要因であるロナウドの起用方法である。加入前のオーレ・グンナー・スールシャール監督は、前線にメイソン・グリーンウッド、あるいはアントニー・マルシャルを起用していた。エディンソン・カバーニはケガで出遅れ、マーカス・ラッシュフォードは離脱中というチーム事情があった。
ロナウドが加わった以降、スールシャール監督はロナウドが先発するときは必ず前線で起用している。トップ下にブルーノ・フェルナンデスを配置し、サイドにグリーンウッド、ポール・ポグバ、ジェイドン・サンチョなどを起用する[4-2-3-1]が基本となっている。
非常に贅沢な悩みだが、カバーニが復帰したことでスールシャール監督には豊富な選択肢が存在する。マンUのサポーターも、各々が自分の好みの組み合わせを考えるという楽しい作業を行っているのではないだろうか。一番のポイントはロナウドとカバーニが共存できるかどうかで、これに関して肝心の指揮官は表向き楽観的である。
「良いパートナーシップを築けるだろう。チームによっては、より深い位置に下がって守り、あまりスペースを与えてくれないこともあるが、そのようなシナリオになったときには、彼らのような2人をゴールの周りに配置したい」
これは、クラブの公式サイトに掲載されているスールシャール監督の共存についてのコメントである。現状、両者が同じタイミングでピッチに立ったのは数試合の後半途中からで、数分しかない。左サイドアタッカーに代わってカバーニが入り、同サイドでのプレイを基本としつつ、中央に絞って後方の選手が攻撃参加するスペースを空けるという感じである。チャンピオンズリーグのビジャレアル戦ではこれがうまくいき、カバーニが外からブルーノ・フェルナンデスにパスを出し、そのまま中央へ。空いたスペースに攻撃参加したフレッジにパスが出され、フレッジがダイレクトで折り返した流れからロナウドの決勝点が生まれている。
得点が必要な状況、守備の負担が少ない状況であれば、どちらかが前線を務め、どちらかがサイドでプレイすることは可能だ。ただ、スールシャール監督が語るとおり、そのときは両名ともにできるだけゴールに近いところでプレイするのが理想で、ビジャレアル戦でのゴールのように後方からの押し上げが必須となる。
とはいえ、これはスクランブルの要素が強い。このビジャレアル戦から中二日で迎えた第7節エヴァートン戦では、ロナウドを休ませてカバーニを前線で先発起用している。そして、後半なかばにロナウドと交代している。実際には、この選択が多くなるだろう。両名を最初から起用するには2トップがベストだが、立て続けに試合があるなか新しい布陣をスールシャール監督がトレーニングを通じて構築するとは考えにくい。
ロナウドとブルーノ・フェルナンデスの連携についても、試合を重ねるなかすり合わせていくしかない。ポルトガル代表ではあまりかみ合っていないが、長く一緒にプレイすることで状況が変化してくるかもしれない。
まわりを生かす能力に長けたブルーノ・フェルナンデスであれば、ロナウドを最大限に生かし、自分も生きるスタイルをみつけ出す可能性がある。
いずれにせよ、あまり複雑なことはせず、各選手が高い身体能力を生かして真っすぐにゴールを目指したほうがいい。最終兵器を補強した今シーズンのマンUは、こうした戦いを貫いたほうが優勝に近づけるポテンシャルがある。スールシャール監督のスタイルに、小細工は似合わない。