タレント揃いだからこその悩みか? 準優勝イングランドに足りないモノ

臨機応変さが勝負を分けた 決勝で出た指揮官の“経験の差”

臨機応変さが勝負を分けた 決勝で出た指揮官の“経験の差”

PKを失敗してしまったサカを抱き寄せるサウスゲイト監督。チームを決勝まで導くも、その采配には疑問の声も上がっている photo/Getty Images

 イングランドは、大会を大いに盛り上げたチームで、準優勝は立派な結果だ。ただ、欲しかった初優勝のトロフィーに届かなかった理由を挙げるなら、ガレス・サウスゲイト監督と言わなければいけない。EURO初優勝は、十分に可能な目標だった。

 世界最高峰の選手が揃うプレミアリーグ。ほとんどが国内クラブ所属の選手だったイングランドは、当然タレントぞろいだ。セリエAのメンバーが中心のイタリアよりも戦力的には充実していた。それでも、やはり何かが足りなかったということになる。

 試合に向けた準備はよかった。見事なアプローチで先制し、核であるジョルジーニョを封じ、イタリアにやりたいことをさせなかった。ただ、ロベルト・マンチーニ監督が対策を講じてからは、すべてが後手に。イタリアがチーロ・インモービレを下げてロレンツォ・インシーニェを中央に置き、ゼロトップ気味になったとき、明らかに混乱が生じた。その後も交代のたびに揺さぶってくるイタリアに苦しんでいる。

 そういった意味で、万全の準備はできたとしても、臨機応変さに欠けたところはある。たとえば、ジャック・グリーリッシュの起用法。先発はグループステージの1度のみ。決勝トーナメントは全て途中出場。69分の投入が2回と、99分の投入が1回。69分の投入のうち1回は延長戦にもつれこんだデンマーク戦ではあるが、いずれも残り20分頃からの出場だ。「グリーリッシュはスーパーサブとして20分間起用する」というのが、サウスゲイト監督が出した勝つための最善策で、そこは間違いというわけではない。ただ、ゲームプランどおりにいかなくなった場合、事前に決めた自分のルールを脇に置くことも必要だ。その点で、百戦錬磨のマンチーニ監督とは差があったように思う。

延長戦で見たかった大胆な賭け サウスゲイトの進化に期待

延長戦で見たかった大胆な賭け サウスゲイトの進化に期待

グリーリッシュのスーパーサブ起用は間違いではなかったものの、もう少し臨機応変に使うこともできたか photo/Getty Images

 そして、大きな論争になっているPKキッカー選び。サウスゲイト監督のチョイスは、結果として間違いだった。若手にその重責を負わせるのは酷だという意見もある。

 だが、こちらは時の運もある。その選択をして優勝を逃したときは、自身に相応の批判がかえってくることもわかっていたはず。そのうえで敢えて下した困難な決断は、失敗だったとしても、敬意を持ちたい。

 それでも、どうせ勝負の賭けをするなら、PK戦ではなく、延長戦で勝負を決めるという大胆な賭けがみたかった。的中する可能性がより高かったのは、そちらの賭けかもしれない。

 イングランドはイタリアに比べて選手層が充実しており、切り札になり得る選手はいた。経験値、GKの質から考えると、PK戦はイタリアに分があることは明らか。ならば、やはり延長戦で決めてしまうという意思が欲しかった。特に延長後半のサウスゲイト監督は、PK戦に向けた準備ばかりを考えていた。ピッチに入れるべきは、PKキッカーではなく、イタリアのベテランCB陣を破壊するアタッカーだったのではないか。

 それでも、サウスゲイト監督はこの経験を糧に進化していくはずだ。2013年にU-21イングランド代表監督に就任した指揮官は、16年にA代表監督になった。クラブチームでの指揮は2006年から09年までミドルズブラを率いたのみ。場数が圧倒的に不足している。そのなかでイングランドをEURO決勝まで導いたのは確か。次の舞台では、さらに強くなったイングランドがみられるかもしれない。

文/伊藤 敬佑

※電子マガジンtheWORLD259号、7月15日配信の記事より転載

記事一覧(新着順)

最新号を無料配信中!
電子マガジン「ザ・ワールド」
No.259 EURO2020大会レビュー

雑誌の詳細を見る

注目キーワード

CATEGORY:特集

注目タグ一覧

人気記事ランキング

LIFESTYLE

INFORMATION

記事アーカイブ