オルンガでも、江坂でもない 柏の“心臓”はクラブ一筋24年の偉大なる主将

36歳を迎えた今季も柏を主将として力強く牽引した大谷 photo/Getty Images

随所に気が利くバンディエラ

2020年シーズン、明治安田生命J1リーグを7位で終えた柏レイソル。順位としてはまずまずだが、今季同クラブが披露したサッカーは非常に魅力的なものだった。知将ネルシーニョ監督に率いられ、リアリスティックなサッカーでしぶとく勝ち点をもぎ取る。さすがは百戦錬磨の老将に鍛え上げられたチーム。2020年の柏にそんな印象を受けたファンも多いはずだ。

そんな柏の“心臓”といえば、多くの人は誰を想像するだろうか。おそらく、今季のJリーグMVPと得点王に輝いたFWオルンガ、さらにはその相棒として多くのチャンスを創出したMF江坂任を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。彼らはまさしく今季の柏を象徴する選手たち。そうなるのも無理はない。しかし、“心臓”という観点からすれば、柏にはまさにその言葉が似合う選手がいる。アカデミー時代からクラブ一筋24年(プロ18年)のMF大谷秀和だ。

今年11月に36歳を迎えた大谷。さすがにシーズンを通してフル稼働というのは少し厳しくなってきたが、一度ピッチに立てばその存在感は絶大だ。常に冷静に戦況を見極め、いてほしいところに必ずいる。そんな印象は強く、長年の経験に裏打ちされたプレイには全くの無駄がない。優れた危機管理や味方のパスルートを確保する動きなど、とにかくピッチ上で攻守に気の利く同選手。彼がいるかいないかで、柏のクオリティは大きく変わると言っていい。
そして、それはデータにも表れている。実は今季の柏、大谷の出場時と不在時でその勝率には10%以上の開きがある。同選手の出場した試合において、彼らの勝率は47.8%(11勝4分8敗)あったのだが、欠場時には36.4%(4勝3分4敗)まで下落することとなっている。

柏における大谷の重要性を表すデータはほかにも。今季はリーグ戦90分あたりの失点ペースが、同選手の出場時に0.96点(18失点、1685分)だった同クラブ。しかし、主将の不在時を見てみると、その数字は1.83点(28失点、1375分)にまで上昇する。これを見るに、今季チームトップのクリア数(31回)やパス成功率(87.1%)を記録した彼がいるかいないかで、柏のパフォーマンスは大きく変わった言えるだろう。決して“老兵”と侮ることなかれ。随所で目端の利くベテランMFは、間違いなく今季もチームの“心臓”として大いに機能していた。

36歳を迎えても、ピッチに立てば最高級のパフォーマンスを披露し続ける“偉大なる主将”。大谷に代わる選手がなかなか出てこないのが柏の悩みとも言えるが、彼はそう簡単に後継者が見つかるようなレベルの選手でもないだろう。むしろ、2006年に元日本代表MF明神智和の退団後、すんなりと大谷がその後を継いだ流れが完璧すぎたとでも言うべきか。長きにわたって柏の中盤を支えているバンディエラ。大谷秀和の活躍は今後も見逃せない。

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