新たな“川崎の心臓”となれる男 守田英正は中盤の底からゲームを変える

今季J1制覇を成し遂げた川崎において、守田は必要不可欠な存在だった photo/Getty Images

川崎のパスワークを支えたアンカー

今季J1制覇で独走優勝を達成した川崎フロンターレにおいて、最も重要な役割を果たした選手は誰か。おそらく、多くの人が名前を挙げるのは、三笘薫や家長昭博といった選手かもしれない。たしかに、2020年シーズンにおける彼らのインパクトは強烈だった。しかし、主に中盤の底からチームを支え、ときには最終ラインのポジションもこなしたMF守田英正の活躍も忘れてはいけない。

2020年シーズンはリーグ戦32試合に出場し、川崎の中盤において大車輪の活躍を披露した守田。華麗なパスワークを最大の武器とする同クラブにとって、ほぼ全てのビルドアップに関与する中盤の底は“チームの心臓”とも言える部分。そんななか、今季この位置でボールを散らし続けた彼が担った役割は非常に重要なものだった。ここに手詰まりが生じることとなれば、川崎はチーム全体のパスワークに支障をきたすこととなる。その点、守田のプレイには安定感があり、鬼木達監督も彼の落ち着きぶりには相当に助けられたことだろう。

そんな守田が今季リーグ戦で記録したパス本数は「2066」。これは2020年シーズンにJ1でプレイしたMFのなかで最多の数字だ。加えて、パス成功率も88.24%(2066本中1823本成功)とハイレベル。川崎がパス志向のサッカーを展開するなかで、同選手は間違いなく同選手はチームの要たる存在だったと言っていい。アンカーとしてこれだけパスを冷静に捌ける守田がいたからこそ、川崎の華麗なパスワークは機能した。

加えて、今季はビルドアップの局面以外でも、守田の貢献が光るシーンは散見された。特に印象的だったのは、前半に1点を先制されながらも、最終的に3-1で逆転勝利を飾ったリーグ戦第33節の浦和レッズ戦だ。この試合において、守田は常にポジション取りに気を使いながら、たびたび前線にも顔を出す動きを繰り返していた。その姿には、ガッチリとブロックを敷いて川崎の攻撃を跳ね返す浦和守備陣の綻びを見つけようという強い意思を感じ取ることができた。

そして後半、その動きが功を奏し、守田はバイタルエリアにポッカリと生じたスペースを利用して強烈なミドルシュートをゴールへ叩き込むことに成功。前半は攻めあぐねた川崎だったが、この守田のゴールによって勢いづくと、最終的には3-1で逆転勝利を収めることとなった。

「今日の試合に限らず、僕らは相手が中央を固めてきた際に2列目からの飛び出しを狙っています。ですが、今日の場合は相手にそれを予測されていました。ただ、3列目の自分が飛び出してもマンツーマンで網を張ってこようとしていたので、これはと思ったんです。結果的にそれほど自分にボールは入ってこなかったのですが、この動きによって相手守備陣にズレを生じさせることができました」

試合後、守田はこのように語っている。冷静に戦況を見極め、ここぞの場面で最も効果的なゴールを奪ってみせた。アンカーの選手が相手ゴール前まで攻め上がることには相当なリスクが伴うが、この得点は試合の流れを読む能力に長けた守田だからこそ奪うことが可能だったものと言っていいだろう。川崎の選手は皆、流れを自分たちに傾けるタイミングというものをよく理解している。しかし、そのなかでも守田のセンスは頭ひとつ抜けていると言っても過言ではないか。プレイ自体は少し地味かもしれないが、“中盤のゲームチェンジャー”として彼は大いに機能している。

中盤の底からゲームを変えることのできる選手。今の守田をひとことで言い表すならば、こういった表現になるか。図抜けた安定感と、勝負どころを見極める戦術眼を併せ持ったJリーグ屈指のアンカー。新たな“川崎の心臓”候補となるのは、決して大島僚太だけではない。

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