大きな期待を背負っての加入から1年と少しの時間を経て、ようやくポルトガルのスーパーヤングタレントは覚醒の時を迎えるのか。アトレティコ・マドリードに所属するポルトガル代表FWジョアン・フェリックスに、やっとエンジンがかかってきた。
加入初年度となった昨季は公式戦36試合に出場しながらも、わずか9ゴール3アシストという成績しか残せなかったフェリックス。まだ20歳の若者であるということを考えれば十分な数字ではあるものの、彼はアトレティコが1億2600万ユーロ(約153億円)もの移籍金を投じて確保した選手。そのポテンシャルも考えて、クラブとしては“即戦力”としての活躍に相当期待していたことだろう。こういった事情からも、彼のスペインにおける1年目は期待外れに終わってしまったと言っていい。
しかし、移籍2年目となった2020-21シーズンのフェリックスはひと味違う。昨季こそゴール欠乏症に悩まされた20歳のヤングタレントだが、今季は開幕から7試合に出場しすでに3ゴール2アシストを記録している。まだ判断するのは早いかもしれないが、ペース的に見れば昨季(4試合につき1ゴール)の倍近いスピードだ。
特に直近のチャンピオンズリーグ・ザルツブルク戦でのパフォーマンスは圧巻だった。この試合はアトレティコ が3-2で勝利を収めたのだが、その中でフェリックスは大躍動。1点ビハインドで迎えた52分に味方との連携からこの日1点目となる同点ゴールを奪うと、85分にはFWトマ・レマルから受けたパスをそのまましっかりとゴールへ流し込み逆転弾を記録した。他にもいくつか相手ゴールを脅かすシーンがあり、この試合においてまさにフェリックスは主役だったと言える。データサイト『WhoScored』もフェリックスには評価点「9.9」をつけ、この試合におけるマン・オブ・ザ・マッチに選出している。
そんな得点への嗅覚を取り戻しつつあるフェリックス には指揮官もご満悦の様子だ。アトレティコを率いるディエゴ・シメオネ監督は、シンプルなアプローチで何度も相手ゴールへと迫った20歳FWを次のように称賛。このザルツブルク戦こそ、彼の加入後最高のパフォーマンスだったと話している。
「今日のフェリックスは加入後で一番完成度が高かった。これまでも90分間高いレベルでプレイしたことはあったが、この試合ではより規則的だったよ。効率よく相手のチェックを外し、最短のルートでゴールを奪い切ったね。素晴らしい」
難しいことをせずとも、少ない手数でゴールへと迫ることができる才能を備えたフェリックス。これまではドリブルにこだわりすぎる場面も見受けられたが、今回の成功体験を元に今後はシンプルなプレイも増えてくるか。
加入から1年強という我慢の時間を経験し、やっとアトレティコで本来の実力を発揮する予感がしてきたヤングスター。フェリックス本格覚醒のときは着実に近づいてきている。