「開始早々に失点していたら今日の結果はなかったと思います」。試合後の会見にて、開口一番こんなコメントを発したのはアビスパ福岡の長谷部茂利監督だ。8日に行われた明治安田生命J1リーグ第13節にて柏レイソル相手に1-0の勝利を挙げた福岡だが、その白星はギリギリで掴んだものだった。
しかし、そんなシーソーゲームをモノにできたのは、紛れもなく福岡の粘り強さが光ったからだ。“エレベータークラブ”と揶揄される時期もあったが、いよいよ福岡に躍進の予感。この柏戦を見て、そんな気持ちを抱いたファンも少なくなかっただろう。
この試合を通して福岡の選手たち見ることができたのは、対応力の高さだ。前半から両チーム共に自分たちの強みを出す展開となったが、ホームチームは常に冷静かつアグレッシブ。前半からスピーディな試合となったが、一つひとつのプレイは非常に丁寧だったと言っていい。48分に1点を先制したあとから柏がシステムを変更してきても、福岡の選手たちはうまくコミュニケーションを取り合いながら対応。結果、クリーンシートを達成した上での3ポイント奪取に成功した。
互いに守備からリズムを作り、縦に速いサッカーを貫き通した。柏も決して悪い出来というわけではない。しかし、そんな強度の高い“ガチンコ勝負”でも福岡が最高の結果を得られたのは、間違いなく選手たちが共通のビジョンを持ってプレイすることができていたからだろう。中盤の位置から試合をコントロールしたMF前寛之も、試合後には次のように語る。
「お互いがボールに対する激しさを求めているチームなので、そこの強度はすごく大事なポイントになると話していました。先制点がどっちに入るかというところで、押し込まれながらもムラくん(村上)やディフェンスラインがいい守備でゼロに防いでくれました。そういった流れで良い時間帯に志知くんが点を取ってくれたので、ゲームの進め方としては90分を通して危なげなく終えることができたと思います」
「試合前にどういうサッカーをしていこうという話はありました。しかし、そのなかで相手の立ち位置や勢い、特長、調子の良さというのはやってみないとわからない。ですので、エラーがあった時にどう対処していくのかというのは常に大事にしています。それはボランチ、センターバックのところが一番大事。ですので、(試合の中では)奈良くんやグローリ、草民くんとはよく話しながら色々な部分を修正しています」
激しい展開となることは事前に予想できたが、試合が始まってみないとわからない部分もある。相手がどう出てくるかを把握したうえで、それに対応するためのアイデアを即時共有&実行できる土台が今の福岡にはできていると言ってよさそうだ。基本的なことかもしれないが、短い時間で簡潔に意思疎通を図れるのは、普段からそういう意識を持って試合に臨めている証拠。事前準備と対応力の高さこそ、福岡が4連勝という結果を得ることができた大きな要因か。
基本的な戦い方に加え、細かな修正を繰り返して柏の攻撃を跳ね返し続けた福岡。チームとしての完成度は試合を重ねるごとに確実に高まっている。この柏戦での勝利によって6位に浮上したが、まだまだ彼らのサッカーは進化し続ける余力を残している印象も強い。昇格組と侮ることなかれ。今年のアビスパは一味違う。