速攻特化型からオールマイティなチームへ FC東京が湘南戦で見せた“攻守のバリエーション”

適宜自陣の深いところへ降り、自軍のビルドアップに貢献していたアダイウトン(写真は6月27日の大分戦)photo/Getty Images

ブラジル人トリオがビルドアップを牽引 

明治安田生命J1リーグの第22節が11日に行われ、FC東京が湘南ベルマーレに1-0で勝利した。

[4-2-3-1]の布陣でこの試合に臨んだFC東京は、キックオフ直後から森重真人と渡辺剛の両センターバックが、相手の2トップのプレッシングを受ける展開に。センターバックからボランチへのパスコースを消され、パスをサイドに誘導させられる場面があったものの、1トップのディエゴ・オリヴェイラがセンターサークル付近、アダイウトンと東慶悟の両サイドハーフやトップ下のレアンドロが自陣の深いところへ適宜降り、最終ラインからのビルドアップをサポート。特にブラジル人トリオが前線に張り付きすぎなかったことで中盤に多くのパスコースが生まれ、これによりボール支配率でベルマーレを上回り(58%、データサイト『SofaScore』より)、試合の主導権を握ることに成功した。

この日のFC東京の勝因は、ベルマーレのハイプレスをラフなロングボールでやり過ごそうとしたり、最前線への一か八かの縦パスで攻め急ごうとしなかったこと。ミドルゾーンやディフェンシブサードに降りてくるブラジル人トリオにボールを預けながら相手のプレスを丹念に剥がし、徐々にパスワークのテンポを上げていく遅攻は見事だった。
また、守備面においてもハイプレスと自陣への撤退を状況に応じて使い分け、試合をコントロール。ハイプレスの回数はそれほど多くなく、ベルマーレが得意とする縦に速い攻撃を、自陣への撤退で封じるという戦法を基本的に採っていたが、82分すぎに途中出場のFW田川亨介が相手GK富居大樹にプレスをかけ、パスを相手DF石原広教の方面へと誘導。田川とD・オリヴェイラが石原を挟み撃ちにしてパスミスを誘うと、このボール奪取から始まったショートカウンターが途中出場のFW永井謙佑の決勝ゴールに繋がった。

永井や田川、ブラジル人アタッカーのスピードを活かしたカウンターを主な攻め手とし、これに特化しているふしがあった昨年までのFC東京だが、前節の大分トリニータ戦や今節では洗練された遅攻を披露。直近のリーグ戦5試合連続で無失点と、守備の安定感も増してきている。遅攻と速攻、ハイプレスとリトリートを使い分けるオールマイティな戦い方を今後も継続できれば、更なる上位進出も期待できるだろう。

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