4点を奪われ、ほとんど何もできないままに試合は終わった。試合終了間に唯一のゴールを決めたものの、まさに焼け石に水。1年を通して記したのはこのゴールを含めても僅か20。断トツのリーグワースト。下から2番目の磐田とすら8ゴールもの差があるのだから、これは埋めようのないものだったということだろう。試合後の記者会見で、降格という現実に打ちひしがれた表情で反町監督は語った。
「決定力の差といってしまえばそれまでですが、それは今日に象徴されるように、シーズン通してかなり難しかったです。(試合後の円陣は)選手は当然状況を知らない訳で、サポーターに挨拶に行く前に状況を説明したほうが選手もクリアになる。湘南は残り10分くらいから時間稼ぎをしていたと。その現実をしっかり受け止めためにあと1試合残っているので、しっかりホームなので勝たなくてはならないという話をしました」
3連敗で1試合を残して降格決定は前回2015年の時とまったく同じパターンである。同じ轍を踏んだことについて問われると。
「それが分かっていれば、その前からちゃんとできるわけであって、ただ最後になって慌ててやっているのではなく、最初から危機感を感じてやってきたつもり。試行錯誤しながらすべての試合に対して準備してきた。勝負強さということにいってしまえばなるかもしれないが、まだまだ力が足りない」
J1として戦うには戦力が足りなかったのかという記者団の問いには。
「それはコメントできない。ただチームとしても個人としても力が足りなかったということだと思います」
まだ1試合を残しており、シーズンを通してのコメントはできないと反町監督は話したが、言葉の端々からは危機感はシーズンを通してのものであり、それが結局現実のものになったのに過ぎないということが窺えた。
同様にDFの飯田は「普通に力不足、ただそれだけだと思います。チームとしても個人としても、J1で生き残るにはチームの総合力が足りなかった。僕自身はチームをどれだけ統率できるかというところで、もう少し慎重に試合に入るべきだったかもしれないが、ここ2試合それができなかった。それはゲームを読む力。(G大阪の)遠藤選手や、それに宇佐美選手はうちの守備のどこに穴があるかを瞬時に判断して前半の中盤あたりからゲームをコントロールし始めた。そういう選手にならなくてはならない」。
日本代表クラスの選手を揃えるG大阪との個のクオリティの差は埋めがたく、それはこの試合でもシーズンの成績にも如実に表れていた。埋めようとしても埋められるものではない現実が松本にはある。
筆者の目からすればその象徴としてこの試合のスタメンが挙げられると思う。育成のG大阪とまでいわれる相手に対して、松本は下部組織からの選手はゼロ。限られた予算でクラブの未来をどこに託すのかのビジョンがまったく見えてこない。J1に上がっても1年で降格してしまうレベルの戦力しか揃えられないのであれば、一旦リセットして下部組織の充実をはかり、10年単位でJ1を維持できる体制を整備することのほうが重要ではないだろうか? 典型的なエレベータクラブ、それが偽りのない松本の姿である。熱狂的なサポーターには申し訳ないが、これ以上を望むのは今のままでは無理だ。
文/吉村 憲文
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