[MIXゾーン]“縦の速さ”だけでは勝てない難しさ 柏に感じた緩急の必要性

ビルドアップの開始地点としても機能する柏の古賀 photo/Getty Images

古賀「課題として受け止めるべき点」

8日に行われた明治安田生命J1リーグ第13節にて、アビスパ福岡と対戦した柏レイソル。前節ベガルタ仙台戦では0-1で連勝がストップしてしまっただけに、この試合ではどうしても勝ち点3が欲しいところだった。しかし、結果は再びの0-1で敗戦。嫌な流れを断ち切ることは叶わず、柏はリーグ戦2連敗を喫することとなった。

決して悪い出来ではなかった。この試合は、前半から“縦の速さ”という互いの良さが出たゲームだったと言っていいだろう。だが、敗戦という結果は重く受け止めなければならない。「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」。江戸時代後期の大名・松浦静山が遺した格言だが、これはスポーツの世界にも通ずるところがある。柏が今後の戦いで勢いに乗っていくためにも、このような“あと一歩及ばなかったゲーム”から学んでいくべきことは多いだろう。

では、両者ともに持ち味を出しながらも、柏が福岡に及ばなかった要因は何か。強いて挙げるならば、縦への意識が強すぎたことかもしれない。
この試合は両チームとも良い守備からの切り替えが目立った試合となったが、柏の選手たちは縦に急ぎすぎていた印象も残った。特に先制点を許してからの後半は、早めに追いつきたい一心からか福岡の選手に縦パスをカットされるシーンも散見。楔を入れようとしすぎて、攻撃が少し単調になっていた感は否めない。“縦へ縦へ”という意識は決して悪いものではないが、あまりに固執すると相手に読まれやすくなる。そういった勝負の難しさが出てしまったゲームだったと言っていい。守備陣の一角としてこの試合にフル出場したDF古賀太陽も試合後、これについて次のように語る。

「チームとしては、ビルドアップのところで自分たちのWBとシャドーの選手をあまり引かせずに、ライン間にボールを入れていこうという話でゲームに入りました。ですが、なかなかそこにボールを入れることができなかったのかなと思います。加えて、最終ラインとの距離感が遠くなったぶん、うまく自分たちのボールの動かし方ができませんでした。そこをゲーム中に修正していかなければならなかったかなと思いますね」

「失点してからは、時間が残っているにもかかわらず簡単にボールを手放してしまうシーンがかなり見受けられたと思います。そこは全体としてもう少しボールを動かす意識を持っていかないと、今後も同じような試合展開を繰り返すことになると感じました。僕からも全体に呼びかけていきたい部分ですし、もう一度自分たちの課題として受け止めるべき点だと思います。(失点後のゲームの進め方については)正直に言うと、そこがバラバラだったのかなと。ただ縦に突っ込むだけではなくて、横にボールを動かしながら、相手を動かしながらというのはやっていく必要があったと考えています」

縦の速さを前面に出しつつ調子を取り戻してきたのは事実だが、それだけに頼りきりでもいけないというのは古賀も感じている様子。現時点であれもこれも求めるのは酷な話かもしれないが、それだけ手札を増やしておかなければJ1の舞台で勝ち続けるのは難しい。チームの根幹を担う“縦の速さ”というコンセプトは大事だが、今後の柏には状況に応じてリズムを変える柔軟さが必要になってくるか。

もちろん、武器を増やすというのは簡単な話ではない。しかし、こういった部分が気になるようになってきたのは、チームが成長している証とも言えるだろう。堅守速攻という土台はできた。あとはいかに相手の出方に応じたプラスワンの武器を会得できるか。柏がこの敗戦から得た“気づき”は決して少なくないはずだ。

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